AGCは「協創」をテーマにした展示会「AGC Collaboration Exhibition 2018」を、2018年12月12日から19年3月1日まで東京・京橋のAGC Studioで開催している。展示するのは同社が外部クリエイターと推進中の協創プロジェクト「SILICA(シリカ)」から生まれた成果物だ。
AGCはガラスを中心に電子関連や化学、セラミックスなど多彩な事業分野を持つ素材メーカー。シリカの目的は、外部クリエイターと協力して同社が保有するさまざまな素材や技術の可能性を再考し、今までにない価値を創造すること。シリカは18年11月からスタートし、今回の展示会ではガラスの新たな見せ方を提案する「ANIMATED」展と、新しい可能性を提案する「GLASS INNOVATION CHALLENGE」展という2つのエリアに分けて成果物を紹介している。
AGCの3つの技術を活用
ANIMATED展は「未来の協創パートナーにガラスの魅力を感じてもらう場」としての役割を担う。例えばガラスには「冷たい」「固い」「無機物」などの印象があるといわれるが、そのガラスを架空の「生命体」として捉えることで、ガラスが自らの意思で動いたり、呼吸したりしているような印象を与えるようにした。DOMINO ARCHITECTSの大野友資氏、ふしぎデザインの秋山慶太氏、古市淑乃建築設計事務所の古市淑乃氏の3人のクリエイターが協力した。
今回の展示では、3つの技術を活用している。1つ目はスマートフォンやタブレットなどの薄いガラスに、耐久性を与えるための「化学強化技術」。2つ目はガラスに特殊なコーティングを施し、機能や意匠性をプラスする「コーティング技術」。3つ目が、ガラスにさまざまな素材を挟み込み、新たな意匠性を表現する「挟み込み成形技術」だ。これらの技術から、計9点の作品を制作した。
公募から生まれたプロトタイプも展示
一方のGLASS INNOVATION CHALLENGE展では、異業種・異分野のクリエイターから公募したアイデアを基に、プロトタイプ作品を展示している。公募には東京・赤坂のA(エイス)が運営するオープンイノベーションプラットフォーム「Wemake(ウィーメイク)」を活用した。Wemakeには約1万3000人のクリエイターや実務経験者が登録しており、商品や事業開発のテーマを公募すると、登録者から提案が返ってくる仕組み。
今回は「ガラスの特徴を活かした日常の体験を変える製品/サービスのデザイン」というテーマで公募したところ、200案以上が届いた。その中から7案を選出し、クリエイターとAGC社員とでチームを結成。事業化を前提とした7つのプロトタイプを制作した。クリエイターと協力することで、生活者が実際に「欲しい」と思うようなプロトタイプを制作できたという。
「AGCは15年からミラノデザインウィークに出展しているが、従来はクリエイターと関わる仕事はあまりなかった。しかしAGCの技術者もクリエイターの意見から新しい発想や気づきを得られることが分かった。変革を行うには、こうした取り組みは非常に大切だ」(AGCの代表取締役兼専務執行役員CTOの平井良典氏)。AGCはクライアント企業に直接、提案することが多かった。今回の協創活動をきっかけに、より幅広い客層に向けてガラスの持つ新たな価値を提案していく考えだ。
(写真提供/AGC)