タイトーが2015年度から開催している「闘神祭」は、ゲームセンターなどに設置されているアーケードゲームを使ったゲーム大会。PCや家庭用ゲーム機、スマートフォンで争うeスポーツが話題の今、なぜアーケードゲームなのか。その狙いや現状、今後の展望をタイトーの山田哲社長に聞いた。
闘神祭は、ゲームメーカーの人気アーケードゲームタイトルを使って争われるゲーム大会だ。タイトルは『ストリートファイターV タイプアーケード』など、一般的なeスポーツと共通のシリーズもあれば、全く異なるものもある。
大会の主な舞台は全国のゲームセンターだ。参加店舗で行われる予選、地域ごとのエリア決勝大会を勝ち上がった代表者らが決勝大会に進出。日本一を決める。一般的なeスポーツ大会には、予選をオンライン対戦で済ますもの、出場選手が1カ所に集まって1~2日で予選から決勝まで終えるものもあるが、闘神祭は各地のゲームセンターで、タイトルによっては半年近くかけて予選を行うのが特徴だ。参加人数や決勝大会の来場者が年々増えており、人気はじわじわと高まってきた。日本、米国、韓国では大会の様子を動画配信している。
ゲームセンターとそのコミュニティを盛り上げたい
そもそもタイトーが闘神祭を始めたのは、集客が伸び悩むゲームセンターを盛り上げるためだ。かつては若者のたまり場といわれたゲームセンターだが、PCや家庭用ゲーム機のオンライン対応やスマホゲームの普及もあってか、近年は全国的に勢いはない。そこで、「タイトーステーション」などのアミューズメント施設を運営するタイトーが活性化に乗り出した。
タイトーの山田社長は、「ゲームセンターの楽しさを再発見してもらいたい。アーケードゲーム業界全体を盛り上げるために、ゲーム大会を開催しようということになった」と説明する。
その方向性に若干の変化が出てきたのはこの1、2年だ。タイトーは「eスポーツ」という言葉が一般化する前から闘神祭を含むさまざまなアーケードゲームの大会を開催してきたが、eスポーツの盛り上がりによってその位置づけが曖昧になってきたのだ。そこでアーケードゲームを使った大会を「e-ARCADE SPORTS」(eアーケードスポーツ)として再定義。19年4月には社内に専門部署を作り、より積極的に取り組んでいくことにした。
今、同社が目指しているのは、e-ARCADE SPORTSの世界展開だ。山田社長は、「闘神祭はアーケードゲームゲームの全国大会。そして世界で最もアーケードゲームが盛んな国は日本だ。それならば闘神祭を世界大会にしてしまおうと考えた」という。
20年5月に東京で決勝が行われる大会を「闘神祭2020~World Championship of ARCADE~」と題し、初めて米国予選を設けた。カジノホテルなどを運営している米シーザーズ・エンタテインメントの協力を受け、19年8月に同社が運営するラスベガスのeスポーツラウンジで『ストリートファイターV タイプアーケード』の予選を開催。同じくラスベガスで開かれた世界規模の格闘ゲーム大会「EVO 2019」の前日にタイミングを合わせたことで、有名プロゲーマーを含む26チーム78名が参加し、盛況だった。
なぜ、わざわざゲームセンターなのか
闘神祭開催の告知は、今も主としてゲームセンターで行っている。このため、参加者はゲームセンターに普段から足を運んでアーケードゲームをプレーしている人が中心だ。それらの人は、自宅でPCや家庭用ゲーム機、スマホを使って手軽にオンライン対戦が楽しめる時代に、なぜわざわざゲームセンターに行くのか。
この質問に山田社長は、ゲームセンターを子どもの頃にみんなで集まって遊んだ河川敷のグラウンドに例えて説明した。「今活躍しているプロの野球選手やサッカー選手が、かつてはそうしたグラウンドで友達や先輩・後輩と遊び、練習することで成長していったように、eスポーツのプロを目指す人にとって、ゲームセンターが登竜門になり得るのではないか」(山田氏)。
PCや家庭用ゲーム機でネットワークを通じた対戦を行うのとは違い、ゲームセンターでは互いの顔が見えるのもいいところだ。
「ゲームセンターは今も黙々とプレーする人が多く、お互いに背中で語り合うような空気がある。一方で、みんなでもっとオープンにたたえ合うような、対話のあるコミュニティーも形づくれるのではないかと考えている。闘神祭には3人1組で出場するチーム戦もあり、仲間を集めるところから始めないといけない。それぞれのゲームセンターに根付いたコミュニティーを大事にしていきたい」(山田氏)
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