紅茶ブランド「リプトン」が同ブランド初となる紅茶専門店「リプトン ティー スタンド」の出店をスタートした。きっかけは夏場の売り上げ対策から生まれた「フルーツインティー」のポップアップショップに連日行列ができたことだという。

紅茶ブランド「リプトン」が同ブランド初となる紅茶専門店「Lipton Tea Stand(リプトン ティー スタンド)」の出店をスタートした。2018年11月には北海道北広島市と名古屋、12月に福岡にオープン。20年を目標に、全国展開を目指す。
スタンド形式の店舗で、メニューは大きく分けて3種類。「ストレートティー」、紅茶の中に数種類の果物を入れた「フルーツインティー」、そして茶葉を牛乳で煮出した「ロイヤルミルクティー」だ。ここ最近ブームになっているタピオカミルクティーも用意している。同ブランドを展開するユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの北島敬之社長は「紅茶はストレート、ミルクなどさまざまな飲み方ができるが、日本ではケーキと一緒に飲むというイメージが強い。まだまだ伸びしろはあるはずだ」と話す。

夏場の売り上げ対策から生まれた商品がヒット
飲料市場において、湯を沸かしていれるものや希釈タイプのコーヒー、紅茶、緑茶などは「手入れ飲料」と呼ばれている。紅茶ではティーバッグ、リーフティー、インスタントティーなどがこのカテゴリーに入り、リプトン、日東紅茶、トワイニングの3ブランドが市場の7割を占める寡占状態。シェアトップはリプトンだ。
だが、実は手入れ飲料市場全体を見ると、その90%がコーヒーと緑茶。紅茶は5%しかない。さらに、夏場に売り上げが落ちるという課題もあった。

そこでユニリーバが考えたのが、アイスティーの中にフルーツを入れて提供するという施策。「フルーツインティー」と名付け、16年から3年間にわたって夏季限定でポップアップショップを展開してきた。「湯を沸かして自分で紅茶をいれるのはハードルが高い。普段紅茶を飲まない人に向け、見た目のかわいさを切り口にすることを考えた」と、リプトンのシニアブランドマネジャーの元島陽子氏は振り返る。
元島氏の読みは当たった。フルーツインティーは20代を中心に支持を集め、開催期間中は連日行列が続いた。17年からはアジア各国でもポップアップショップを展開。19年には欧州にも拡大する予定だ。リプトンは全世界でブランド展開しているが、日本発の施策が世界に広がるのは類を見ないという。また、家庭で手軽にフルーツインティーが作れる「水出し用ティーバッグ」という新たな商品も生まれた。

市場規模が小さいままでは多様化しない
「インパクトのある体験を提供することで、トレンドは作れる」。そう実感した元島氏が次に着手したのが、リプトン ティー スタンドだった。日本人が紅茶に持っているかしこまったイメージではなく、コーヒースタンドのようにいつでも気軽に紅茶が飲める場所を目指す。「ターゲットは20〜30代。駅周辺や繁華街など通行量が多く、若い世代と接点が持てる場所に出店していきたい」(元島氏)。18年内に出店する3店舗の1日の平均来店数は500〜750人を見込んでいる。

ここ数年続くタピオカミルクティーブームも、ティースタンドの追い風になると元島氏は考える。「タピオカミルクティーはサードウエーブコーヒーのブームが落ち着いたタイミングで、新たな飲み物として求められたのではないか」(元島氏)。
さらに、「市場が小さいままでは多様化しない」(元島氏)というのも、今回の専門スタンド展開の背景にある。紅茶の本場である英国では、茶葉やいれ方にこだわった紅茶を好む人もいれば、安価なティーバッグを使って水代わりに飲む人も多い。「日本でサードウエーブコーヒーが受け入れられたのは、すでにコーヒーが日常的に親しまれているという土台があったから」(元島氏)。まだ市場規模が小さい紅茶が品質や専門性だけを武器に攻めても、消費者には受け入れられないというわけだ。
出店先を決めるに当たり、東京、大阪はあえて外した。「大都市に関してはポップアップショップで得た知見がある。地方都市でより多くのデータを集めたい」(元島氏)。
消費者と直接接点を持つことで、新たな商品作りにつながる発見もあるだろう。だが、同社はティースタンドをマーケティング施策ではなく、新たな事業の柱として位置付けている。「リプトンのユーザーは40代女性が中心。10年後、20年後を考えて、新たなユーザーを獲得する必要がある」(元島氏)と、長期的な戦略として考えているようだ。