全国の1万人を対象に、日経クロストレンドが「日経ビジネス」と共同で実施した調査「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020」。2020年のキャッシュレス決済の動向を占うため、本調査の詳報を2回に分けてお届けする。結果を分析してみて、浮かび上がった意外な事実とは。

「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020」を分析すると、キャッシュレスが消費増税後に日本で着実に根付きつつあることが分かった。一方で、都道府県ごとに温度差があるなど課題も浮き彫りになった(写真/Shutterstock)
「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020」を分析すると、キャッシュレスが消費増税後に日本で着実に根付きつつあることが分かった。一方で、都道府県ごとに温度差があるなど課題も浮き彫りになった(写真/Shutterstock)

 「47都道府県キャッシュレス決済普及率ランキング2020」は、調査会社マクロミルのモニターを対象にインターネットアンケート調査の形で実施した。日々の店頭での買い物について回答してもらった。ネット通販での買い物や鉄道・バスなどで定期券・乗車券としての利用は除くことで、街中でどのような形でキャッシュレス決済を消費者が生活に取り入れているかを調べるためだ。

利用率2位にランクインしたのは「流通系電子マネー」

 詳報1回目では、「クレジットカード」「QRコード決済」など手段別に支持傾向がどう違うかを見ていく。並行して、都道府県別に見た違いも掘り下げる。

 まずは決済手段別の利用率の違いである。店舗で買い物する場合にどの決済手段を用いているか質問したところ、現金以外で最も多く使われていたのはクレジットカードだった。予想通りの結果で、利用率は69.6%となり競合を大きく引き離した。ただし、18年10月に実施した調査結果(69.8%)と比べるとほぼ横ばいだった。

 注目は「WAON」「nanaco」といった小売企業が独自発行する流通系電子マネーだ。利用率が昨年から約2.5倍に急伸しているのだ。「Suica」「ICOCA」など交通系電子マネーを抜き、19年はキャッシュレス利用率のランキングでは2位にジャンプアップした。

手段別にみたキャッシュレス決済の利用率(2018年調査との比較)
手段別にみたキャッシュレス決済の利用率(2018年調査との比較)

 イオングループが提供するWAONは、スーパーマーケット「イオン」「ダイエー」「マックスバリュ」など全国約51万カ所で使えるのが強み。一方セブン&アイ・ホールディングスが提供するnanacoも、コンビニエンスストア「セブンーイレブン」や、スーパーマーケット「イトーヨーカドー」や百貨店「そごう」「西武」など全国約54万カ所をカバーする。食品や日用品を購入するために日々訪れる場所で使える利便性が、多くの消費者の心をつかんだようだ。

 キャッシュレスを巡っては、2018年ごろからスマートフォンを財布代わりに使う新しいサービスが雨後の竹の子のごとく登場し注目を浴びている。調査結果では、クレジットカードや電子マネーなど旧来からある決済手段が堅実に選択されている一方で、QRコード決済を生活に取り入れる消費者が激増している実態も浮かび上がった。

 QRコード決済の利用率は18年から18.8ポイント増と前年比で約10倍となり、全体で2番目の伸び幅だったのだ。

 実は昨年の調査は、18年10月に実施している。PayPayがまだサービスを開始したばかりで、その後同社が12月に実施しメディアが連日大きく取り上げた「100億円キャンペーン」もまだ提供されていないタイミングだった。この1年で、QRコード決済の人気は一気に全国区となったようだ。

 逆に、グラフにはないが利用率が伸び悩んでいるのが「Visaのタッチ決済」「Mastercardコンタクトレス」といった国際クレジットカードブランドが提供するタッチ払い式クレジットカードだ。利用率は2.2%(2018年は1.2%)にとどまる。

 ICチップを搭載した専用のプラスチックカードをかざして支払うもので、英国など海外では一般的に使われている方式であることから、各社は訪日外国人観光客の需要が増えると見て加盟店開拓を積極的に進めているにもかかわらずである。1986年よりオリンピック大会でワールドワイドスポンサーを務める米VisaはテレビCMで盛んに宣伝しているが、現状ではそれほど支持が広がっていないようである。

利用率トップは三重県、静岡県と沖縄県が急伸

 続いて、キャッシュレス決済に対する"温度差”が都道府県別にどう違うかを分析してみよう。日々の買い物で使う総額のうち、種類を問わずキャッシュレス決済で支払っている割合を質問し、その大小から都道府県別ランキングをはじき出した。

 1位は三重県(53.7%)、2位は静岡県(53.19%)、3位は沖縄県(52.58%)となった。

 昨年6位だった三重県が1位になった理由は、1つはイオングループなど大型スーパーマーケットなどでクレジットカードや電子マネーを利用する消費者が他都道府県に比べて多いためだと考えられる。三重県自身も、19年10月にまとめた「三重県キャッシュレス推進方針」の中でその可能性についてふれている。

 背景として、県内の四日市市がイオンの源流の1つである岡田屋の創業の地で、人口当たりのイオングループ店舗数を算出すると全国トップクラスなことも影響していそうだ。三重県は推進方針のなかで、行政サービスのキャッシュレス化に率先して取り組むと同時に、「オール三重」で県内の環境整備を進めていくとしている。具体的なロードマップも明らかにしており、“キャッシュレス先進県”としてのポジションを確固たるものにしようと意気込んでいる。

 さて着目したいのは、各都道府県の前年調査からの伸び率である。昨年から大きく伸びて、利用率が全国トップクラスに躍り出たのは、静岡県(伸び率は10.55ポイント)、そして沖縄県(同9.89ポイント)だ。

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