Zホールディングス(HD)とLINEは11月14日、2社の経営統合について「協議を進めている」と発表した。ZHD傘下のヤフーの月間ログインユーザーID数は4901万、LINEは8100万人の登録者を持つ。実現すれば、数字の上では日本国民ほぼすべてにリーチできる国内最大のマーケティングプラットフォームが誕生する。

11月6日、7000億円もの巨額赤字を計上したソフトバンクグループの2019年7-9月期決算を説明する孫正義会長兼社長(写真:AFP/アフロ)
11月6日、7000億円もの巨額赤字を計上したソフトバンクグループの2019年7-9月期決算を説明する孫正義会長兼社長(写真:AFP/アフロ)

 「両社のデータをシームレスに統合できれば、国内でGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に対抗できるマーケティングプラットフォームになりえる」。ある広告プラットフォーム提供会社の幹部は、ZHDとLINEとの経営統合について、そう語る。

 2社の統合によりソフトバンクグループが目指すのは、中国の大手ネット企業アリババモデルだろう。モバイル決済アプリ「PayPay」を主軸に決済データを収集。ヤフーやLINEの持つデータと合わせて広告配信やマーケティング支援などに活用して大きな収益を上げる。実際、米フェイスブックや米グーグルはそうしてデータをマネーに換えてきた。

 アリババ集団はECに加え、モバイル決済サービス「Alipay(アリペイ)」を展開することでリアルの購買データも取り込んできた。それにより強固なデータ基盤を構築。強力な成長ドライバーになっている。

 ソフトバンクグループも、2社の経営統合で、オンラインとオフラインを統合した強力なデータ基盤構築を目指していると考えるのが自然だ。

Cookieへの風当たりが強まる中、IDが重要に

 その際、重要になるのがIDだ。「公正取引委員会がCookieデータの利用規制を検討している」との報道が出たが、実際、Cookieデータ活用に対する風当たりは強まっている。

 「大きな流れでは、広告はCookieベースからIDベースへと、移り変わっていく。PayPayをデータ活用の中心に据えるのであれば、IDベースになる。LINEも足並みをそろえれば、1つのIDにさまざまなデータが集まる」。デジタルマーケティング支援会社フィードフォースの塚田耕司社長はそう語る。「PayPay ID」と「LINE ID」が統合されると、IDベースの巨大なマーケティングプラットフォームが生まれる。

 その兆候を身近で感じていたのが、ヤフーのグループ会社だったシナジーマーケティングの谷井等会長だ。「ヤフーの傘下に入った5年前には、ヤフーの『マーケティング・ソリューション・カンパニー』という組織を中心に、広告をメインとするマーケティングソリューション提供で収益を伸ばすことが大方針だった。それがPayPayの提供開始を機に、同サービスを活用した決済データの取得(が最優先の方針)へと完全に変わった」。

 シナジーマーケティングはCRM(顧客関係管理)支援事業を展開しているが、19年7月に創業者の谷井氏が全株式を買い戻し、再び独立企業となった。ヤフーの方針転換で連携しにくくなったことが理由だという。「ヤフーは決済を中心とした、新しいデータを取ることに注力し始めた」(谷井氏)。

 とはいえ、データ基盤の整備とマーケティングサービスは表裏一体。「今後は、マーケティングプラットフォームの強化を進めるだろう」と谷井氏は見る。

ヤフーはなぜLINEが欲しかったのか

 ヤフーは既に大きなメディアを持ち、PayPayも保有している。単独でもアリババモデルは実現可能だったはず。ソフトバンクが欲しがったのは、LINEの持つユーザー接点ではないか。パソコンを中心とした時代は、ヤフーが圧倒的なユーザーとの接点を保有していた。多くの人がブラウザーのホーム画面を、ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」に設定していた。これが継続的な接点の維持につながっていた。

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