“丸の内の大家”こと三菱地所が、東京・有楽町の再構築に乗り出す。「大丸有(だいまるゆう)」(大手町、丸の内、有楽町)を1つの街とみて、有楽町から日本全国、世界へと羽ばたくスター誕生の仕組みをつくるという。いわく「変人、オタクも大歓迎」。ハードではなく、人を中心に街を変える試みに乗り出した。
東京都心の丸の内仲通り。築半世紀近いビンテージビル「有楽町ビル」の1階に、縁側付きの異質な空間が誕生した。表札には「micro FOOD & IDEA MARKET(マイクロフード&アイデアマーケット)」とある。大手デベロッパーの三菱地所が2019年12月に開設した、新しい街づくり拠点だ。
カフェやバルのようであり、オフィスやラボのようでもある。一言で言い表せないのは、この場所が複数の機能を備えているからだ。
レストランやバルとして普段使いできる「マイクロフードマーケット」、日本全国の掘り出し物やクラウンドファンディングCAMPFIRE発のプロダクトを集めた「マイクロアイデアマーケット」、そして大型展示やパフォーマンス、イベントを展開する「マイクロステージ」の3つのゾーンからなる。
コンセプトは「好奇心が交差する市場」。“マイクロ”とある通り、世間に知られていないモノ、コト、食をえりすぐった。全国各地の地域プロデューサーが出資して19年に設立したインターローカルパートナーズ(東京・港)に運営を委託し、「まだ価値の定まらないものごとに光を当て、作り手の好奇心と受け手の好奇心が交わる場所」を目指すという。
ここで展開するのは、すべてが実験だ。例えば、東京には出回らない希少価値の高い農水産物を、高速バスのトランクルームを使った「産地直送あいのり便」で仕入れる。
店内で提供するのは、「マイクロな菌」に注目した菌活料理。2品から4品を選んで自由に盛り付けられるデリ形式で、「マイクロブルワリー」の樽生クラフトビールも立ち飲みスタイルで楽しめる。会計は完全キャッシュレスで、注文時に支払うキャッシュオン方式。店内には、アートブックの自動販売機もある。
店の経営を、丸ごと「見える化」したのも新しい。創業100年超の老舗「伊勢ゑびや大食堂」発のスタートアップEBILAB(三重県伊勢市)のデータ解析システムを導入し、来店客の行動や属性、購買動向を分析。メニューの開発や食品の廃棄ロス削減などに生かす。従業員の働き方も可視化して、モチベーションを高める働き方改革にも挑戦するという。
こうしたトライアルを通じて、未来の店舗経営のあり方、仕組みを考える。それだけではない。三菱地所は20年2月14日、隣の新有楽町ビル10階にも、新たな実験拠点を開業する。
その名も「SAAI(サイ)」。2人以上から誰でも無料で開設できるスタジオを多数展開し、500人程度の会員制コミュニティーに育てる。この新有楽町ビルも、築半世紀以上の歴史があり、ノスタルジックな昭和の空間を、大胆にリノベーションする計画だ。なぜ、三菱地所は、このような試行錯誤に挑むのか。
丸の内→ビジネス、大手町→金融 手付かずだった有楽町
「丸の内がビジネスの中心、大手町が国際金融拠点とすれば、有楽町はいい意味で、いろいろな方々が行き交う場所」と語るのは、三菱地所丸の内開発部長の吉田誉氏。
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