ネスレ日本がアドベリフィケーション(広告配信先検証)ツールの活用を推進させている。従来はアドフラウド(広告詐欺)対策や不適切な広告枠への配信防止などを、ブランドを守るために活用してきた。2020年はこれを攻めに利用する。ツールで得たデータから、よりビューアビリティー(視認性)が高く、閲覧時間の長い枠を見つけ出して、優先的に広告を配信する。
ネット広告業界では、世界的にアドフラウドが問題視されている。アドフラウドとはシステムを使って機械的に広告を表示したりクリックしたりして、不正に広告費を得る手法を指す。国内では広告詐欺と訳される。アドベリフィケーションツール大手の米インテグラル・アド・サイエンス(IAS)によれば、対策を講じない場合、平均で広告表示の十数パーセントがアドフラウド被害にあっているという。広告表示1回当たりの単価を1円と仮定した場合、1億円の広告予算があるとすれば、1000万円以上を捨てているのと同じことだ。
アドベリフィケーションツールはアドフラウド被害を防ぐ。DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)などの広告配信サービスと組み合わせて活用する。広告配信時に、配信先の不正な動作を察知した場合に広告配信を停止し、被害を防ぐ。ただし、アドフラウドの防止はツールの機能の1つに過ぎない。別の機能では、ブランドセーフティーが挙げられる。公序良俗に反するサイトなど、広告主に適さない広告枠への配信の防止は最たる例。要は広告主に対して、より透明性の高い広告取引を提供するのがアドベリフィケーションツールの役割だ。
ネスレはいち早くアドベリフィケーションツールを導入して、ネット広告の透明性の確保に取り組んできた。導入したのは2017年。「16年の第3四半期にグローバルでアドベリフィケーションのガイドラインが制定された。それに則って、日本国内でもアドベリフィケーションへの対応を始めた」とネスレ日本の媒体統轄室マネジャー(取材時)の村岡慎太郎氏は言う。ガイドラインは「アドフラウド」「ブランドセーフティー」「ビューアビリティー」の3つのポイントで整理されている。
視認性の担保も、アドベリフィケーションツールが果たす役割の1つ。米ネット広告業界団体のインタラクティブ・アドバタイジング・ビューローは、ディスプレイ広告の画像面積の50%超が1秒以上表示されたときに視認性を認めると、一般的な基準として制定している。動画広告の場合は同50%超が2秒以上だ。この基準に達した広告表示を「ビューアブルインプレッション」と呼ぶ。
アドベリフィケーションツールは、広告枠に占めるビューアブルインプレッション数を測定できる。この値が高いほど、きちんと見られている優良な枠と判断できるわけだ。ネスレは表示比率をより高く設定するなど、一般的な基準よりも高いガイドラインを制定しているという。これに準拠するために、日本でもIASや米オラクルの「Moat」といったアドベリフィケーションツールを活用する。
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