ヤフーとの経営統合で日本有数のAI(人工知能)カンパニーを目指すLINEは、専門家に直接相談や依頼などができる1to1プラットフォーム「LINE ASK me」を、2020年に提供する。19年11月25日に提供を始めた「LINE弁護士相談」や、既に提供している占いや悩み相談のサービスを効率よく提供して1to1事業を拡大する狙い。相談者と専門家のマッチングにAIを活用する。その中身をLINE取締役CSMO(最高戦略・マーケティング責任者)の舛田淳氏に聞いた。
20年中に、さまざまな専門家に相談できる1to1プラットフォームLINE ASK meを提供開始すると舛田氏が明かした。既に提供中のトーク占いやトークCAREと、今回提供開始されるLINE弁護士相談がこのプラットフォームの下にひも付く形だ。
LINE弁護士相談は、LINE上で弁護士に直接法律の相談ができるサービスだ。弁護士ドットコムと業務提携しサービスを提供する。サービス開始時は、1対大勢のスレッド形式で無料相談や、全国1000人以上の弁護士を検索できる。20年春には、LINEのトーク上で1対1で弁護士にリアルタイム相談できるサービスを展開していく予定だ。
19年11月18日、ヤフーとLINE経営統合の会見で両者は「日本・アジアから世界をリードするAI(人工知能)カンパニーになる」と宣言。会見前の本インタビューで舛田氏は、1to1サービスでは「質問者と回答者のマッチングにAIを使用する」と話す。この経営統合で、AIによるパーソナライズの精度が高まる可能性も秘めている。なぜ1to1サービスを強化するのか、その狙いと事業構想を聞いた。
1to1サービスを強化する理由を教えてください
大きく2つあります。1つ目が「人と情報との出合い」。この20年くらいでパラダイムがどんどん変わってきました。インターネットが登場し、サイトの数が爆発的に増えたことで、Googleなど検索サイトができた。その後SNSが登場したことで、情報の価値はページではなく“人”に寄ってきました。フォローする文化が生まれ、自分の知りたい情報を持っている人から情報を得るようになってきています。
また、一昔前は「ググる」ことで情報を得ていましたが、これは検索が正確である、ネットの情報がすべてであることを前提にしたもの。DeNAが運営していたキュレーションサイトWELQが、虚偽情報を掲載していた問題などもあり、ネット情報の信頼性が担保されにくくなったことも、情報の価値が人に寄ってくることに拍車をかけました。
人に聞いた方が早い、正しく知っている専門家に聞く方が近道だ。こういったニーズはパラダイム変化の中で必要になると思い、各領域の意見を、一定の信頼を担保した専門家から聞けるよう、サービスを始めました。このサービスでは、質問者と回答者をAIでパーソナライズし、マッチングさせることを目指します。
2つ目は「LINE占いの経験」です。現在提供するトーク占いの前身であるLINE占いでは、悩みを相談すると、具体的なアドバイスと鑑定結果を12時間以内に受け取ることができました。さらに進化させるため、1to1でリアルタイムにチャットでやりとりすることで、まるで占師と話しているかのように事細かな悩みまで答えられるようにしたのがトーク占いです。カジュアルなトーク形式というインターフェースを使うことで、弁護士など専門家への相談ハードルを下げました。
プラットフォームにこだわる理由
LINE ASK meというプラットフォームにこだわる理由は何でしょうか
16年ごろから相談プラットフォームとして、医療や子育てなど専門分野まで広げる構想を持っていました。SNSで個人としてアカウントを持っていて、自分で相談を受け付けている人もいますが、あくまで個であって、場になることはありません。弁護士相談であれば、法律相談をしたい人がセグメント化されることで、効率的にマッチングができると思います。そこでビジネスモデルを組み、その上で専門家に参画してもらうことを選びました。
現時点では個々のサービスがありますが、今後ASK meというプラットフォームに集約する予定です。その理由は、各サービスによってビジネスモデルが異なるからです。各サービスで共通しているコアとなるものは、時間によって価格が決まるということです。対面で話すよりも、安い価格に設定しています。利用者にとっては安いというメリット、専門家にとっては時間が決まっているので働きやすいというメリットを享受できると考えています。
プラットフォーム化することで、専門領域を横断してよりニーズにあった専門家に悩み相談をすることが可能となります。今後はカートリッジのように、随時追加していくイメージです。
異なるビジネスモデルとは、具体的にどういったものか教えてください
利用者の課金をレベニューシェアする形があります。最近は個人で事業をする人が多くなり、トレンドとなっています。LINEは個をエンパワーするプラットフォームを持っているので、専門領域でナンバーワンの専門家がいれば、メディアとして広告を入れることも可能です。
しかし今回スタートする弁護士相談では、利用者の課金をレベニューシェアする形の適応が弁護士法によりできません。そこで1対N型のスレッド形式のページ上で 無料相談できるようにしました。弁護士にとっては、露出が増えることがメリットになるかと。20年以降はLINEのトーク上で、1対1で弁護士にリアルタイム相談ができるようにしたいと思っています。
利用者と専門家のビジネスモデルの関係性はどうあるべきか考え、法律上のアウトセーフも加味した上で、それぞれに合ったビジネスプラットフォームをつくり上げることになると思っています。
トーク占い、トークCAREに続いて弁護士相談。この展開理由を教えてください。またどの領域が1to1ビジネスとマッチしやすいのでしょうか
占いの後、CAREを展開したのはニーズが近かったからです。その後は同時進行でさまざまなサービス展開の準備を進めているため、提供開始は実現スピードの問題です。
領域は相談か教育がマッチしやすいと思っています。そのため“相談”というワードを聞いてイメージしやすいサービスを提供しています。
一方、LINE内の検索サービスでは、インフルエンサーの検索を打ち出しました。これはネット上のもっと小さなカテゴリーをクローリングして出しているもの。この検索機能によりニーズがあると分かれば、1to1ビジネスへ発展させることも可能だと思います。
(写真/山田 愼二、写真提供/LINE)