デザイン思考をベースに小中学生などに学びの機会と場を提供しているCurio School(キュリオスクール)が2018年12月28日、「Mono-Coto Innovation」というコンテストの決勝大会を開催。優秀なアイデアを評価された8チームが、最終プレゼンに臨んだ。

275人の中高生が参加し、その中から優秀なアイデアを評価された8チームが決勝大会で最終プレゼンに臨んだ。その結果、カシオ計算機のテーマに応じた「今を翔ける少女。」チームが優勝した
275人の中高生が参加し、その中から優秀なアイデアを評価された8チームが決勝大会で最終プレゼンに臨んだ。その結果、カシオ計算機のテーマに応じた「今を翔ける少女。」チームが優勝した
[画像のクリックで拡大表示]

 同イベントでは、中高生向けのマーケティングに関心のある企業が参加し、テーマを出す。そのテーマに応じて中高生がそれぞれチームを組んでフィールド観察やインタビューなどを行いながら発想し、4カ月かけて決勝大会に臨む。企業はテーマを出すだけでなく、メンターとなったり、技術的な視点でアドバイスしたりする。

 あくまで教育の一環としての「ものづくり」だが、参加する中高生は真剣そのもの。学校の授業の合間を縫って定期的にミーティングを重ねるなど、モチベーションは高い。企業にとっても中高生の「本音」をつかめるだけではなく、中高生が真摯に取り組む姿勢に「ものづくりの楽しさを改めて理解した」といった声が出るなど、高く評価されている。今回は、本田技術研究所やデンソー、カシオ計算機といった大手企業の他、菓子メーカーのでん六などが参加して、中高生の日常にかかわるテーマを出した。

 審査項目は「課題発見」「課題解決」「独創性」の3つ。フィールド調査などから自分たちも含めて中高生が直面している課題を見つけ、それをどう解決すべきかを考えていく。単なる机上の空論や自分たちの思いだけで発想するのではなく、周囲の中高生に実際に日々の生活の様子を聞いているだけに、出てきたアイデアはどれもユニークながら、中高生の実態を反映しているものといえた。

会場には企業や中高生の関係者なども駆け付け、各チームのプレゼンを注意深く聞いていた
会場には企業や中高生の関係者なども駆け付け、各チームのプレゼンを注意深く聞いていた
[画像のクリックで拡大表示]

審査員をうならせた「サボテン型デバイス」

 8チームが決勝大会に臨んだ結果、1位になったチームはカシオ計算機のテーマに応じた「今を翔ける少女。」チームだった。カシオ計算機のテーマは「『音楽』で、誰かと『わくわく』を感じられるモノ」で、チームから出てきたアイデアが「Laughie(ラッフィー)」だ。音楽の持つ力で家族間の関係性を進化させることを狙った「サボテン型デバイス」である。家族に対して伝えたいことを録音すると、気持ちにフィットした曲調に乗せて、面白おかしくメッセ―ジを伝える。家族に対して「ありがとう」「ごめんね」と本当は思っているが、恥ずかしくて素直に伝えられない中高生の心情を反映させたという。「なぜサボテン型なのか」という審査員が聞くと、サボテンの花言葉の1つである「内気な乙女」から着想を得たと回答し、審査員をうならせた。

「今を翔ける少女。」チーム
「今を翔ける少女。」チーム
[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
「今を翔ける少女。」チームはサボテン型のデバイス「Laughie(ラッフィー)」を発表した。家族に恥ずかしくて言えない心情を、あえて面白く伝える機器。素直に伝えられない中高生の心情を反映させた
「今を翔ける少女。」チームはサボテン型のデバイス「Laughie(ラッフィー)」を発表した。家族に恥ずかしくて言えない心情を、あえて面白く伝える機器。素直に伝えられない中高生の心情を反映させた
[画像のクリックで拡大表示]

 2位は本田技術研究所のテーマ「僕たち・私たちの考える『モビリティ』革命」に応じた「NEW CREATE」チームが考えた、「学生の荷物を載せ、通学を支援するモビリティ『LIGHT』」が獲得した。毎日、重いかばんを抱えて通学する学生を狙った。荷物を載せる小型の台が自律して動くというアイデアで、ユーザーの進行方向の斜め前を感知して走行する機能を持たせる。ユーザーの歩行速度に応じて走行するので、すぐにかばんを手に取ることができる。実験を重ねて、形状や走行位置などを工夫したという。ステージ上で試作機を使ってデモすると会場は大いに沸いた。今回のデモは人間によるリモコン操作による走行だったが、実際に完成すればかなりインパクトがありそうだった。

「NEW CREATE」チーム
「NEW CREATE」チーム
[画像のクリックで拡大表示]
「NEW CREATE」チームは、個人向けの小型モビリティーをプレゼン。実際に走行するデモを披露し、会場を沸かせた。何度も実験を重ね、歩行中でもユーザーが簡単にかばんを取れる位置を割り出し、自律走行に反映させた
「NEW CREATE」チームは、個人向けの小型モビリティーをプレゼン。実際に走行するデモを披露し、会場を沸かせた。何度も実験を重ね、歩行中でもユーザーが簡単にかばんを取れる位置を割り出し、自律走行に反映させた
[画像のクリックで拡大表示]

 3位は、でん六の「『でん六』の価値を再定義せよ!世界に届くいまだかつてないブランディング」をテーマに考えた「WONDER GIRLS」チーム。女子高生が手に取りたくなるでん六の商品やパッケージを考え、「どこで、誰もが、シェアして人の輪を広げるでん六ブランド『WA』」というブランディングを提案した。友人とでん六の豆菓子をシェアできる形状のパッケージを活用したり、6種類の新しい味を開発したりすることで、女子高生がでん六に関心を持たせるようにする。女子高生がでん六を囲んで談笑するようなイメージを作り上げ、でん六を「人の輪を広げる会社」にしていくことが狙い。チームはでん六の本社がある山形出身だけにステージ上で「でん六愛」を強調。会場にいたでん六の関係者を感激させた。

「WONDER GIRLS」チーム
「WONDER GIRLS」チーム
強烈な「でん六愛」を持つ「WONDER GIRLS」チームは、女子高生が手に取りたくなるパッケージや新しい味を考え、でん六の新しいブランディング戦略をプレゼン
[画像のクリックで拡大表示]

(写真/Curio School)