世界で最もプレーされ、eスポーツタイトルとしても人気が高いのが、米ライアットゲームズが開発・運営する『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』だ。アクティブユーザー数は世界で1億人超。これまで日本での知名度は低かったが、近年は高校生大会も行われるなど、注目度が高まってきた。

『リーグ・オブ・レジェンド』の2018年の世界大会「League of Legends World Championship 2018」は、韓国にあるライアットゲームズ公式のLoL専用施設「LoL PARK」で開催された
『リーグ・オブ・レジェンド』の2018年の世界大会「League of Legends World Championship 2018」は、韓国にあるライアットゲームズ公式のLoL専用施設「LoL PARK」で開催された
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 『LoL』は、基本プレー無料のマルチプレーヤーオンラインバトルアリーナ(MOBA)型ゲームだ。プレーヤーは2チームに分かれ、自身のキャラクターを操作してモンスターを倒しながら、経験値とお金をため、キャラクターを育てていく。最終的には自陣の本拠地を防衛しつつ、味方と協力しながら敵チームの本拠地を破壊する。

 eスポーツ競技としても人気は高く、毎年開催される国際大会「World Championship(Worlds)」には世界中からトップチームが集まる。運営元のライアットゲームズの出資とファンの寄付で用意される賞金の総額は、2018年に7億2000万円になった(Worlds 2018)。

 19年9月には、フランス・ルイ・ヴィトンがパートナー契約を締結。同年10月にドイツ・ベルリンで開催予定のWorlds 2019では、優勝トロフィーのための特注トラベルケースを同社が制作することなどを発表している。

Worlds 2019では、ルイ・ヴィトンが優勝トロフィーのための特注トラベルケースを制作する。過去、FIFAワールドカップ、ラグビーワールドカップ、国際ヨットレースなどで同様のケースを制作したことがあるが、eスポーツ大会は初めて
Worlds 2019では、ルイ・ヴィトンが優勝トロフィーのための特注トラベルケースを制作する。過去、FIFAワールドカップ、ラグビーワールドカップ、国際ヨットレースなどで同様のケースを制作したことがあるが、eスポーツ大会は初めて
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 こうした海外での盛り上がりに比べ、日本ではこれまでさほど知名度が高くなかった。日本は家庭用ゲーム機やスマートフォン向けのゲームが人気だが、LoLのプラットフォームはパソコンに限られるということもあっただろう。

 しかし、地道なプロリーグ運営と、「全国高校eスポーツ選手権」(毎日新聞社、サードウェーブ主催)や「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship」(テレビ東京、電通主催)といった高校生向けeスポーツ大会への採用などによって、徐々に注目度は上がっている。特に10代、20代の若年層の人気は高い。そこで、ライアットゲームズ日本法人パブリッシング統括部 統括ディレクターの藤本恭史氏に、同社のeスポーツ事業の海外、日本それぞれの状況について聞いた。

――『LoL』はアクティブユーザー数、視聴者数ともに伸びています。まずはワールドワイドでの現状を教えてください。

藤本恭史氏(以下、藤本氏): 世界大会を例にすると、ユニークな視聴者数は16年が4300万人だったのに対し、18年は9960万人に伸びました。既存のスポーツと比べても引けを取らない数になりつつあります。例えば、中国で最も人気のスポーツは北米のプロバスケットボール(NBA)だそうですが、動画の視聴者数は『LoL』が超えるほどです。視聴者が若いのも特徴で、全視聴者に占める18~34歳の割合は80%に達しています。

『LoL』の世界大会のユニーク視聴者数の推移。2018年に9960万人に到達した(出所:ライアットゲームズ)
『LoL』の世界大会のユニーク視聴者数の推移。2018年に9960万人に到達した(出所:ライアットゲームズ)
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――スポンサーにはどんな企業が付いていますか。

藤本氏: 『LoL』は世界に14のプロリーグあり、スポンサーはそれぞれ異なります。ブラジルは米ジレット、トルコは英ボーダフォン・グループ、北米はホンダ、中国は米ナイキですね。18年の世界大会は米マスターカードがスポンサーになりました。

 LoLを含め、eスポーツの中継やゲームの配信動画は若い人に人気が高く、しかも一度見始めると数時間、見てもらえることがほとんどです。ですから、若い層にリーチしたい、広告をしっかり見てもらいたいという企業には最適なメディアなのだと思います。

毎週試合を開催し、日本でも総視聴数10倍に

――日本の状況はいかがですか?

藤本氏: 日本では、『LoL』のプロリーグである「LJL(League of Legends Japan League)」を開催しています。実は15年に始めた当初はオンラインのみの大会で、ライアットゲームズの主催ではありませんでした。当社が公式大会と認めたのが16年からです。

 海外に比べると、日本での人気はまだまだですが、それでも伸びは順調です。LJLのレギュラーシーズンの、これは総視聴数になりますが、16年はわずか70万人程度だったのに対し、18年には730万人超と10倍以上になりました。

日本のプロリーグ「LJL」の総視聴数の推移。2016年から18年で10倍以上になった(出所:ライアットゲームズ)
日本のプロリーグ「LJL」の総視聴数の推移。2016年から18年で10倍以上になった(出所:ライアットゲームズ)
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 これはプロリーグとして、毎週末、東京・渋谷のイベントスペース「ヨシモト∞ホール」で(試合を生で見られる)オフラインの試合をしていることが大きいと思います。LJLは「Spring Split」と「Summer Split」という2シーズン制で、それぞれ11週のレギュラーシーズンとプレイオフ(Semi Final、Final)があり、約3カ月続きます。その間、常設の会場でずっと試合がある。これは結構大きいことではないでしょうか。

 『LoL』ってどんなゲームなのか、日本ではコアなゲーマー以外にまだあまり知られていないと思うんです。ですが、プレーヤーとゲーム観戦を楽しんでくださる方の増加で、少しずつゲームへの理解も進んできました。その礎となっているのが、毎週末の試合ではないかと思うのです。

 実際、急激に総視聴数が伸びた17年は、オフラインの大会を始めた年です。eスポーツの場合、動画配信でも観戦できますから、オフラインでもオンラインでも違わないように思いますが、やはり選手の顔が見えるオフライン大会は実感をより得られます。

 ですからこうした機会は大事にしたいですね。17年のSummer SplitのFinalは、幕張メッセのイベントホールで3000人規模の会場を用意して開催しました。ファンの皆さんにはお祭り感覚で見ていただけたと思います。19年のSummer SplitのFinalも2年振りに大きなステージ。立川にある「アリーナ立川立飛」で行いました。

アリーナ立川立飛で開催されたLoL Summer SplitのFinal
アリーナ立川立飛で開催されたLoL Summer SplitのFinal
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――日本ではLoLの人気が上がってきたとはいえ、まだ海外ほどではありません。今後、ファンやユーザーの裾野を広げるためにどんな施策を考えていますか。

藤本氏: 『LoL』は、おかげさまで長期にわたりプレーしてくれているプレーヤーが多いんです。だからこそ、就職や結婚、家庭を持ったなど、ライフサイクルの変化でやめてしまう人がいる。そのやめてしまったプレーヤーが今、観客として戻ってきてくれていると感じます。「プレーはもうあまりできないけれど、見るのも面白いな」というように。

 このようなユーザーと、新たに入ってくる若いプレーヤーがいずれもファンとして定着してくれれば、いずれはプレーする子どもを親が観客として応援する構図もできていくでしょう。

 例えば、全国高校eスポーツ選手権やSTAGE:0の会場にはたくさんの親が子どもの応援に来ていましたが、その多くはゲームや試合の内容が分からなかったかもしれません。でも、もう1世代くらいたつと、かつて『LoL』をやっていた親が子どもと一緒にプレーし、応援する側に回ると思うのです。

 それとともに、ゲームも他のスポーツと同様、一緒に楽しんだり、腕を磨いたりするものという理解が進むでしょう。その理解がユーザーの裾野を広げていく。その一歩手前くらいまでは日本も来ていると思います。

オフライン会場ならではの体験がある

――プロリーグであるLJLを盛り上げていくためにはいかがですか?

藤本氏: 我々は今、LJLの運営の柱として、「体験」「競争力」「エコシステム」の3つを掲げています。

 1つ目の体験とは視聴体験のこと。オフライン会場でプロの試合を見ると、(オンラインだけよりも)コンテンツの深みをより感じてもらえると思います。

 また、オフラインの会場では、試合の合間にロビーでファンミーティングを行っています。選手と直接コミュニケーションを取ると、選手像がよりリアルに見えてくる。その分、応援したくなって、ファンとして定着してくれます。選手側も見られることが励みになりますし、プロとしての振る舞いを意識するようにもなるでしょう。ファンにとっても選手にとっても良い体験になっていると思います。

ヨシモト∞ホールで開催されたLJL 2019 Spring Splitの様子
ヨシモト∞ホールで開催されたLJL 2019 Spring Splitの様子
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 2つ目の競争力では、19年からリーグ参加チームを6チームから8チームに増やしました。さらに試合形式をBO3(2本先取)からBO1(1本先取)に変更しています。これはチーム同士の競争力を高めるだけでなく、多様性と1回勝負の緊張感を高めるためです。

 3つ目は、エコシステムの確立ですね。これまで『LoL』の公式グッズは通販などでしか購入できませんでしたが、19年9月のLJL 2019 Summer SplitのFinalでようやく日本でも買えるようになりました。オリジナルグッズは様子を見ながら充実させていきたいと考えています。

 加えて、レギュラーシーズンでは、各チームのグッズ販売も試みました。事前申請をしたチームに、ロビーで試合前にグッズを売ってもらったんです。参加チームの1つ、DetonatioN FocusMeはもともとグッズ販売に力を入れていますし、Burning CoreとかUnsold Stuff Gamingなどのチームもグッズ販売を強化していくようです。

 これは2つ目の競争力にも関わる話ですが、グッズを売るには、各チームにファンがつかなくてはいけません。長期的なブランディングが必要ですが、このあたりはまだまだです。チームごとのカラーがもっとはっきりしてくれば、それぞれにファンが増え、スポンサーもつくようになるでしょう。チーム、選手、運営がそれぞれプロフェッショナリズムを発揮できるかが今後の課題です。

 『LoL』の裾野を広げるには、プレーヤーを増やすだけでなく、応援文化も根付かせなければなりません。幸いその文化はできつつあります。もともとオンライン対戦から始まったリーグなので、他のスポーツにはないコミュニティーが形成されています。ゲーマー向けチャットアプリ「Discord(ディスコード)」などでつながっていて、互いに連絡を取り合い、観戦に来る人たちもいるんです。

 応援の仕方も「こういう応援が好き」「ああいう応援は嫌い」といった意見が出てくるようになりました。こちらから応援を強制することはないので、観客の皆さんでいろいろな形を見つけてもらえるといいですね。世界各国でお国柄が出るのも面白いでしょう。

有料化しても観客は減らない

――19年のLJLは全試合有料チケット制にしましたが、手応えはいかがでしたか。

藤本氏: ヨシモト∞ホールでリーグを行うことになったタイミングで、全試合有料にしました。当初、有料化で来場者が減るかとも思いましたが、影響はなかったですね。全試合満席とまではいきませんが、開幕戦やSemi Final、Finalなどの重要な試合は、あっという間に完売します。

――ライアットゲームズがeスポーツイベントを開催する目的はプロモーションですか。興行としても拡大していくのでしょうか。

藤本氏: 我々としては、『LoL』を支えてくれているファンに対して、最高のプレーを見せることで、当社の利益をプレーヤーや観客に還元したいという思いがあります。当然、会社としてはプロモーションの意味合いが最も強いですが、純粋に多くの人に楽しんでもらいたいと言うのも事実です。

 チケットは有料化しましたが、現時点では単独の事業としてどこまで利益を追求するかまでは考えていません。現状は、とにかく毎回欠かさず試合を行うことを念頭に置いています。

 19年11月にパリで行われるWoulds 2019 Finalsのチケット代は一番高いものが87ユーロ(日本円で約1万円)ですが、特別に高くなっているわけではないと思います。プロスポーツやオリンピックのように収益を目的とした興行なら、もっと高くなるのではないでしょうか。『LoL』の観客は若い世代も多いので、収益を追い求めるあまり、その人たちが来られなくなってしまうのは本意ではありません。

 将来的には、大会の運営方法をいろいろと模索していきたいと思っています。呼応してくれるスポンサーが増えれば、さらに良い状況になるでしょう。興味を示してくれるのは、やはり若年層とのつながりを持ちたい企業ですね。ただ、プレーヤーや視聴者が若い世代というのは分かっていても、広告効果がどれだけあるのかを測る手段はないので、様子見というところが多い。そのため今、グローバルで調査会社の米ニールセンと契約し、効果をリサーチしているところです。

ライアットゲームズ日本法人パブリッシング統括部  統括ディレクターの藤本恭史氏
ライアットゲームズ日本法人パブリッシング統括部 統括ディレクターの藤本恭史氏
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(写真/中村宏、岡安学)