※日経トレンディ 2019年10月号の記事を再構成
全国に約6万店。コンビニエンスストアを上回る店舗網を築いた調剤薬局が岐路に立たされている。ドラッグストアの大攻勢を受け、国からも大変革を促されているのだ。現場では今、何が起きているのか。調剤ビジネスの最前線を追った。
病院の門前に、ずらりと軒を連ねる薬局、薬局、薬局。どこに入ればいいのか、どんな違いがあるのか、外観では皆目見当がつかない。病院の処方箋を手に、途方に暮れた人も多いはずだ。
それもそのはず、門前薬局は、サービス力で競ってこなかった。なぜなら、競わずとも稼げたからだ。病院から1メートルでも近い場所を射止めた薬局に、より多くの処方箋が集まる。だからこそ、何よりも病院からの近さを競う立地ビジネスが横行してきたが、ついにその在り方にメスが入った。
門前からかかりつけへ
「2025年までにすべての薬局を『かかりつけ薬局』にする」。厚生労働省が新たな指針を発表したのは、15年10月のことだった。「患者のための薬局ビジョン」と題し、「『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ」を掲げ、業界全体に大変革を促した。
文書にはこう明記された。「いわゆる門前薬局など立地に依存し、便利さだけで患者に選択される存在から脱却し、薬剤師としての専門性や、24時間対応・在宅対応等の様々な患者・住民のニーズに対応できる機能を発揮することを通じて患者に選択してもらえるようにする」。薬局の役割は、処方箋をさばくことではない。地域の健康を担う拠点へと脱皮できなければ、もはや生き残れないと“警告”を突き付けた。
翌16年度には、早くもそれが形になった。「かかりつけ薬剤師」が制度化されたのだ。患者ごとに服薬状況を管理して薬の飲み合わせなどを指導し、在宅医療を含む24時間対応ができる薬剤師のことで、処方箋受け付け1回につき73点の「かかりつけ薬剤師指導料」が加算される。ただし、そのぶん認定のハードルは高い。同一薬局に週32時間以上勤務かつ1年以上在籍し、薬剤師として3年以上の薬局勤務が必須。そのうえ認定団体による研修を受け、一定の単位数を取得しなければならない。
この業界が特殊なのは、こうした調剤報酬点数の上げ下げによって、収益環境がめまぐるしく変わることにある。
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