UCC上島珈琲(神戸市)の「UCC ミルクコーヒー」が「色彩のみからなる商標」に登録された。おなじみの「茶・白・赤」という3色の組み合わせに、同製品を想起させる高い識別性があると判断された。申請から登録まで4年かかった缶コーヒー界の“レジェンド”の朗報に、社内外から反響があった。

2015年、「色彩のみからなる商標」に申請された3色の組み合わせ。「茶色(PANTONE:471)、白色(RGBの組合せ:R255、G255、B255)、赤色(PANTONE:485 2X)」などの色指定もされている(画像提供/UCC上島珈琲)
2015年、「色彩のみからなる商標」に申請された3色の組み合わせ。「茶色(PANTONE:471)、白色(RGBの組合せ:R255、G255、B255)、赤色(PANTONE:485 2X)」などの色指定もされている(画像提供/UCC上島珈琲)

これまで登録わずか8件の狭き門

 「色彩の組み合わせとしては、茶色(PANTONE:471)、白色(RGBの組合せ:R255、G255、B255)、赤色(PANTONE:485 2X)であり、配色は、上から順に茶色が商標の25パーセント、同じく白色30パーセント、赤色45パーセントとなっている」――。

 2019年11月、特許庁の「色彩のみからなる商標」として認められた“ある商品”には、そんな説明がある。商品の分類は「第29類 コーヒー入り乳飲料、乳飲料、乳製品」「第30類 コーヒー、ミルクコーヒー、缶入りコーヒー飲料、紙容器入りのコーヒー飲料」。コーヒー系の飲料であること、そして冒頭の3色を想像しただけでピンときた人もいるだろう。UCC上島珈琲が1969年に発売した世界初の缶コーヒー「UCCミルクコーヒー」だ。

現在販売中の10代目となる「UCCミルクコーヒー」のパッケージ。19年4月のリニューアルで初めてコーヒー豆のイメージを省き、「焙煎(ばいせん)したコーヒー豆」の茶色、「コーヒーの花」の白、「熟したコーヒーの実」の赤という3色が際立つデザインにした
現在販売中の10代目となる「UCCミルクコーヒー」のパッケージ。19年4月のリニューアルで初めてコーヒー豆のイメージを省き、「焙煎(ばいせん)したコーヒー豆」の茶色、「コーヒーの花」の白、「熟したコーヒーの実」の赤という3色が際立つデザインにした

 「色彩のみからなる商標」は2015年4月から受け付けが始まった新しい商標の一つ。商標とはある会社の商品やサービスを、他社のものと区別するために付けるマークのことで、ロゴマークのほか商品名や商品の色と形の組み合わせなどが対象になる。色彩のみからなる商標は、その名の通り色の組み合わせだけで決まる商標のことをいう。

 17年にはその第1号として「トンボ鉛筆のMONO消しゴム」の青+白+黒の3色柄と、「セブン-イレブン・ジャパンの看板」の白+オレンジ+緑+赤の4色柄という2件が登録。その後「三井住友銀行」「三菱鉛筆」「ファミリーマート」などが認められ、「UCCミルクコーヒー」のパッケージの登録は、史上8件目、食品業界としては初の快挙となった。

 新しい制度ということもあるだろうが、UCCミルクコーヒーの場合、15年に申請してから認定されるまで4年半もかかった。また20年1月現在、同商標の申請件数は540件(特許庁)に上り、そのうち認定されたのは今のところわずか8件という極めて狭き門となっている。そんな認可はこうして決まる。

 「色はほとんどすべての商品に塗られているものだけに、識別力(パッと見てその商品と識別される力)がないと、商標として認めることはできない。例えば商品であれば、いつから、どんな所で売られ、どれだけの数量を売り上げてきたかのデータや、認知度を証明するアンケート結果など、識別力を裏付ける客観的資料を提出してもらうことで、商標に当たるかどうかを判断している」(特許庁)

 UCC上島珈琲マーケティング本部で、色彩のみからなる商標の申請をサポートした油谷仁敬氏(現・同社R&D本部 製品開発部 飲料開発チーム担当課長)もこう話す。

 「ハードルが高い商標ということは分かっていたので、申請は発売期間が長く、缶の色みにも特徴があって、社内では『三色缶』というニックネームもあったミルクコーヒー1本に絞ってチャレンジしようということになった。とはいえ認定の知らせがあったのは申請から4年半もたってから。もうだめかと諦めかけていた頃だった」

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