消費者の趣味嗜好の多様化で、モノづくりが大きく変化している。味の素AGFは商品開発の新潮流に挑む一社。2019年8月に発売した「ブレンディ ロースターズ&」シリーズは、ブレンディブランドでは初の本格コーヒー商品だ。さらに20年2月には抹茶製品を販売する。いずれも外部企業の持つデータが開発の決め手となった。

 「味の素AGFでも『スモールマス』をテーマにした商品開発が活発化している」

 同社のリテールビジネス部Stickグループの高地祐史グループ長は言う。従来はテレビCMを中心としたマスマーケティングを中心に展開してきた。潮目が変わり始めたのはEC事業を始めてからだ。一般の小売り店とは売れる商品が異なることが分かり、顧客ニーズの多様化が浮き彫りになった。そうした規模は小さいながらも、確実にニーズがあるニッチな領域をスモールマスと呼んでいる。

 スティック型のコーヒーでいえば、ECでは甘さのない商品が好まれる傾向にある。「ブレンディ スティック カフェオレ 甘さなし」といった甘さを抑えた商品がスティック型コーヒーの全体に占める割合は、実店舗の小売事業者への出荷数では5%に満たない。ところが、「Amazon.co.jp」や「LOHACO」といったECサイト上では2割に達する。こうしたデータから、販売チャネルなどに合わせた商品開発などが必要と判断。この1~2年でスモールマス強化へとかじを切った。

 味の素AGFはスモールマス強化に向かう中で、新たに外部データを活用した商品開発に取り組んだ。自社で実施するアンケート調査やグループインタビューでは、あらかじめコーヒーに関する調査であることを回答者に伝えるため、自然なインサイトを得にくい。また、調査を基に複数の商品開発の方向性を導き出したが、優先度を見極められずにいた。背中を押したのは、第三者が蓄積する「消費者の不満」データだった。ブレンディ ロースターズ&はそのデータを活用した最初の開発例だ。

競争激化もスティック型コーヒーは堅調

 各論の前に、少々コーヒー市場の概況説明にお付き合いいただきたい。コンビニエンスストアのいれたてコーヒーやネスレ日本のコーヒーマシンの成功などで、コーヒー市場の競争が過熱している。新興勢力に市場を奪われた国内のインスタントコーヒー市場は17年度に前年比6%減の680億円と苦戦を強いられる。一方で、スティックタイプのコーヒー同3%増の326億円と堅調だ。

 スティックタイプのコーヒーはインスタントコーヒーを砂糖、クリーミングパウダーを混ぜ合わせたもの。お湯に溶かすだけで1人分のコーヒーを入れられる。働き方の多様化や、家庭で個食が進むなど消費者の食生活が変化する中、持ち運びがしやすく、好きなときに飲めるスティックタイプのコーヒーは市場ニーズと合致。売り上げを伸ばしているという。

 味の素AGFはこのスティック型コーヒーで6割のシェアを持つ大手。紅茶や抹茶ラテなど、コーヒーにとどまらない幅広い商品展開で顧客をつかんできた。ただ、「世帯の飲用率はインスタントコーヒーと比較して7割程度」(高地氏)にとどまっている。味の素AGFにとってスティック型コーヒーは成長余地を残した戦略商品という位置づけだ。

スティック型コーヒーはなぜ離反率が高い

 飲用率が伸びにくい課題の1つに高い離反率が挙げられる。「インスタントコーヒーに比べて、スティック型コーヒーは離反率が高い傾向にある」(高地氏)。その要因を探り手を打つことで継続購入を促し、市場拡大が期待できると考えた。

 しかし、前述した通り、従来のアンケート調査やグループインタビューは、回答にバイアスがかかっている可能性が否めなかった。離反に直結している理由を調べたい。そう考えた味の素AGFは、データ活用支援のInsight Tech(東京・新宿)が独自で蓄積するデータに解を求めた。そのデータとは消費者から取得した、生活で感じた不満だ。

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