仏・パリ発のエンジニア養成機関「42」が日本に上陸した。日本版「42 Tokyo」の入学試験には数千人が応募し、2020年1月6日に選抜試験がいよいよスタートした。三菱重工業や日本マイクロソフトといった大手が協賛するなど、国内企業からの期待も大きい。4月の開校を前に、エンジニア人材を育成する同校ならではの強みと、今後の展望を42 Tokyo事務局長に聞いた。
—— 世界15カ国以上に展開しているエンジニア養成校「42」。なぜこれほど世界に広がっているのか。
長谷川文二郎 事務局長(以下、長谷川) コンセプトが斬新だからだと思います。最も特徴的なのが、「授業料が完全無料」であることです。そもそも「42」は7年前にフランスでスタートしたエンジニアの養成機関。フランスの資産家が私財を投じて立ち上げました。フランスは学歴社会なうえ、非正規労働者が増加しており、学びを平等に提供するには無料であることが必須だったのです。当然、学歴や経歴も不問。世界各国にキャンパスがあり、運営母体は民間からNPOまで様々異なりますが、このポリシーは共通です。日本校の「42 Tokyo」ももちろん、授業料無料で経歴不問。18歳以上であれば誰でも入学試験を受けられ、卒業後の進路も自由です。
—— プログラミングなどのエンジニア養成という点では、オンライン学習でも可能なのではないかと思いますが、パソコンが数百台並んだリアルな“教室”を用意していますね。
長谷川 はい。それも42の特徴です。42には時間割はありません。授業もありません。24時間ずっと教室は開いていて、それぞれが自分のペースで課題をクリアしていく仕組みです。課題をひたすら解くだけなら、自宅や遠隔地でもできそうですが、参加者同士がリアルに顔を合わせてコミュニケーションを取ることを大事にしています。
授業もない。先生もいない。異色の“学校”
長谷川 42としてもオンライン化を進めようと考えた時期がありました。ただ、実社会では、エンジニアを含め、オフラインでのコミュニケーションは必須です。また、互いに教え合って切磋琢磨(せっさたくま)することが、大きなパワーになると考え、キャンパスを設けています。私もパリ校で学んでいた1人ですが、一緒に頑張る仲間がいることが常に励みになりました。
—— カリキュラムの特徴は?
長谷川 前述のように、授業は一切ありません。プログラムの仕様書のような具体的な課題が与えられ、それをクリアしていきます。指導をしてくれる先生もいないので、生徒自身でひたすら調べたり、同級生に聞いたりして問題を解決していきます。
初期の課題は、C言語をベースとしたオーソドックスなプログラミングの基礎に関連したものです。進んでいくと、よりモダンなプログラミング言語や、ネットワークなどのシステム関連、機械学習といったデータサイエンスのアルゴリズム、アプリ開発など、自分の好きなジャンルを選んで学んでいきます(対象ジャンルは下の図参照)。
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