1996年の登場以来、マツダのコンパクトカーとして親しまれてきた「デミオ」がマイナーチェンジ。車名を「MAZDA2」に変更した。目的は欧米とのブランド統一だけではない。既存イメージから脱却し、燃費・走行性能だけではない車としての魅力のアピールを図る決意があった。
マツダは2019年9月12日に「MAZDA2(マツダ・ツー)」を発売する。同社の5ドアハッチバック「マツダ デミオ」をマイナーチェンジし、新たな名称でリブランドした。
デミオと言えば、1996年にデビューしたマツダの定番コンパクトカー。クラスを超えた室内空間の広さと実用性は、さながらステーションワゴンのコンパクトカー版といった趣で、当時、経営危機がささやかれていたマツダの救世主とも言うべきヒットを記録した。
2007年発売の3代目からはコンセプトを変更。ミニバンスタイルからヨーロッパの小型車を意識したようなスポーティーなハッチバックスタイルに生まれ変わった。さらに14年発売の4代目では全長、ホイールベースを拡張。「2014-2015 日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞する完成度の高さを見せた。
そうして20年にわたり、進化を重ね、愛されてきたデミオブランドを捨て、新たに日本市場に投入するのが今回のMAZDA2だ。ベースは4代目デミオを引き継ぎながらも、「日常を豊かにする上質なパーソナルカー」というコンセプトの下、操縦安定性や乗り心地、静粛性といった部分により踏み込んで改良している。
以前からデミオは欧州でMAZDA 2として発売されていたため、一見するとブランドをそろえた形だが、マツダによるとリブランドの目的はそれだけではない。「走行性能、燃費性能だけで語られがちなコンパクトカーの市場に、マツダ車ならではの魅力を提示したい」と関係者は口をそろえる。
性能を語らないイベントで世界観をアピール
その姿勢は、7月25、26日の2日間にわたって開催されたメディア向けイベントにも表れていた。「日常を豊かにするヒント with MAZDA2 取材会」と名付けられたこのイベントでは、走行性能や燃費性能については一切語らず、開発に関わったエンジニアやデザイナーが、フラワーデザイナーやウォーキングスタイリストとMAZDA2のコンセプトを語り合った。
筆者が取材した7月26日のイベントでは、マツダの社員で、ウォーキングトレーナーのデューク更家氏公認のウォーキングスタイリストでもある山田紫津子氏と、MAZDA2のシートエンジニアである元吉奈緖子氏が登壇。MAZDA2のシート開発のこだわりを語った。
山田氏が「歩行時には骨盤を立て、背骨がS字カーブを描いた状態にすることで体幹バランスが良くなる」と解説すると、元吉氏がこれを受け、「運転中も歩行中と同様、骨盤が立った状態を維持できれば、身体に余計な負担をかけることがない」と説明。MAZDA2では深く腰掛けることで、骨盤が立ち、S字カーブを維持できるようにシートを開発したとアピールした。
また、MAZDA2のチーフデザイナーの木元英二氏、カラーデザイナーの吉田早織氏は、上質さを重視した内外装の進化について説明。木元氏は、「BMWの『ミニ』やアウディの『Audi A1』といった欧州のプレミアムコンパクトと比しても遜色のない、洗練や上質さを備えたコンパクトカーを目指した」と語った。
そのために重視したのが低重心とワイド感。例えば、フロント部分は、バンパーの左右両端下部に水平な細長いメッキパーツを配し、グリルを幅広に作り替えた。リアは、デミオにあったバンパー下部の黒い面積を減らし、ボディーカラーの面積を増やしたという。
グリルやヘッドランプもやや深い位置に取り付けることで、ボディーのシンプルな面構成の中にも凝った造形を浮かび上がらせた。その対比によってエレガンスさを演出する意図がある。
上質さはインテリアでも重視。コンパクトカーはビビッドで目を引く色使いが多いが、MAZDA2は「空間全体で落ち着く快適さ」を重視。朝から夕暮れ、夜にかけての光と影の移ろいを感じさせるような「光と影によるアート表現」をコンセプトに配色したという。
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