LINEがオフラインの購買データの取得を加速させる。2018年12月7日から実店舗に送客するサービスを開始。導入店舗からLINEのアカウントにひも付く形で購買データを取得する。アパレルブランド「アース ミュージック&エコロジー」286店舗、ビックカメラ約60店舗が導入を予定している。3年で2万店舗への導入を目指す。
新たに開始するサービス「SHOPPING GO」は、LINEの顧客基盤を活用して導入店舗に送客する。17年6月に開始した「LINEショッピング」が集客の基盤となる。LINEショッピングはサービス経由で提携するECサイトで買い物をすると「LINEポイント」がたまる、いわゆるポイントモールサイト。LINEはポイントを付与する代わりに、送客したサイトから購買データを取得する。
LINEショッピングは月間で1000万人が使う規模にまで拡大している。取扱高は非公開だが、伸び率では2018年7~9月期に昨年同期比で2.6倍と、急成長分野だ。「LINEにとってECは過去に何度も失敗してきた。4度目の挑戦となる」(LINEのO2O事業室藤原彰二副室長)。これまでモール型など、数々の失敗を乗り越え、ポイントモール型でようやく成功の道筋が見えてきた。LINEはこれによりオンラインでの購買データを一定規模で確保した。
この仕組みをオフラインの店舗にも広げたのがSHOPPING GOだ。LINEはSHOPPING GOを導入する企業のブランドごとに、LINEポイントがたまるデジタルポイントカードを発行する。LINEのアプリ上から対応店舗のカードを開くとバーコードが表示される。利用者は対応店舗で買い物をするときに、レジでカードを提示してバーコードを読み取るだけで購入金額に応じたLINEポイントがたまる。企業がLINEに払う利用料金の一部がポイント原資となり利用者に還元される。最低料率は購入金額の2%から導入企業が設定できる。当然、高いほど利用者はお得に買い物できるため使われる可能性は高まるが、その分、費用負担も大きくなる。
LINEはポイントを付与する代わりに、LINEアカウントにひも付く形で購入した商品データを取得する。この仕組みによって、LINEショッピングで取得するオンラインの購買データと、SHOPPING GOで取得するオフラインの購買データを統合した形で蓄積可能になる。
購買データの量を取るための施策
「AI(人工知能)を活用した顧客体験の最適化には、データ量が重要になる」と藤原氏は言う。経済産業省の調べでは、物販系分野のEC化率はいまだ5.79%にとどまる。購買データの量を取るには、オフラインの購買データの取得が欠かせない。だから、LINEは決済サービス「LINE Pay」の展開も含めて、オフラインの購買データ取得を強力に推進する。蓄積した購買データは販促支援や広告などに生かすことで、収益性を高めることを狙う。
また、導入企業には、自社の顧客がオンラインとオフラインでどういった購買行動を取っているかといった、リポートをLINEが提供する。これにより、自社だけでデータを抱え込むのではなく、導入企業にも価値を還元していく。
SHOPPING GOは企業の新規顧客開拓から、優良顧客への橋渡しとなるサービスとして開発された。「企業が進めているオムニチャネル戦略は、いずれも既にロイヤルティの高い顧客を、さらに高めようとしている施策が多い」(藤原氏)。LINEポイントでお得に使えることに価値を感じるLINE利用者を送客し、LINEショッピング経由の案内などで、さらなる利用を促す。こうして、優良顧客化への橋渡しをしていく。
店舗への送客にはLINEショッピングを使う。サービス開始後、利用者がスマートフォンの持つ位置情報の利用を許諾していれば、SHOPPING GOのページに対応店舗が今いる場所から近い順に表示される。よりお得に使える近隣の店舗を推奨することで来店を促す。また、LINEショッピングのLINE公式アカウントには2700万人超が登録。このLINE公式アカウントを通じて、メッセージを配信してSHOPPING GOの導入店舗へと誘導する。
効果測定では透明性を担保する。ポイントを付与する際にバーコードを読み込むため、利用企業はSHOPPING GO経由の購買者数や購買金額も分析可能。「効果測定によって成果を実感してもらえれば、より多くの販促予算を使ってくれるようになる」(藤原氏)。より透明性の高いプラットフォームにすることが、さらなる企業利用につながると見る。
利用企業が自社でデジタルの会員カードを発行している場合、シームレスな連携も可能だ。連携させた場合、LINEポイントを取得するためのバーコードを読み込んだ後に、画面の右下に表示される「+」ボタンをタップすると、企業が発行する自社の会員カードのバーコードをLINEのアプリ上で表示できるようになる。昨今、会員カードのアプリ化を進める企業が増えている。そういった企業であれば、SHOPPING GOとの連携で利用者はアプリを切り替えなくても自社の会員カードを表示できるようになるわけだ。利用者はLINEポイントと企業が発行するポイントの両方を取得できるため、よりお得に買い物できる。
「LINE Pay」普及策としても活用
さらに、ポイント付与後にLINE Payのバーコードも表示できる。つまり、理論上はポイントカードの取得から、決済までをLINEだけで完結できるようになる。ためたLINEポイントは、そのままLINE Payにチャージして買い物に使われるケースが多いという。そのため、せっかくポイントをためたのに使えないということを避けるために、SHOPPING GOの導入店舗にはLINE Payも同時に導入することを勧める。これによりLINE Payの普及も狙う。
次のバージョンでは1つのバーコードを読み込むだけで、LINEポイントと企業独自のポイントが同時に付与できる仕組みの開発も進めている。現時点では2つのポイントを得て、さらに決済をする場合、3回バーコードを読み込ませる必要があるが、その回数を減らすことで利便性の向上を目指す。
掲載当初「アース ミュージック&エコロジー」の導入店舗数に誤りがありました。本文は修正済みです。[2018/12/07 12:00]