アマゾンジャパン(東京・目黒)は2018年12月上旬、年末セール「サイバーマンデー」でYouTuberによる商品の紹介動画を配信した。一部商品は瞬時に売り切れたものの、再生が伸び悩む動画も。日経クロストレンドの独自調査で、YouTuber配信動画の総視聴数が判明した。

人気YouTuberのはじめしゃちょーが、アマゾンジャパンのサイバーマンデーで販売したゲームのフィギュア限定セットを紹介した
人気YouTuberのはじめしゃちょーが、アマゾンジャパンのサイバーマンデーで販売したゲームのフィギュア限定セットを紹介した

 18年12月7日の金曜日夕方。サイバーマンデーの開始と同時に、動画をアップしたのはYouTuberの中でもトップクラスの人気を誇る「はじめしゃちょー」だ。「中には何が入っているんでしょうか!? 早速開けていきたいと思います!」。黒い箱を開けると入っていたのは、任天堂のゲームとの連動機能を持った大量のフィギュアだ。

 ゲームの画面も交え、目まぐるしくカットを切り替えながら、時には絶叫しつつ、友達に話しかけるようなトークで商品の魅力を紹介していく。4分36秒の動画の最後には「サイバーマンデー、今年最後のビッグセールでございます」と、アマゾンの販売サイトに誘導した。フィギュアのセットは約8万円と、おもちゃとしてはやや高価な商品だったにもかかわらず、限定50セットが即日完売した。

YouTuber選出はUUUMに依頼

 アマゾンジャパンが動画制作に携わって商品を紹介するのは初めて。「製品を実際に使ってみてどう感じるかを、客観性と透明性のある目で説明してもらいたかった」と話すのは同社マーケティング部長の三井映子氏だ。既に米国のアマゾンでは、セール時には司会者が商品を紹介するテレビ通販風の動画を配信しているという。日本ではネット通販は広がってきたとはいえ「製品を見ないで購入することに不安を感じる人もいる」(三井氏)。だからこそ、YouTuberに利用者の観点で語ってもらうことにした。

 YouTuberが配信した動画はサイバーマンデーの4日間で22本。20組のYouTuberが動画を配信した。動画はYouTubeの各YouTuberの配信チャンネルで、その他の動画コンテンツと同様の形式で配信。コメント欄にタイアップ広告であることを示す提供元のアマゾンの表記と販売サイトへのリンクを記載した。

 インフルエンサーとしての影響力の強さの指標となるYouTubeのチャンネル登録者数は、数万から200万超までばらつきがある。アマゾンはどんな基準でYouTuberを選んだのか。「商品に関係する専門分野を持ち、きちんと魅力を伝えていただける」(アマゾンジャパンシニアPRマネージャーの今井久美子氏)という点を重視したという。

 そのためにYouTuberのマネジメント事業では草分け的な存在のUUUM(ウーム)に協力を仰いだ。商品とYouTuberを決めるまでのプロセスはこうだ。まずはアマゾンジャパンのマーケティング部隊が、普段の口コミ評価の高さや、サイバーマンデー向けにメーカーと用意した限定商品の中から、動画配信する商品を選んだ。それら商品に関連する動画を普段から配信しているYouTuberをウームが選出し、商品のメーカーと協議のうえ配信者を決めていった。

アマゾンジャパンの公式ツイッターで配信した動画には司会者によるアマゾンの使い方の解説動画を加えている。写真はその撮影風景
アマゾンジャパンの公式ツイッターで配信した動画には司会者によるアマゾンの使い方の解説動画を加えている。写真はその撮影風景

 アマゾンジャパンは基本的に動画の内容はYouTuberに一任したという。特大おせちやオフィスソフトの動画を担当したMasuoさん(MasuoTV)は、「今までやってきた普段の動画の表現が最も分かりやすいのではないかと思ったので、奇をてらわず、平常の自分で配信しました」と話す。

 実際、複数の配信者による動画を見てみると、自宅とみられる部屋の中で、アマゾンから届いた商品を箱から取り出す様子を見せたり、機能や特徴を説明したりするというものが多い。動画の冒頭や締めにアマゾンがサイバーマンデーのセールを実施していることをYouTuber自身が告知する。

 YouTuberの配信チャンネルとは別に、アマゾンジャパンの公式TwitterやFacebookページ上でも同じ商品紹介の動画を配信した。ここで配信した動画は、YouTuberの商品紹介とは別に、司会者が登場し、アマゾンの配送方法の選び方など利用方法の解説を付け加えている。アマゾンの使い方に慣れていない初心者を取り込むためだ。

人気YouTuberが実力を見せる

 YouTuberによる商品動画でどれだけの告知効果があったのか。これを検証するための目安として、サイバーマンデーが終了した後のYouTube上の視聴数を調べた。最も視聴数が多かったのは、はじめしゃちょーで約62万視聴と、チャンネル登録者数でトップを誇る人気者ぶりを実証する形となった。動画で紹介したゲームのフィギュアは、動画配信日と同日発売された「Nintendo Switch」の人気タイトル「大乱闘スマッシュブラザーズ」のもの。タイムリーさによる話題性も後押しした。

サイバーマンデー終了後の12月12日午前にYouTuberの配信チャンネルで各動画の再生数を調べた。今回の動画再生数と直近10回の再生数の平均値との比率も示している。配信した日時順で掲載した
サイバーマンデー終了後の12月12日午前にYouTuberの配信チャンネルで各動画の再生数を調べた。今回の動画再生数と直近10回の再生数の平均値との比率も示している。配信した日時順で掲載した

 2位はTOMIKKU NETが紹介した「ズワイガニ棒肉ポーション」で約23万、3位はカズチャンネルの「パソコン」で約14万5000だった。いずれもチャンネル登録数で150万を超えている実力を発揮した。22人の合計視聴数は176万回に上った。とはいえ、すべての動画が良好な結果を出せたとは言えない。視聴回数が1万に届かなかった動画も複数あり、人気YouTuberとの差が浮き彫りになった。

 さらに各YouTuberの過去10回の動画再生数の平均の再生回数と、今回のアマゾンの商品紹介動画の再生回数との比率を調べてみた。比率が高かったのは、はじめしゃちょーの約107%と、埼玉の仙人の約140%。埼玉の仙人が紹介したテレビ用ネットアダプターはアマゾン製「Fire TV Stick」。アマゾンの家電&カメラ部門で売れ筋ランキングの1位に入る商品で、4K対応モデルが新発売になったという話題性で伸びたと考えられる。パソコン、スマートフォンなどIT機器も、比率が高い傾向が見られた。

 今回集計した平均視聴数と比べて2割に満たない動画もあった。アマゾンは「現在分析中」としてコメントを控えており、どれだけ販売につながったのか不明だ。動画のコメント欄にある書き込みを見ると「なんか提供アマゾンのYouTuber多いな」などと、広告であることを意識した書き込みもある。普段のコンテンツと同等の面白さをいかに保っていくかが課題となりそうだ。

 中国で「網紅(ワンホン)」と呼ばれるインフルエンサーによる動画コマースが爆発的に広がったことなどを受け、楽天、メルカリなどネット通販は生放送で商品を紹介するライブコマースを加速させた。一方で、ディー・エヌ・エーはライブコマースのサービスを18年3月に終了するなど、淘汰の動きもある。

 今回のアマゾンジャパンはライブではなく録画映像を配信した。「まずは製品の内容を一番分かりやすく説明するため、内容の品質を担保しやすい方法を探った」(今井氏)。YouTuberによる配信を継続するのか、ライブコマースにまで踏み込む可能性もあるのか。今回の成果を検証したうえで「視聴者の不満点をくみ取って改善につなげたい」(今井氏)と話す。

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