歴史あるパズルゲーム『ぷよぷよ』も、人気のeスポーツ競技の1つ。認定プロが次々登場し、2019年10月に茨城県で開催される第74回国民体育大会(以下、茨城国体)の文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」では、競技タイトルの1つにも選ばれた。セガゲームス eスポーツ推進室長 宮崎浩幸氏に、同社のeスポーツへの取り組みを聞いた。

『ぷよぷよeスポーツ』(C)SEGA
『ぷよぷよeスポーツ』(C)SEGA

――セガゲームスでは、eスポーツに特化したゲーム『ぷよぷよeスポーツ』を使い、「ぷよぷよチャンピオンシップ」「ぷよぷよカップ」といったeスポーツ大会を開催しています。大会を始めた理由は何でしょう。

宮崎浩幸氏(以下、宮崎氏): セガゲームスが公式で開催しているのは、「ぷよぷよチャンピオンシップ」と「ぷよぷよカップ」の2つの大会です。

 公式大会の目的は、競技性を備えた対戦パズルという「ぷよぷよ」の特性を認知してもらい、幅広い層のお客様に楽しんでいただくことです。企業の立場からは、それが自社のIP(ゲームやキャラクターなどの知的財産)の価値を高めることにつながると期待しています。

 公式大会のうち、ぷよぷよチャンピオンシップは、プロ選手のみが出場できるポイント制の大会です。18年は年間を通じた獲得ポイントが高い上位8人がファイナルに出場し、シーズンチャンピオンを決定しました。

茨城国体の文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」では、「小学生の部」「一般の部」(12歳以上)に分けて全国で予選を行った
茨城国体の文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」では、「小学生の部」「一般の部」(12歳以上)に分けて全国で予選を行った

 かたやぷよぷよカップは、プロ・アマ問わず、誰でも参加できるオープン大会です。アマチュア選手は、ここでベスト4以上になるとプロライセンスを得られます。ただし、ぷよぷよカップにはプロ選手も参加しますから、プロ選手を何人か倒さないとベスト4までは上がれません。プロ選手になるのは簡単ではありません。

 ぷよぷよカップを開催しているのは、プロが固定化することで、『ぷよぷよeスポーツ』がこれまであったぷよぷよのコミュニティーから乖離(かいり)してしまうのを避けるためです。ぷよぷよは歴史がありますし、全国にはつわものがたくさんいます。この人たちがプロや公式大会を一つの目標とすることで、「ぷよぷよ」というIPがさらに活性化すると思います。

――公式以外にもぷよぷよの大会は開かれていますね。

宮崎氏: 『ぷよぷよ』は、昔からユーザーによるコミュニティー活動が活発で、特に地方では、これらコミュニティーの力なくして大会は開けないほどです。ですから、『ぷよぷよeスポーツ』の大会開催に当たって必要な許諾手続きは、他のeスポーツタイトルに比べるとかなり簡単にしているつもりです。

 また、コミュニティーベースの大会の参加人数、規模によっては、公式大会同様にポイントが付与できるようにもしています。このため、地方の大会にプロ選手が参加することもあり、それが地方や地域の活性化につながっています。

 加えて、19年は茨城国体の文化プログラムとしても『ぷよぷよ』の大会が開催されることになりました。これは日本eスポーツ連合(JeSU)と、茨城県の「いきいき茨城ゆめ国体/いきいき茨城ゆめ大会実行委員会」が主催するものです。公式大会は、集客の観点から大都市圏、特に東京での開催がどうしても多くなってしまう。一方、国体では全国で予選を実施しました。セガゲームスとしては主催ではなく運営協力の立場でしたが、コミュニティーの活性化という意味でもIPの価値を高めるという意味でも大きな成果があったと考えています。イオンモールさんの協力を得て、同社の施設を使わせてもらったので、地域的な差も抑えられました。

小学生、シルバー、女性大会も開きたい

――地方でeスポーツ大会をやってみた感想はいかがですか。

宮崎氏: 『ぷよぷよ』はもともとタイトルの認知度が高いので、興味を示していただきやすい。イオンに買い物に来たお客さんが立ち止まって大会を見てくれました。イベントなどで実際にプロの試合を見ていただくと、『ぷよぷよeスポーツ』がスキルフルな対戦ゲームで、プレーヤーの技量が勝敗に大きく影響するということを理解してもらえると思います。実際、ルールはフェアで分かりやすく、シンプルながら強くなるには鍛錬が必要という、間口の広いゲームだと思っています。

 興行としてeスポーツ大会を見てみると、まだまだこれからという印象ですね。スポンサーも少しずつ増えているとはいえ、運営コストをまかなえるところまでは行っていません。ただ、大会を開くためのノウハウは成熟しつつあります。イベント担当チームの熟練度を測る指針の一つに撤収の速さがあると思いますが、『ぷよぷよeスポーツ』の担当チームはすごいですよ(笑)。eスポーツのイベント会社として成立しつつある状態です。今後、eスポーツの運営が独立した部署や別会社となれば、他社のイベントもできるかもしれません。

――eスポーツイベントを継続していくために必要なことは何でしょう。

宮崎氏: Free to Playで課金制のゲームなら、eスポーツイベントを行い、注目度を高め、大会に合わせてアイテムを売ったりすることが収益につながるので、大会を開く意義を見いだしやすいかもしれません。その点、買い切りタイトルである『ぷよぷよeスポーツ』は、eスポーツの効果でゲーム自体が爆発的に売れることは考えにくい。そうなるとイベント運営で収益を出す、あるいは企業にとってなんらかの価値が向上することを考える必要があります。

 収益源として考えられるのは、まずはスポンサー収入です。その場合、eスポーツはメディア、媒体になります。入場料、グッズ販売、配信などによる放映権もありますが、日本国内でこれらがきちんと成立するには、まだ時間がかかるでしょうね。

 プロ選手の価値を高めることも考えています。地味な活動ではありますが、地方でイベントがあれば、その開催地に近い場所に住んでいるプロ選手を紹介する取り組みをしています。これは、プロ選手にも、地方にも、我々にもメリットがあることです。

 また、継続的に大会を続けていくためには、コストを下げる工夫も必要でしょう。クオリティーを維持したままコストが下がれば、参加人数や回数を増やしたり、地域を広げたりも可能になります。現場の責任者として、まずは活動を継続していけるビジョンを、ステークホルダーに示すべきですから。

セガゲームス eスポーツ推進室長 宮崎浩幸氏
セガゲームス eスポーツ推進室長 宮崎浩幸氏

――今後eスポーツでの展開の予定をお聞かせください。

宮崎氏: 国体の文化プログラムで、小学生の部を設けられたので、今後はシルバー大会や女性大会もやっていきたいですね。文化プログラムでは女性の参加者も多く、全体の25%にも達したのですが、残念ながら予選を通過し、県代表者になった方はいませんでした。だから、女性が活躍し、参加しやすい場をつくりたい。

 『ぷよぷよeスポーツ』のeスポーツ事業は開始してまだ1年半程度ですが、手応えは感じています。最初はカップ、チャンピオンシップ、プロ、ランキングというスポーツ的なフォーマットを定着させることを考えていましたが、今後はバラエティー感を出していきたいですね。また、国内だけの展開では厳しいので、海外での開催にもチャレンジしていきたい。その流れをつくるには、新作タイトルも必要になってくるかもしれません。

 現時点で、eスポーツは話題先行で地に足が着いていない感じもありますが、もっとスポーツとしての要件を満たし、積み重ねていくことで、安定していくと考えています。一歩一歩積み重ねていきたいですね。

(写真/中村宏、写真提供/セガゲームス)

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