システムインテグレーター大手の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が、顧客に提供する多数のマニュアルのビジュアル化と、チャットボットを活用したコミュニケーションを強化している。これにより顧客の満足度を引き上げ、自社ソリューションへのロイヤルティーを維持し、継続的な利用につなげている。

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)のWebサイト
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)のWebサイト

 CTCは自社で設置・運用しているデータセンター(DC)上で、「CUVIC」ブランドのさまざまなクラウドサービスを顧客企業に提供している。そのため、それぞれのクラウドサービスのポータル画面の操作やデータのバックアップ手順などを解説するマニュアルを多数作成して、顧客企業に提示する必要があった。

 マニュアルは、CTCの担当部署がマイクロソフトの「Word」で作成。関連部署のチェックと承認を得てからPDF化してWebサイトに掲示し、顧客企業にメールで通知してダウンロードしてもらうというのが従来の流れだった。

 しかし、このやり方には課題がいくつもあった。

迅速・多頻度のマニュアル更新ができない

 まず、OSをどう設定する、Webブラウザーをどう設定するといったクラウドサービスの1つひとつの操作手順を解説するため、マニュアルそのものが分厚くなる。ものによっては1つのマニュアルで最大122ページになることもあったという。この量が示す内容を、顧客の担当者が文字で理解するのは簡単ではない。

 また、手順ごとに貼り付けた画像ファイルの容量もバカにならず、1つのマニュアルの容量が10MB(メガバイト)を超えることもしばしば。しかもクラウドサービスに関わるマニュアルの数自体、なんと500弱に及んでいた。加えて、Word作成からPDF化まで1週間弱かかるため、最新の情報が必ずしも盛り込まれているわけではない。

 「これでは顧客企業の担当者は、マニュアルの内容を理解しづらく、必要な情報にたどり着くのも難しい。必要な情報を知らないまま作業を進めると不具合が起きやすくなり、クレームに発展することもある。また仮にマニュアルを読んでいただいていても、内容が最新とは言えない場合もあり、不具合が起きてクレームにつながる可能性はそれなりに残る。いったんクレームになれば、顧客から弊社へのロイヤルティーは低下してしまう」(CTCクラウド・セキュリティサービス本部クラウドサービス企画開発部サービス企画管理課の大塚謙輔課長)

 マニュアルの作成を簡素化してスピーディーに更新し、かつ顧客がマニュアルの内容を理解しやすくするため、CTCが目を付けたのが、ITベンチャーのスタディスト(東京・千代田)が提供するツール「Teachme Biz(ティーチミービズ)」である。

マルチデバイスでマニュアル作成・公開が可能

 ティーチミービズを使えば、パソコンやタブレット、スマートフォンといったどのデバイスからでも、画像や動画、テキストを使ってマニュアルをビジュアルに分かりやすく作成可能。作成したマニュアルは、同じくパソコンやスマホなどマルチデバイスで、顧客に対して公開・共有できる。

 CTCでは2017年6月から徐々に導入を開始し、2年強が経過した19年9月には、従来のPDF化したマニュアルをほぼティーチミービズに置き換え、500以上のマニュアルを顧客に公開している。

「Teachme Biz(ティーチミービズ)」を活用した現在のマニュアル
「Teachme Biz(ティーチミービズ)」を活用した現在のマニュアル

 大塚氏は「導入の効果は予想を上回る」と胸を張る。画像や動画を使って示すため、文字だけのマニュアルに比べて「直感的に分かりやすく、顧客担当者の間違った操作が減った」(大塚氏)。また、マニュアルに誤った箇所があった場合、直ちに修正して顧客に示せるし、更新作業が簡単だから常に最新版を提示できる。マニュアルをPDF化していたときはマニュアルのバージョン管理が不可欠だったが、ティーチミービズは常に最新版を公開しているのでバージョン管理の手間も不要になった。

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