米アマゾン・ドット・コムや米ネットフリックスの攻勢で、サブスクリプション型のネット動画配信サービスの競争は激しくなっている。海外の巨人にどう対抗するか。「U-NEXT」は高めの料金ながら動画の配信数を増やし、電子書籍を統合した。国内勢が他にない特徴を打ち出す生き残り策を加速させている。

有料動画配信サービスの利用経験
有料動画配信サービスの利用経験
MMDLabo(東京・港)が運営するMMD研究所の調査による有料の定額動画配信サービスの利用経験。2018年11月に1万人を対象に調査したもの

 いつでもどこでも映画やドラマが見放題。そんな有料のネット動画配信サービスの利用が定着しつつある。国内で利用率が高いのは「Amazonプライム・ビデオ」。調査会社のMMDLabo(東京・港)によると有料ネット動画配信サービスの利用経験は、Amazonプライム・ビデオが19.7%と最も多い。月額325~400円(税込み)のプライム会員であれば利用できることからお得感があり、iOSのApp Storeの評価も5点満点で4.7(2019年2月中旬時点)と高い。

 利用率やユーザーの評価でアマゾンが一歩リードする中、月額1990円(税別)と高めの価格設定ながらも、MMDLaboの調査では3位、App Storeの評価でアマゾンに迫る「4.5」を獲得しているアプリがある。USEN-NEXT HOLDINGS傘下のU-NEXTが提供するサービスだ。

ライト層向けでは勝負しない

 高評価の背景にあるのはコンテンツの豊富さ。映画やドラマは8000作品、アニメは2000作品以上をそろえ、日本最大級の動画サービスをうたう。毎月1200円分のポイントを付与し、そのポイントで映画の最新作など有料コンテンツも視聴できる。U-NEXTの堤天心社長は「海外の他社サービスはライト層を取り込んでいるものの、我々はそこでは勝負しない」と話す。競合サービスでは物足りないという、映画好きやアニメ好きのユーザーを取り込む戦略を取る。

電子書籍サービスを統合した「U-NEXT」のアプリ。動画の紹介画面をスクロールしていくと、関連する漫画や小説の一覧が出てくる
電子書籍サービスを統合した「U-NEXT」のアプリ。動画の紹介画面をスクロールしていくと、関連する漫画や小説の一覧が出てくる

 2019年1月末からは、これまでは別アプリで提供してきた電子書籍のサービスを動画配信と統合した。ポイントを使って書籍や漫画の電子書籍を購入できる。例えば、漫画が原作の映画を見た後に、メニュー画面をスクロールさせていくと「関連ブック」として、原作の書籍が現れる。「他社サービスではありそうでなかった」(堤氏)という使い勝手を訴求する。同じくアプリ上では、追加料金なしで約70の雑誌を読むこともできる。

 U-NEXTは、15年に東芝から電子書籍サービスの事業譲渡を受けた。これまで動画と電子書籍でアプリが分かれていた理由はここにある。既存のアプリは設計が古かったため、ユーザーから「動作が遅い」などの意見が寄せられることもあったが、今回のアプリ統合では、動作スピードや安定性の面でも解消を図っている。

 通常、電子書籍を読む前には、1冊まるごとのデータをダウンロードしてから、表示するアプリが多い。U-NEXTのアプリでは、「動画の配信技術を電子書籍の表示にも応用している」(堤氏)ことから、漫画や雑誌をストリーミングで表示する。そのため、少ない待ち時間ですぐに読める。

 動画だけを見ているユーザーと比べて、動画と電子書籍の両方を楽しんでいるユーザーは「アプリの起動率が高く、エンゲージの面で数倍の差がある」(堤氏)。特に漫画は映像作品と比べて短い時間で楽しめるため、通勤時のスキマ時間に読まれることが多いという。電子書籍の利用が増えていけば、追加ポイントの購入にもつながることを見込む。

「電子書籍を利用しているユーザーはエンゲージが数倍高い」と話すU-NEXT社長の堤天心氏
「電子書籍を利用しているユーザーはエンゲージが数倍高い」と話すU-NEXT社長の堤天心氏

GYAO!はキムタク効果で伸ばす

 スキ間時間に向けたコンテンツを強化する動きは、他サービスでも広がっている。無料動画サービスの「GYAO!」では、タレントの木村拓哉さんをはじめ、お笑い芸人やアイドルなど1回15分程度で楽しめるオリジナル番組を配信している。テレビドラマ最新作の見逃し配信をすると同時に、本編の1話と1話の間をつなぐ短い追加映像(チェインストーリー)の人気も高いという。

 コンテンツ強化に加え、18年夏からは木村拓哉さんのCMを配信した効果もあり、「(米アプリ調査会社の)アップアニーの調査では18年10~12月の動画配信アプリの国内ダウンロード数で、GYAO!が1位を獲得した」(GYAO編成本部長兼コンテンツビジネス本部長の有本恭史氏)といった成果も現れ始めた。競合は多いが「アニメや映画を含め、プレミアムな映像作品を無料で視聴できるサービスという点で明確なライバルはいない」(有本氏)と自信を見せる。

 ネットフリックスやアマゾンに加え、19年後半には米ウォルト・ディズニーも独自の動画配信サービスに参入するといわれており、競争の激化は必至だ。国内勢も健闘している。テレビ朝日とサイバーエージェントのネット動画配信サービス「Abema TV」は、有料会員を17年末の約8万人から1年で4.5倍の約35.8万人に伸ばした。

 「レンタルDVDや衛星放送の市場を動画配信サービスに取り込む動きは、まだこれから加速する」(堤氏)。市場拡大が続けば、海外サービスにない独自性や利便性を打ち出していくことで、国内勢が今後も存在感を示す余地は十分にありそうだ。

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