ヤフーがコンテンツマーケティング支援事業から撤退することが、日経クロストレンドの取材により明らかになった。同社は、2014年から提供している広告サービス「Yahoo!コンテンツディスカバリー」を19年9月末に終了すると導入先などへ案内し始めた。代替サービスは予定しておらず、事実上の撤退となる。

ヤフーは2019年9月30日に「Yahoo!コンテンツディスカバリー」を終了すると案内し始めた
ヤフーは2019年9月30日に「Yahoo!コンテンツディスカバリー」を終了すると案内し始めた

 Yahoo!コンテンツディスカバリーは、レコメンドウィジェット型と呼ばれる広告サービス。ヤフーの運営する「Yahoo!ニュース」を始めとする自社媒体や、導入する媒体社のサイトの記事ページ内に、関連性の高い記事の一覧を表示。記事一覧の枠の一部に広告を掲載して、広告主のサイトへと集客するサービスだ。レコメンドウィジェット型広告事業の米タブーラと業務提携を結び、サービスを提供してきた。朝日新聞出版の「AERA dot.」、集英社のスポーツメディア「スポルティーバ」などが導入している。

 ヤフーは、このYahoo!コンテンツディスカバリーを導入する媒体社や、広告枠の販売を請け負う広告代理店に対して、サービス終了を通達し始めた。19年9月30日で、サービスを終了し、広告配信を停止する予定だ。メディア関係者によれば、ヤフーは「中長期的な視点で広告サービスの見直しを図った」と、終了理由を説明しているという。

代替サービスも予定なし

 近年、企業がマーケティングを目的に、自社メディアを開設するケースが増えている。日本ハムが運営するバーベキュー情報サイト「BBQ GO!」や、通信教育大手のユーキャンが運営する学習情報サイト「マナトピ」などはその一例。役立つ情報を提供することで、消費者との接点を拡大するのが狙いだ。

 企業内に眠る情報をオウンドメディアでコンテンツとして提供し、ブランド好意度の醸成やネット通販の売り上げ増加につなげるマーケティング手法を、コンテンツマーケティングと呼ぶ。ヤフーのYahoo!コンテンツディスカバリーは導入するメディアの記事に表示する記事推奨枠から、コンテンツマーケティングに取り組む企業のオウンドメディアへと誘導する広告サービスとして提供してきた。

 コンテンツマーケティング市場の拡大により、新たな広告売り上げ増加を期待してヤフーは参入したものの、売り上げは伸び悩んだ模様だ。ヤフーはポータルサイト「Yahoo! JAPAN」に記事を配信するメディアにだけ、限定的にサービスを提供していた。そのため、広告配信面を広げきれず、競合との顧客獲得競争で苦戦を強いられた可能性が高い。

 ある大手スポーツメディアはYahoo!コンテンツディスカバリーを導入したが、早期に競合サービスのアウトブレインを主力に切り替えている。現在も一部では、Yahoo!コンテンツディスカバリーを活用しているもの「アウトブレインの方が収益性が高いうえに、掲載される広告の質も良い」(同スポーツメディアの関係者)。アウトブレインは「コンテンツマーケティング市場は広がっており、順調に顧客企業数も増えている」と説明する。よりオープンかつ収益性の高いプラットフォームへと媒体社、広告主ともに流れたのではなかろうか。

 別のメディア関係者によれば「ヤフーはYahoo!コンテンツディスカバリーに代わるサービスは予定していない」と説明を受けたという。ヤフーはコンテンツマーケティング支援事業からの撤退となる。

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