ごみ焼却炉の自動運転をAI(人工知能)で推進する――。意外な用途でAIの社会実装を進めるのが、技術コンサルティングや開発を手がけるRidge-i(リッジアイ、東京・千代田)だ。第三者割当増資の実施を説明する発表会の場で、AIのユニークなビジネス活用について明かした。
ごみ焼却施設におけるAI活用システムは、荏原環境プラントと共同で開発した。AIを活用し、ピットと呼ぶ集積所からごみを焼却炉に投入するクレーンの自動運転を目指した。ごみ焼却施設では、安定した状態でごみを焼却する必要がある。そのために、焼却炉への投入に適したごみの選別という事前作業が必要だった。具体的には、燃焼や機器に悪影響を及ぼすごみの識別、投入に適さない破れていないごみ袋の識別といったものだ。従来のクレーン自動運転では投入するごみの“質”の変動が大きいため安定燃焼ができず、人間の目で24時間監視することが必要だった。
そこで2社はごみの種類の識別、破れていないごみ袋の識別といった作業をAIに肩代わりさせる共同研究を始めた。ピット内に設置したカメラで撮影したごみの映像をディープラーニングによるモデルで解析し、ごみの種類や破れていないごみ袋を見分けるAI活用システムを開発した。
このシステムの実証実験では、汚泥や剪定枝、ごみ袋などのゴミの種類を識別できるほか、50mプールほどの大きさのピット内にある破れていないごみ袋を検知することができることが確認できた。人の目に代わる「ごみ識別AI」の完成である。すでに荏原環境プラントではごみ識別AIを活用した自動クレーンシステムの運用を開始している。
その効果は大きい。運転員の目による監視を必要としない自動運転時間は、従来のクレーン自動運転では全体の16%だった。ごみ識別AIを活用した自動クレーンシステムでは89%にまで引き上げることができた。
Ridge-i社長の柳原尚史氏は、「ディープラーニングの適用の仕方などについて、荏原環境プラントと綿密なディスカッションを重ねて、ピクセル単位でごみの質を認識できるようになった。ごみ焼却施設の自動運転の実現は労働人口減少といった社会課題の解決につながる。Ridge-iはコンサルティングだけでなくAIの社会実装を推進していく」と語る。
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