ビジネススーツのD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)を展開するFABRIC TOKYO(東京・渋谷)が、「D2Cの次」と位置付ける新しいビジネスモデルを発表、その詳細を説明した。

新しいビジネスモデルについて説明するFABRIC TOKYOの森雄一郎代表取締役
新しいビジネスモデルについて説明するFABRIC TOKYOの森雄一郎代表取締役

 一度、店舗で採寸するだけで、次からは来店しなくても体形にフィットした好みのスーツやドレスシャツをネットオーダーできる。そんなビジネスを展開するFABRIC TOKYOの年間リピート率は業界平均を上回る44.5%だという。

 同社のビジネスを支えるのが、保有する10万件以上のデータだ。採寸したデータだけでなく、「サッカーが好き、野球が好きといった趣味の情報や、長めのジャケットが好き、タイトなスーツが好きといった嗜好の情報なども保有している」と森雄一郎代表取締役は語る。

 こうしたデータを生かして、“ライフスタイル”にもフィットする商品づくりを心がけているため、購入者の満足度が高くなるという。

 日本でも注目を集めるD2Cだが、米国ではD2Cからユニコーン(評価額が10億ドル以上の未上場企業)が誕生するなど、その存在感は日本の比ではない。森氏は、「FABRIC TOKYOも世の中にインパクトを与えられるようなブランドにしたい」と語る。

 その実現に欠かせないものとして、「D2Cの先」と位置付ける、新しいビジネスモデルについて森氏は、その詳細を明かした。

D2Cより先進的なビジネスモデルとは

 それが「RaaS」。リテール・アズ・ア・サービスの略で、近年、流通・小売業界で注目を集めているキーワードの1つだ。

 一般的には、既存の小売業がリアルな店舗運営などで培ったノウハウやサービスを最新テクノロジーの活用でソフトウエア化したりプラットフォーム化したりして、他の小売業などにも提供。新たな収益源とする動きを指す。

 ここ数年、世界最大の流通関連イベントとも言われる「NRF」でも関連する発表や展示が相次ぎ、業界関係者の関心が高まっている。日本で言えば、九州を中心にディスカウントストアなどを展開するトライアルホールディングス(福岡市)の取り組みが、RaaSのイメージに近いと言えるだろう。

 発表会の場で森氏は、RaaSの実現を目指して次の3つの取り組みを開始すると話した。

 第1は、サブスクリプションサービス「FABRIC TOKYO 100(ハンドレッド)」だ。具体的には、体形の変化などによるサイズ直し(回数制限無し)、スラックスが破損したときの保証(生地代無料、仕立て費用のみ。最大2年間)、オーダー品のサイズフィット保証(届いてから100日間であれば、1回まで直し/作り直し無料)などを月額398円(税込み)で提供する計画という。日々の着こなしサポートやクリーニング、保管サポートなどを加えることも検討している。

 第2は、スマートファクトリーだ。縫製工場をIT化することで、これまで4~5週間必要だった納期を2週間まで短縮する試みを始めている。11月には製造プロセスを見える化して、オーダーした商品が今、どの工程にあるかを、メールやアプリのプッシュ通信で知らせるようにする。

 2020年には、こうしたノウハウをパッケージ化し、他社工場に展開。B2B(企業向け)ビジネスに参入する計画もある。

「2023年にはすべての洋服をサステナブル素材にしていくことを考えている」と森氏は話した
「2023年にはすべての洋服をサステナブル素材にしていくことを考えている」と森氏は話した

 そして第3は、「FABRIC TOKYO TOUCH」(仮称)だ。これは、RFID(ICタグ)をすべての洋服に付けることで、サイズや生地の特徴、着こなし、手入れ方法などの情報を簡単に取得できるようにする構想。12月から実証実験を開始する。

 この他にも、使用した洋服を回収し、服から服を作るサーキュラーエコノミー(資源循環経済)にも挑戦する。現在、世界で毎年9200万トン、日本では100万トンの服が廃棄され、今後も増加が予想される。こうした課題への対応として、「2023年ごろをめどに、すべての洋服をサステナブル(持続可能)な素材にしていくことを考えている」(森氏)。

 一連のチャレンジができるのは、2019年5月に丸井グループから大型の資金調達が実現したことも大きい。丸井グループとFABRIC TOKYOの付き合いは、3年前の16年に遡る。当時、店舗出店がなかなか進まない中、手を差し伸べたのが丸井グループ。新宿マルイと渋谷マルイに出店し、出店攻勢に弾みがついた。

 丸井グループ社長CEO(最高経営責任者)の青井浩氏は、「小売りのオンライン化が進んでいるが、eコマース一極集中は面白くない。だからこそ、ユニークなサービスを展開するD2Cに期待している。資本に加え、人材や場を提供し、D2Cのエコシステムを作っていきたい」と語った。

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