西武園ゆうえんち(埼玉県所沢市)が2021年に全面リニューアルする。パートナーは、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を再建へと導いた森岡毅氏率いるマーケティング精鋭集団「刀」。森岡氏の口から飛び出したのは「古さを逆手に取る」という大胆な戦略だった。

固く握手する西武ホールディングスの後藤高志社長(左)と、刀の森岡毅CEO(最高経営責任者)。背景の画像は、リニューアル後のキービジュアル。リニューアル中も営業は続ける
固く握手する西武ホールディングスの後藤高志社長(左)と、刀の森岡毅CEO(最高経営責任者)。背景の画像は、リニューアル後のキービジュアル。リニューアル中も営業は続ける

 約194万人(1988年度)から約49万人(2018年度)へ――。30年で年間来園者数が4分の1に激減した西武園ゆうえんち。1950年の開園から70周年を迎える老舗復活へ。西武グループが命運を託したのは、USJ再生の立役者、森岡氏だった。

 西武グループと森岡氏率いる刀が手を組み、約100億円を投じて、2021年中に園内を全面リニューアルする。その青写真が、2020年1月23日に発表された。

 夕日に照らされた昭和の街並みをバックに、森岡氏は力強く言った。「古さを逆手に取る」。懐かしい街並みを圧倒的なクオリティーで再現し、当時の人々との触れ合いやレトロな食体験、人情味あふれるライブパフォーマンスをパーク内で展開する。ライドアトラクションも新たに導入するという。

 ベースにしたのは、1960年代の日本だ。東京五輪を前に、右肩上がりで経済成長を続けていた栄光の時代である。「多くの人が前向きで希望に満ち、人間関係が情緒でつながっていて、おせっかいなほど親切な人であふれていたあの頃を、大切な人と一緒に体験していただく。そうすることで、帰るときに『幸せだなあ』と思ってもらえる、幸せの発生装置をつくりたい」(森岡氏)。

 リニューアルのコンセプトは、「心あたたまる幸福感に包まれる世界」。なぜ、このような結論にたどり着いたのか。

始まりは2年前「額縁を変える」

 始まりは2年前だった。USJを退任し、刀を設立した森岡氏に、西武ホールディングスの後藤高志社長が声を掛けた。

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