映画を見ながら、出演者の服を購入できる──。三陽商会が「シネマコマース」と銘打った新ブランドを設立した。「着る映画」をテーマにしたブランド名は「CAST:(キャスト)」。2019年8月1日、1号店の渋谷店をオープンし、9月までに全国で約30店舗を展開する。老舗アパレル復活の一手となるか。
それは、オシャレすぎる復讐劇──。とある映画監督から3股され、自らの恋愛を作中でネタにされていたと知る3人の女性が、“恋の復讐”に立ち上がる。「CAST:」という名の約30分のムービーが突如、ウェブ上で“封切り”された。
化粧品会社で働くLISA(リサ)、パティシエのANNA(アンナ)、歌手のCARA(カラ)。職業もライフスタイルも異なる3人の女性像を、女優の飯豊まりえ、モデルのemma、アーティストの佐藤千亜妃がそれぞれ熱演した。メガホンを取ったのは、Mr.Childrenや米津玄師のミュージックビデオを手掛けたことで知られる、林響太朗監督。
一期一会のキャスト陣が織りなす物語は、ただの映画ではない。鑑賞しながら、出演者の衣装をその場で購入できる「シネマコマース」という仕組みを日本で初めて取り入れたのだ。
使い方は簡単だ。パソコンやスマートフォンで特設サイトにアクセスし、映画を再生。画面の上部に出てきたLISA、ANNA、CARAという名前をタップするだけで、着用している衣装が一覧で表示され、そのまま購入画面に進める。
仕掛けたのは、創業76年のアパレル大手、三陽商会。「CAST:」は22番目のブランドで、岩田功社長は「今後の成長を担う新しい事業だ」と力を込めた。
英高級ブランド「バーバリー」とのライセンス契約を15年に終了後、三陽商会は3年連続で最終赤字と苦戦を強いられている。まさに社運をかけたプロジェクトがベールを脱いだ。
「一人十色」若い女性が主人公
ターゲットは、20代後半から30代前半の女性。三陽商会のブランドの中では比較的若く、同年代の女性社員でプロジェクトチームを結成した。最大の特徴は、「1ブランドに3つのライン」(岩田氏)を設けたことにある。
LISA、ANNA、CARAという女性3人を通じて、テイストが異なる3人のファッションをCAST:というワンブランドで表現する。商品コンセプトは「人生という物語を、演じるための服」。ファッションを身にまとうことで、一人ひとりが物語の“主人公(キャスト)”となれるブランドを目指した。
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