2019年春の製造業のデジタル関連の機構改革では、顧客との関係を深めるための組織の新設が目立った。日清食品はダイレクトマーケティング課を、ミツカンホールディングスはデジタル戦略本部を新設した
メーカーの直販強化の動きも、組織改革からは浮かび上がる。日清食品は19年4月1日、マーケティング部の配下にダイレクトマーケティング課を設置した。従来、マーケティング部門や営業部門など、複数の組織でオンラインストアを運営していたが、これを1つの組織に集約した。ブランドマネジャーを含め7人で構成される。「プランニングからサービス提供、購入後のフォローまでを一気通貫して管理し、意思決定のスピードを速め、消費者との接点を強化すること」(日清食品)が組織改革の目的だ。
マーケティング部内に設置することで、「インターネットを活用した各ブランドのマーケティング活動において、購入の受け皿として連携」(日清食品)しやすい体制が整う。
今後は、日清食品と直接つながっている顧客数を拡大していくこと、それに伴いオンライン事業の規模をさらに拡大させることが主な役割となる。また、「個人・法人を問わず既存の商品・商流にとらわれない、多様な事業展開や、デジタルを駆使した運営の効率化も推進していく」(同社)。
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EC関連では、マンダムが19年4月1日付で、EC事業の加速化とボーダーレス化に迅速に対応するためEC推進部に一課と二課を新設した。一課は国内向けのEC業務を担当し、二課は越境EC業務を担当する。
ミツカンはデジタル戦略本部を新設
ミツカンホールディングスは19年3月1日付で、デジタル戦略本部を新設した。本部下に戦略推進部、カスタマーエンゲージメント部、プロセストランスフォーメーション部、グローバルIT企画部を置く4部体制となる。
カスタマーエンゲージメント部は、デジタル技術を活用して顧客とのさまざまな場面におけるエンゲージメントの向上を進める。プロセストランスフォーメーション部は、デジタル技術で既存の事業・業務の改善・高度化を進めることが目的。
戦略推進部は、グループ全体のデジタルに関する取り組みの事務局機能を果たすとともに、現場の業務プロセス改善を目指す同社独自の「三位一体の取り組み」をデジタル技術活用で支援していく。現場の業務プロセスをフローで見える化した上で、ルール・役割・業務プロセスを三位一体で改善していく。グローバルIT企画部は、グループにおけるデジタル・ITに関連した共通のルールや基盤の整備を目的としている。
デジタル戦略本部長には、渡邉英右・執行役員Chief Digital Officer兼デジタル戦略本部長兼プロセストランスフォーメーション部長が就任している。
新規事業へのデジタル活用
経産省が18年9月にデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた研究会の報告書「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を公表するなど、デジタル技術を活用した競争力維持・強化は国を挙げての取り組みとなっている。
それを受けるようにDXを冠した組織も生まれている。JVCケンウッドは19年4月1日付で、ソリューション開発部をDX(Digital Transformation)ビジネス事業部に改称した。ソリューション開発部は、通信型ドライブレコーダーを活用したテレマティクスソリューションなど、同社が手掛ける事業分野の枠にとらわれないソリューション提供を手掛けている。また、田辺三菱製薬は19年4月1日付で、フューチャーデザイン部をデジタルトランスフォーメーション部に改称する。
パナソニックのアプライアンス社は19年4月1日付で、テレビ事業部、ホームエンターテインメント事業部、イメージングネットワーク事業部、コミュニケーションプロダクツ事業部を統合し、スマートライフネットワーク事業部とする。従来の「商品軸」から、くらし・空間における「価値提供軸」に変えることが狙い。価値提供をベースにした組織に変更し、クロスバリューによる新たな価値創出を加速させ、継続的に収益を生み出せる体質へと変革するという。
延べ12社のデジタル関連機構改革 一覧表

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(サービス編)