人手不足やドラッグストアの“越境”により成長に陰りが見え始めたコンビニ市場。そんななか、スタートアップ企業が開発した異色のキャッシュレス無人コンビニが、マンションへの展開を開始。コンビニよりも消費者に近い“小商圏”を発掘し、新市場の創造を狙う。
次世代型の小売業態としてひそかに増殖しつつあるのが、スタートアップの600(東京・中央)が開発したキャッシュレス無人コンビニ「600」だ。2018年6月のサービス本格スタートから1年弱で東京都内のオフィスを中心に、約50カ所に設置され、KDDIやLINEといった大手から、BASE、Gunosyなどのベンチャーまで幅広い企業で利用されている。
19年8月にはついに、マンションへの展開をスタート。第1弾として、新日鉄興和不動産の分譲マンション「リビオレゾン板橋本町ステーションサイド」(東京・板橋、総戸数95戸)に付帯サービスとして導入される。マンションへの展開を起爆剤に、2019年内に500カ所、24年までに1万カ所の設置を目指す。
“無人コンビニ”と銘打つものの、米アマゾンが展開する「Amazon Go」とは形態が大きく異なる。600は幅60×奥行き55×高さ175cmと、自動販売機ほどの大きさの冷蔵ケース。コンビニで並んでいるような、主要メーカーの飲料や菓子に加え、文房具や日用品など最大600品目を並べられるという。商品補充は週に2回、600が行う。
クレジットカードが「鍵」と「決済手段」に
利用者はまず、本体に取り付けられたカードリーダーにクレジットカードを通して扉を開く。その後、欲しい商品を取り出すだけ。商品代金は自動的にカード払いになるため、煩雑な決済は不要だ。買い物にかかる所要時間はわずか数秒。驚くほど簡単に買い物ができた。
無人化のカギは、商品に取り付けられたRFIDタグだ。このタグと本体が無線でつながり、どの商品が本体から取り出されたかを判別する。現状、決済手段はクレジットカードに限られるが、「QRコードなど、他のキャッシュレス決済への対応も検討している」(600代表の久保渓氏)という。
600はRFIDタグによる商品情報とクレジットカード決済の組み合わせにより、時系列で購買データを追えるのが強みだ。個人を特定しない形で個別ユーザーを把握し、どのようなタイミングで利用しているのかが分かる。そのため、端末ごとに商品構成をダイナミックに変えられる。
例えば、オフィスの場合、同じ会社内でもフロアごとに働く人の属性が異なることは多い。当然、売れ筋もフロアごとに異なる。例えば、「エンジニアの多いフロアなら、栄養ドリンクや缶コーヒーに加え、一息つく際に好まれるチョコレートなどの甘い物が人気。一方、女性が多いフロアでは、スムージーや野菜ジュースのニーズが高い」(久保氏)といった具合だ。「マンションでも同様。立地だけでなく、コミュニティーの属性や購買行動を基に最適化していく」(久保氏)。
さらに、利用者からのリクエストにも対応。LINEやSlackなどのツールを利用し、600のサポート担当に商品の要望を出せる。「マスクが欲しい」といった大まかな要望だけでなく、個別商品を指名することも可能だ。
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