サンリオの子会社で、東京・多摩エリアにあるテーマパーク「サンリオピューロランド」を運営するサンリオエンターテイメント(東京・品川)が、位置情報を活用したマーケティング施策に取り組んだ。大量の位置情報データとAI(人工知能)を活用して見込み顧客を抽出し、多数の見込み客のいるエリアを選んでネット広告を配信。実際の来場者を計測して成果を測った。

サンリオピューロランドで催されるライブショーでキャラクターがあいさつ
サンリオピューロランドで催されるライブショーでキャラクターがあいさつ
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 サンリオピューロランドはこのところ、定期的に内容が変わるライブショーなど魅力あるコンテンツをそろえて、順調に客足を伸ばしている。この勢いを駆ってさらなる集客増を図るため、来場しやすい関東圏を対象に、サンリオのキャラクターやピューロランドに親近感を抱く消費者に対して、効率的にネット広告を展開することを考えた。併せて、広告に触れた消費者が実際に来場するかどうかまで確認できる手だても打とうともくろんだ。

 そこで採用したのが、大量の位置情報を提供して企業などのマーケティングを支援するクロスロケーションズ(東京・渋谷)が提供するソリューション「Location AI Platform」だ。

Nearの独自技術を応用して位置情報を収集するツールを活用

 クロスロケーションズの前身は、シンガポールに拠点を置き、位置情報を活用した広告配信事業を世界市場で手掛けるNearの日本法人。定評あるNearの独自技術を応用して、主にスマートフォン向けアプリから入手した国内約4000万MAU(月間アクティブユーザー)の位置情報データと、国内パートナー企業から入手あるいは購入した、UU(ユニークユーザー)換算で1000万弱の位置情報データを併せ持つ。

 これらの位置情報データを活用して消費者の生活動線を分析し、例えば特定の施設を定期的に訪れるような消費者と類似の行動を取る消費者を推定して抽出したり、広告を配信した消費者の中のどのくらいの割合が、指定の施設を実際に訪れたかどうかを「来場計測」として推定したりすることができる。

 この膨大な位置情報データから消費者の生活動線を分析し、サンリオピューロランドのファンクラブ会員のデータと照らし合わせ、AIを活用して、ファンクラブ会員と類似の生活動線を持ち、サンリオのキャラクターやピューロランドに親近感を抱く消費者が多く居住するエリアを抽出する。

 次いで、「そうした来場確率の高そうな見込み客の多いエリアと、それとは別に、主に就学前の子どもを持つファミリー層、特に母親に対して、ピューロランドへの来場を促す内容のネット広告を、2018年のクリスマス商戦の時期に配信した」(サンリオエンターテイメント サンリオピューロランド営業部マーケティング課の黒河正通課長代理)のだ。

来場計測でネット広告の効果を検証

Location AI Platformを活用して見込み客を表示すしたマップの例<br>出所:クロスロケーションズ
Location AI Platformを活用して見込み客を表示すしたマップの例
出所:クロスロケーションズ
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 成果は上々だ。Location AI Platformを活用して抽出した、見込み客の多いエリアには、これまでなら広告を配信しないようなエリアも多数含まれていた。ところが、ネット広告を配信したところ、当初の想定を上回る消費者が、実際にピューロランドに来場したのだ。「例えば埼玉県狭山市などは、従来ならデジタルでも紙でも、広告を配信しないエリアでした。これほどピューロランドにいらしていただける潜在的な顧客がいるエリアだとは分からなかった」と黒河氏は驚きを隠さない。

 これまでもサンリオエンターテイメントは、Facebookを活用し、消費者の興味(インタレスト)を軸にオーディエンス拡張して、ピューロランドへの来場を促す広告の配信に取り組んできた。「今回の成果で、Location AI Platformを使えば、エリアに基づいてオーディエンス拡張ができると分かった。今後も両者を併用して新規顧客を開拓していきたい」と黒河氏は言う。

セッション数多くても来場するとは限らないと判明

 またファミリー層、特に母親を狙ったネット広告では、新たな発見があった。

 これまでのファミリー層向け広告の場合、広告を見た消費者が実際にピューロランドに来場しているかどうかを計測できなかった。そこで、配信したネット広告をタップしたり、そこから誘導されたWebサイトを閲覧したりして、ネット上のセッション数が多い消費者がピューロランドに来場しているものと類推していた。言い換えれば、KPI(重要業績評価指標)はセッション数であり、その数が増えれば広告配信の効果があったと見なしてきた。

 ところが、Location AI Platformを活用すると、広告を配信した対象の中のどのくらいの割合が実際に来場したかを、推定で計測できる。すると、セッション数の高い消費者が必ずしも来場しているわけではなく、逆にセッション数は少なくても来場している消費者が少なくないことが分かった。広告のクリエーティブの問題なのか、配信のタイミングの問題なのか、それとも別の要因なのか、理由の分析はこれからだが、「ネット広告のROI(費用対効果)を見直すきっかけになった」(黒河氏)という。

 今後は、従来活用してきた「GDN(Googleディスプレイ ネットワーク)」やFacebook広告と併せ、「イースター(復活祭)」「夏休み」「ハロウィ-ン」「クリスマス」というピューロランドが集客に力を入れる時期に、Location AI Platformも活用していく考え。

 近い将来には、「年収や家族構成、趣味などから分析したライフスタイルデータではなく、Location AI Platform独自の、位置情報という消費者の行動データから分析したライフスタイルデータに基づくターゲティング広告の配信も、検討していきたい」(黒河氏)という。

(写真/新華社/共同通信イメージズ)