1億人超の契約者を抱える大手通信会社は、どんなデータを集めて分析し、どんな用途に活用しているのか──。米ベライゾンワイヤレス、独ドイツテレコムの実態の一端が、米テラデータが開催したイベント「Teradata Analytics Universe 2018」(米ネバダ州ラスベガス、10月14~18日)で垣間見られた。

イベント「Teradata Analytics Universe 2018」で講演するベライゾンワイヤレスでデータサイエンティストのヘッドを務めるKsenija Draskovic氏
イベント「Teradata Analytics Universe 2018」で講演するベライゾンワイヤレスでデータサイエンティストのヘッドを務めるKsenija Draskovic氏

 ベライゾンワイヤレスは米国で加入者数第1位の携帯電話事業者。全米で98%のLTEのカバーエリアを持ち、1億1600万の契約者を抱える。そのベライゾンワイヤレスは、データを活用することで既存顧客の解約を減らすことに成功したという。

 同社でデータサイエンティストのヘッドを務めるKsenija Draskovic氏は、「ベライゾンワイヤレスでは顧客のニーズを予測することで、解約率を0.97%まで引き下げることができた。米国の他の携帯事業者の中には2~3%の解約率という数値もあるが、最も低い解約率がベライゾンワイヤレスの数値だ」と語る。

 データ分析には、テラデータのデータ分析プラットフォーム「Teradata Vantage」を利用している。モデル化に使ったデータは、外部のデモグラフィックデータ。性別、年齢、住んでいる地域、所得、職業、学歴、家族構成、趣味や音楽の嗜好など非常に多くの変数があり、これらのデータを使って機械学習によるモデルを学習させた。

 「ベライゾンワイヤレス内でデータを活用したいユーザーに対して、最新の分析情報を1時間以内に提供できるようになった」(Draskovic氏)。顧客ニーズを予測し、解約しそうな顧客には適切なキャンペーンなどを実施することで、解約を減らす成果につながっているという。

自然言語の分析でサポートを高度化

 ベライゾンワイヤレスはテキストマイニング(文章解析)を使った顧客サポート業務の支援も実施している。SNSへの自社に関する投稿やサポート窓口でのチャットによるやり取りなどを集め、構造化されていないテキストデータをマイニングして、意味のある情報を取り出そうというのである。

 多くのチャットやSNSの投稿の中から、「住所を変更したい」「バッテリーが火を噴いた」といった通信会社のサービスに直接関係するものだけを取り出す。ノイズとなる単語や会話を除去する前処理を行った後に、教師なし学習でモデル化をして情報を分類するルールを作っていく。こうして、顧客が求める情報を的確に迅速に把握し、満足度を向上させる手を打っていく。

 世界各地でサービスを提供するドイツテレコムは、法人顧客の獲得やサービスの最適化に、データ分析の活用を始めている。同社は50カ国以上でサービスを提供し、携帯電話サービスで1億6800万、固定電話サービスで2800万、ブロードバンド回線で1900万の加入者を持つ。そのなかで、ドイツ国内の中規模企業に対する法人営業支援に、データ分析を活用していると説明した。

 銅線を使った回線から光ファイバー回線への移行が進み、中規模企業の市場は成長している。そうしたなかで、データ分析の結果を用いて顧客に対して適切な提案をすることでビジネス拡大を目指すものだ。

 ベライゾンと共通するのは、外部データを活用していること。「Google マップ」のような位置情報、金融ニュース、ローカルニュースなどといった外部データを利用している。これらのデータを販売や経営管理のデータと連係させて、特定の出来事と販売の関連性を時系列で分析する。これにより、適切な顧客に適切なタイミングで、効果のある文脈でサービスを提案できるようになるという。データ分析の結果によって、営業担当者はより確度が高い顧客に適切な施策を実行できるようになるというわけだ。

 この仕組みの導入による営業支援の効果は大きく表れ、ドイツテレコムの説明員は「営業プロセスを40%短縮できた他、1年で100万ユーロ(約1億2800万円)の収益改善につながった」と説明する。グローバル企業の規模ではデータ活用の積み重ねが、巨額の改善効果をもたらしている。

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