無印良品らしさは細部に宿る

 実際に客室を見ると、無印良品らしさが随所に表現されている。代表的な例が、バスルームだ。バスタブとシンクは、UDSが北京のMUJI HOTELに合わせて開発したものを銀座にも導入した。これらの素材には、人工大理石を使用しており、マットな質感に特徴がある。平面と角R(角の丸みの半径)で構成されたシンプルなデザインに無印良品らしさを感じる。

MUJI HOTEL用にUDSが開発したバスタブ(上)とシンク(下)。素材はマットな質感の人工大理石で、平面と角Rが印象的ないかにも無印良品らしいデザイン。商品化の準備を進めている
MUJI HOTEL用にUDSが開発したバスタブ(上)とシンク(下)。素材はマットな質感の人工大理石で、平面と角Rが印象的ないかにも無印良品らしいデザイン。商品化の準備を進めている

 UDSのCOMPATH(設計部門)ゼネラルマネージャーの伊東圭一氏は、「無印良品らしいバスタブを探したが見つからず、新たに開発することにした。平面やRの取り方は無印良品の商品デザインを参考にした」と説明する。このバスタブとシンクは、「良品計画のデザイン室と商品化の準備を進めている」(伊東氏)と言う。他にもサイドテーブルやベッドとしても使用できるソファなど、UDSがMUJI HOTEL用に開発した製品があり、これらが何らかの形で新商品に生かされる可能性がある。一方、良品計画は、客室のデザインを住宅やオフィスに応用したいというニーズがあることを想定し、インテリアなどの相談に応じるサービスも予定しているという。

UDSがMUJI HOTEL用に開発したベッドとしても使用できるソファとサイドテーブル
UDSがMUJI HOTEL用に開発したベッドとしても使用できるソファとサイドテーブル

 客室で備品類を無駄なく、美しく収納する工夫にも無印良品らしさが見て取れる。当初のビル計画では、店舗の上階はオフィスになる予定で建築が進んでいた。しかし、途中でホテルに用途変更したため、天井が通常のホテルの客室よりも高い。一方で、部屋数を確保するため、客室の間口が狭く、奥に長い設計になったことから、手狭に感じるという問題があった。伊東氏は、「少しでも部屋を広く感じられるように、設備を目立たなくしたり、備品を効率よく収納したりする工夫を施した」と話す。

ベッドサイドの照明を壁に埋め込んで目立たないようにしている
ベッドサイドの照明を壁に埋め込んで目立たないようにしている

 例えば、壁掛けテレビは、角度を変えられるアームで固定されているが、その上下左右をパネルで覆っている。そうすることで、テレビ本体やアーム部分、配線を見えなくしている。大型の機械類が壁にあると宿泊客に圧迫感を与える。こうした目立つ備品の存在感を小さくすることで室内を広く見せている。ベッドサイドの照明は、壁に埋め込み、使用するときにはパネルを開く。未使用時には壁に隠れるので、ベッド周りが広く見える効果がある。

 小物類の収納にも工夫がある。グラスやカップ、バスルームの歯ブラシなどを細かく仕切られた引き出しの中に、整頓している。これも多様な収納用品を販売する無印良品らしいアイデアと言える。

カップやグラスやアメニティーなどの小物類は引き出しの中に仕切りをつけて、きれいに収納できるようにしている
カップやグラスやアメニティーなどの小物類は引き出しの中に仕切りをつけて、きれいに収納できるようにしている

照明やエアコンをタブレットから操作

エアコンなどを操作するためのタブレットのインターフェース。シンプルなアイコンをUDSと日本デザインセンターが共同で開発した(写真提供/良品計画)
エアコンなどを操作するためのタブレットのインターフェース。シンプルなアイコンをUDSと日本デザインセンターが共同で開発した(写真提供/良品計画)

 銀座のMUJI HOTELで新たに導入した機能にタブレットを活用した操作システムがある。これは部屋に設置したタブレットによって、照明やエアコン、カーテンの開閉、アラームの設定を可能にしたもの。このタブレットに搭載したIP電話アプリ「Skype」でフロントと通話できるため、客室には通常の電話機を設置していない。

 将来的には、「このタブレットから無印良品の商品を注文できるサービスも検討している」(伊東氏)。銀座の旗艦店では、従来の無印良品の商品に加え、パンや弁当などの食品類も充実。これらの商品をタブレットから注文できて、短時間に届くようになれば、宿泊客にとっての利便性はさらに高まり、店舗の売り上げ増にも貢献する。

 伊東氏は、「MUJI HOTELでの暮らしは、従来のホテルとも、家とも違う。消費者のインサイト、つまり『求めていたのはこういう生活』と気付くような、新しいスタイルを実現している」と語る。良品計画が掲げる「感じ良いくらし」は、銀座の旗艦店とホテルの登場で、新しい段階に足を踏み入れたと言えそうだ。

UDS COMPATH(設計部門)ゼネラルマネージャー 伊東圭一氏
UDS COMPATH(設計部門)ゼネラルマネージャー 伊東圭一氏

(撮影/高山透)

■修正履歴
リード文のホテル運営に関する記述を修正しました。 [2019/04/12 16:00]