企業も大学も「夢を語れ」

 永守氏は日本電産でも、倒産寸前の企業を次々とM&Aで買収して立て直してきた。1株1円で買った企業もある。しかし今や、再生させた企業の利益だけで年間800億円程度を稼ぎ出す。

 「経営は頭じゃない。気概と執念です。やり抜く、そして、絶対に逃げない。一番必要なのは、人心掌握。経営者も大学の理事長も、どこまで行っても、夢を語らないといけない。僕は、大ぼらを吹いてきた。ほらと嘘は、全く違う。嘘は嘘。詐欺師みたいなものだ。でも、ほらは、できると信じてやれば、絶対にできる。夢は必ず実現します」

 あふれんばかりの情熱は、昔からいささかも変わらない。今も鮮明に覚えているのは、1973年7月23日。日本電産を設立した日だ。朝8時から従業員3人に訓示した。5、6分で終わるはずだったが、1時間40分語り尽くした。

 「将来こうなるぞって言ったことが、何十倍にもなった。当時は大ぼらだったけれど」。時価総額が4兆円を超えた今も、日本電産なんて知らないとよく言われるというが、時代は変わっていく。「5年か10年後には、モーターが産業のコメになる。クルマに200個ぐらいモーターを積むんだから」。

 日本電産の海外でのブランド名は、「NIDEC(ニデック)」。これは大ぼらではなく、小ぼらまで近づいている話だと、前置きして永守氏は言った。

 「電気自動車に最も優れたモーターを供給して、世界で圧倒的なシェアを取る。そして、フロントガラスに『NIDEC INSIDE』というステッカーを貼ってもらう」。米インテル(Intel)と同様のアプローチで知名度を上げていき、ゆくゆくはニデックコーポレーションに社名を変更することも辞さない。

 ほらは、ほらのままでは終わらせない。「真実に変えていく」。実は、世界大学ランキングの本当の目標は、199位以内どころではない。「何でも最後は1番だ」。そう笑いながら、付け加えた。

 「今、笑っているけど、年を重ねて振り返ったら、あのとき言った通りだと思うようになる」。ほらを吹き、夢を語る。それがかなったとき、今までの大学の常識は、音を立てて崩れ去る。

20年4月開設。京大教授をトップに迎えた工学部の全貌
工学部の建物は、京都市の太秦キャンパスに建設している。機械電気システム工学科のみの単科学部で、留学生寮を建物内に併設。日本で唯一のモーター技術を学べる学部になる
工学部の建物は、京都市の太秦キャンパスに建設している。機械電気システム工学科のみの単科学部で、留学生寮を建物内に併設。日本で唯一のモーター技術を学べる学部になる

 2020年4月に開設する京都先端科学大学の工学部長に就任するのは、京都大学大学院工学研究科の田畑修教授。「この大学が育つことは、京大にとってもウィンウィン。教員や学生の流動性を高めていきたい」と意気込む。カリキュラムの特徴は、英語の授業数にある。語学学校のベルリッツ・ジャパンと連携し、入学直後から90分授業を週10コマこなす。

 特筆すべきは、卒業研究に代えて、学部の段階から「キャップストーン」プログラムを導入すること。ゼミの教員ではなく企業が選んだ社会的な課題に、チームを組んで解決策を見いだしていく試みで、ストリートスマート(実践力のある秀才)を育て上げる。教員21人のうち7人が外国人。定員200人に対し、留学生は21年度に40人、24年度には100人と定員の半数まで増やす計画で、グローバルなエンジニアを輩出していく。

■入学直後は毎週15時間の英語漬け
■入学直後は毎週15時間の英語漬け
英語は15人の少人数クラスで、1、2年時に集中的に開講。特に入学直後は1週間に10コマ(900分)と極めて多い
工学部長に就任する京大大学院工学研究科の田畑修教授。工学部棟の特徴は、留学生寮が図書室や研究室と隣り合っている点にあるという
工学部長に就任する京大大学院工学研究科の田畑修教授。工学部棟の特徴は、留学生寮が図書室や研究室と隣り合っている点にあるという
工学部では、農場を観測するドローンも学べる
工学部では、農場を観測するドローンも学べる

DATA
●学科名/機械電気システム工学科●定員/学部200人(うち留学生21年度40人 → 24年度100人へ)
●大学院名/工学研究科●定員/修士15人(将来100人へ)、博士2人(将来10人へ)

(写真/水野浩志)