ソニークリエイティブセンターは、プロダクトやグラフィックのデザインに加え、ユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスなど、ソニーのデザインすべてを手掛ける。ソニーがビジョンとして掲げる「人に近づく」「感動」をどう実現するのか。同センター長の長谷川豊氏に聞いた。

2018年のミラノデザインウィークに出展した「Hidden Senses」。イメージングやセンシング技術を駆使した展示に、2万5000人が訪れた。「Best Playful Award」受賞
2018年のミラノデザインウィークに出展した「Hidden Senses」。イメージングやセンシング技術を駆使した展示に、2万5000人が訪れた。「Best Playful Award」受賞

クリエイティブセンターの役割は?

ソニーのコア技術には、オーディオビジュアルやイメージング、センシング、AI(人工知能)、ロボティクスがあります。こうした技術をそしゃくし、どう編集するかが我々のデザインのアプローチ。ディープラーニング(深層学習)にしても、最終的にユーザーに届けるにはエモーショナルな価値の提供が不可欠です。これまではスタイリングから考えることが多かったのですが、これからは技術をいかにユーザーエクスペリエンスに変換するかが我々が担う役割です。

手掛けるデザイン領域の変化は?

以前はプロダクトデザインを終え、商品が発売された時点でクリエイティブセンターの手を離れていましたが、コミュニケーションデザイン領域の重みは増すばかり。例えば、「aibo」ユーザーのコミュニティーイベントの会場デザインを手掛けるなど、ユーザーとの接点づくりをクリエイティブセンターが継続的にサポートしています。コミュニケーションデザイナーに加えて、デザインとテクノロジーをつなぐ「デザインテクノロジスト」といった人材も増えています。

体験価値に着目した取り組みは?

継続的にミラノデザインウィークやSXSW(サウス バイ サウスウエスト)などのイベントに出展していますが、2018年のミラノデザインウィークでは、イメージングやセンシングの技術を用いた当社の展示「Hidden Senses」に2万5000人が訪れました。重視したのは、具体的な仮説提案の場とすること。つまり、展示品がリアルタイムに動くことです。

19年3月のSXSW(サウス バイ サウスウエスト)にも出展。「テクノロジー×クリエイティビティ」をテーマにした体験型展示や、トークセッション、プレゼンテーションを開催した
19年3月のSXSW(サウス バイ サウスウエスト)にも出展。「テクノロジー×クリエイティビティ」をテーマにした体験型展示や、トークセッション、プレゼンテーションを開催した

 あくまで展示品と割り切って、バックヤードのパソコンで動かすこともできましたが、それでは体験価値の創出に役立つフィードバックを得られません。自律して体験を提供する展示品を通じて仮説提案をし、来場者の反応を見たり、コメントをもらったりすることに重きを置いたのが新たな挑戦でした。ミラノデザインウィークでは幅広い年齢層の方々に意見をもらう機会にも恵まれ、協業などの相談も寄せられています。

 18年9月に東京の銀座ソニーパークで、「HIDDEN SENSES AT PARK」として展示した際には、それぞれ数人の学生や子供といったグループに体験してもらい、ヒアリングを行いました。銀座ソニーパークでは、ミラノサローネに比べてターゲットを広く取れることが価値。当初からエンジニアと協業したことで、こうしたフィードバックをエンジニアと共有し、リアリティーをもって次のフェーズに進めたのもメリットでした。

18年9月に銀座ソニーパークで開催した「HIDDEN SENSES AT PARK」。「Empty Jug」は光と音、振動で水の存在を感じさせる作品
18年9月に銀座ソニーパークで開催した「HIDDEN SENSES AT PARK」。「Empty Jug」は光と音、振動で水の存在を感じさせる作品

今、求めるデザイナー像は?

デザイナーは究極的には、ユーザーを代弁できる人。だからこそ、ユーザーに対して価値を提供できる。プロダクトやグラフィックはクラシカルデザインともいわれますが、そこでの質は絶対です。レッド・ドット・デザイン賞やiFデザイン賞の特別賞は常に獲っていきます。そこにインタラクションの価値を付加し、さらなる価値をもたらすことが我々のデザイナーの役割です。

ソニーVP、クリエイティブセンター センター長 長谷川豊氏(写真/丸毛 透)
ソニーVP、クリエイティブセンター センター長 長谷川豊氏(写真/丸毛 透)
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