1万5000人が登録する花のサブスクリプションサービス「Bloomee LIFE」を提供するCrunch Style(東京・品川)は、早ければ2019年内にもパーソナライズ機能を加える。会員向けアプリで届いた花の評価を取得し、嗜好に合った花を提供する。開発資金として、19年8月に3億円の第三者割当増資を実施した。
Bloomee LIFE(ブルーミーライフ)は、日本初の花のサブスクリプションサービス。ネットから申し込むと、毎週または隔週、季節に合ったブーケが届く。プランは500円、800円、1200円(税別、別途送料)の3種類だ。16年のサービス開始から3年で、会員数は1万5000人を突破。さらに継続期間は1年半以上の人も多く、高い継続率を誇る。パーソナライズの強化で会員基盤を強固にし、損益分岐点である会員数3万人を目指す。
19年9月時点で、全国約100店舗の生花店がサービスに参加。各店舗からランダムに花が届く。店舗によってブーケのデザインの志向性が異なり、リッチなデザインが得意な店舗もあれば、素朴なデザインが得意な店舗もある。知らなかった花が届いたり、新しい組み合わせを発見できたりする点が魅力的なサービスだろう。
だが、その一方で継続期間が長期化すると、「好きな生花店から届かない、好みじゃない花が届いたなど、嗜好性の違いを理由とした退会が増え始める」とCrunch Style CEO(最高経営責任者)の武井亮太氏は話す。サブスクリプション事業において、最も重要なKPI(重要業績評価指標)は継続率だ。退会を食い止めるために、さまざまな手立てを講じることで、顧客基盤を強固にし、安定的な収益を得ることが事業の成長につながる。
そこで、Crunch Styleはユーザーの嗜好性に合わせた花を届ける、パーソナライズ化を強化する。嗜好性の違いが退会理由であれば、顧客ごとの好みに合わせた花を届ければ、退会率を下げられると考えたわけだ。パーソナライズには、これまでの事業で蓄えたブーケのデータを活用する。
ブーケのデータベースを独自で開発
同社がサービスに参加する生花店から顧客に配送するブーケの種類は、毎週150通りに及ぶ。各店舗から配送前にブーケの写真、使用した花の種類などを管理画面から登録してもらう。もともとはサービスの規定通りブーケが送られているのかを確認するための仕組みだったが、データを破棄せずに蓄積していた。これまでに8000通りのブーケのデータがたまっているという。
「図鑑などで花単体の情報はあるが、花束やブーケのように組み合わせになると途端にデータが無い」(武井氏)ところに目を付けた。このブーケのデータベースと顧客から取得したブーケに対する評価を組み合わせて、パーソナライズする。
現在、テスト的に一部のユーザーに対してブーケが届いた後にネットを通じたアンケートを実施し、色味や雰囲気、好きな花など、ブーケに対する評価を取得している。これらのデータからユーザーの好みをリッチやナチュラル、フレッシュなど8パターンに分類。各パターンのブーケ作りを得意とする店舗を中心に、配送できるように手配している。
「パーソナライズ化しすぎない」がポイントに
ただし、花のパーソナライズで重要となるのは「パーソナライズしすぎないこと」だと武井氏は言う。ブーケの好みは色味と雰囲気が主軸となる。ところが赤色が好きな人といった具合でセグメントしてしまうと、赤色のブーケばかり届いてしまう恐れもある。「花のパーソナライズの難しいところは、オーダーメードスーツのように最適化しすぎると同じような物ばかり届いてしまうところ」(武井氏)。そのため、届けるブーケの7割をパーソナライズし、残りの3割は生花店独自のアレンジを加えたものにするという。
「早ければ19年中、遅くとも20年初頭には関東圏からパーソナライズした花の配送を始める」と武井氏は明かす。パーソナライズするタイミングで、アプリの提供も始める方針。アプリでは、毎週届いた花の評価や配達状況の確認が手軽にできるようになる。花は季節などによって、嗜好の変化が起こりやすい。アプリを通じて評価を得ることで、顧客情報をアップデートし続けてパーソナライズの精度を高めたい考えだ。
花の一括仕入れでコストダウンと品質向上を狙う
さらにパーソナライズの本格開始に向けて、自社で花を調達できる仕組み作りも進める。通常、生花店は市場か仲卸業者から花を仕入れる。生花店は個人経営店が多く、市場で競りをし続けるのは資金面で厳しいところが多い。そうすると、パーソナライズに必要な花を仲卸業者から仕入れる必要があるが、各店舗が個別に仕入れると相対的にコストが上がってしまう。
そこで、Crunch Styleがデータに基づいて、パーソナライズに必要な花を一括で仕入れ、仕入れた花を提携する生花店に卸して、ブーケの制作を依頼する。それにより花の品質を均一にし、なおかつコストを抑えることを目指す。
花は鮮度が大切。パーソナライズするためには、前述した仕入れ基盤を全国に持つ必要がある。まず19年度中に関東で仕入れ基盤を作り、関東圏の生花店から開始する方針だ。この仕入れ基盤とパーソナライズのための開発資金として、19年8月にベンチャーキャピタルを中心に3億円の第三者割当増資を実施した。
(写真提供/Crunch Style)