スターバックスの新型店「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」は、外観を建築家の隈研吾氏が、内部は米スターバックス・カンパニーのチーフ・デザイン・オフィサーであるリズ・ミュラー氏がデザインし、注目を集めている。海外の同型店との違いなど、同店のデザインを分析した。
スターバックス リザーブ ロースタリー 東京では100種類以上の限定コーヒーやティー、グッズ類などを発売する他、イタリアンベーカリー「プリンチ」の商品も販売する。店内にバーカウンターもあり、アルコール飲料も提供する。さらに「AMU TOKYO」と呼ぶイベントスペースも設けた(関連記事「日本初! 話題の“スタバ高級店”は、なぜ駅から離れているのか」)。
スターバックス コーヒー ジャパンが同店を体験型店舗としているのは、通常の店舗と異なり、焙煎したコーヒー豆を保管する巨大なキャスクや焙煎機などが設置されているから。天井に張り巡らされたパイプを通じ、コーヒー豆が運ばれている姿も見ることができる。あたかも工場内にいるようなイメージを打ち出した。実際に、この店舗から各地に焙煎した豆を出荷しているので、むしろ工場自体を店舗にしたともいえるだろう。
店舗の外観は建築家の隈研吾氏が担当し、内部は米スターバックス・カンパニーのチーフ・デザイン・オフィサーであるリズ・ミュラー氏がデザインした。
特に目黒川沿いにあるという立地が、デザインに大きな影響を与えている。目黒川沿いは桜並木があり、春には満開の桜で有名な場所。この有名な桜並木から影響を受け、日本ならではの自然の美しさと空間デザインの融合を目指した。そこに海外のスターバックス リザーブ ロースタリーとは違う日本らしさを表現している。
キャスクと天井で大きな違い
店舗内のインテリアでアイコンとなるのは、いずれもキャスクと天井になっているようだ。それが各国にある店舗の大きな違いにもなっている。上海店のキャスクの場合は、中国をイメージさせる篆刻(てんこく)をモチーフにしたデザインが描かれ、天井はそれぞれ異なる形状のパネルでつくられている。ミラノやニューヨークの店舗でも、キャスクや天井に特徴がある。
東京の店舗も同様だ。内部に入ると、焙煎機の姿の他、世界の同型店でも最も巨大なキャスクが目に入る。4階まで届く高さ約17メートルの赤みを帯びた銅板製のキャスクには、表面に職人が1枚ずつ手作業で仕上げた「桜の花びら」が施されている。日光によって、その色合いが刻々と変わっていくという。
巨大なキャスクは槌目(つちめ)仕上げでつくられたもの。建設に関わった人々が自ら銅板をひと打ちし、表面の質感や模様を作り上げたという。店舗の目の前にある目黒川をキャスクに見立て、春に桜の花びらが目黒川を舞うシーンをイメージさせている。ミラノやニューヨークといった店舗のキャスクが武骨に見えるのに対し、日本ならではの繊細さが漂うようだ。
天井は日本の伝統である「折り紙」をモチーフにした。明るい色合いの木材が使用されている。これも他の店舗では鉄骨をむき出しにして特徴を出す例が多いなか、日本の職人芸と伝統を生かしているようでユニークといえそうだ。
(写真提供/スターバックス コーヒー ジャパン)