紳士服の製造販売を手掛けるAOKIホールディングスは2018年11月14日、サブスクリプション型のスーツレンタルサービス「suitsbox」の終了を利用者に案内し始めた。今回、その理由についてAOKIが日経クロストレンドの取材に応じた。終了の理由は、大きく4つの「想定外」が挙げられそうだ。
最大の「想定外」は、事前に想定した利用者層と実際の利用者のズレだった。suitsboxはスーツ離れが進む若者をターゲットに「所有」するのではなく、「使用」できるスーツとして開発した。対象とするターゲット層は20代、および30代だった。ところが蓋を開けてみれば「実際の利用者の年代は40代が中心となり、狙いとのずれがあった」(AOKI)。
AOKIの既存事業の顧客層の中心である40代がsuitsboxの利用者層の中核を占めては、売り上げ減などの影響を与えかねない。伸び悩む既存事業の保守と、新しい収益モデルの確立との狭間で揺れる大手企業ならではの苦悩が垣間見える。

2つ目は商品構成だ、同社は実際にサブスク型のサービスをメーカーが提供することで分かった課題として、「AOKIの既製品の有効活用を図る狙いもあったが、レンタルするアイテムとしてはユーザーが求めるデザインやバリエーションの満足を高めるには、商品構成が難しいという判断に至った」(AOKI)と答えた。社内とはいえ、顧客の期待に応える商品は自在に調達できるわけではないだろう。顧客満足度が低ければ短期間での退会を招き、LTV(顧客生涯価値)が低下し、新規の顧客獲得コストがかさむ。
それらの結果として、「システム構築費ならびにサービス運用コストがかさみ黒字化が見込めない」(AOKI)ことが、サービス終了を判断した最終的な理由だ。3つ目の想定外は運用コスト。suitsboxは自社で物流網を持たず、寺田倉庫の提供する倉庫代行サービス「minikura」を活用するなど、極力コストを抑えた事業モデルの構築を目指したものの、想定内の運用コストには収まらなかったようだ。
事業単体での収益確保が難しいため、「AOKIの既存店やECサイトへの相互送客を図った」(AOKI)ものの、「想定以上の効果を得ることができなかった」という。これが4つ目の想定外。こうした要因でサービス終了の判断に至ったようだ。
難しい利用継続率の試算
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