体重計のタニタ、「タニタ食堂」のタニタ、Twitterのタニタ──。タニタと聞いて思い浮かぶのは人それぞれのようだ。2020年以降は、そこに健康プログラムのタニタが加わりそうだ。タニタ子会社が産学連携で健康プラットフォームを構築し、楽しみながら健康になれるプログラムを提供する。

「タニタ食堂」に続いて「タニタカフェ」も出店したタニタの次の展開は?
「タニタ食堂」に続いて「タニタカフェ」も出店したタニタの次の展開は?

 「タニタって食堂の他に体重計も出してるのね」。タニタ(東京・板橋)ブランディング推進部広報課課長の冨増俊介氏は、「近年、こんな反応がしばしばある」と苦笑する。

 タニタは1959年からヘルスメーター(体重計)の製造を開始し、体脂肪計、体組成計を世に送り出してきた計量器のトップブランド。ただ、体重計は一度購入すればしばらく買い換えないだけに、自宅の体重計がどこのメーカーか、即答できる人は意外と少ない。近年のタニタは、大ヒットしたレシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』と、それをきっかけに出店した「タニタ食堂」「タニタカフェ」、森永乳業とコラボした「タニタ食堂監修のデザート」、マルコメとコラボした「丸の内タニタ食堂監修の減塩みそ」などが目立つこともあって、外食、食品のブランドとして一部消費者には映っている格好だ。

 では2020年以降のタニタはどんな会社になっているのか? 「健康プログラムを出してる会社でしょ?」と言われているかもしれない。それを予感させる記者会見が18年9月末にあった。子会社のタニタヘルスリンク(東京・文京)が、パートナー企業4社と共に健康・健診情報を集約した健康プラットフォームを構築し、一人ひとりに合わせた行動変容を促す健康サービスを提供する、というものだ。

 健康プラットフォームに投入するデータは、タニタヘルスリンクが企業や自治体に提供している「タニタ健康プログラム」で蓄積した体組成や運動の計測データ、食事データなど約80万人分の健康データから本人の同意を得たもの。他に、岡山市で検診・医療施設を運営する淳風会が加盟する全国健康増進協議会に働きかけて得られる健診データや、ワークスタイル健康診断サービス「はたらきかた健診」を企業向けに提供しているイトーキが持つ働き方・生産性などの労働関連データも統合する。

タニタ子会社が主導して構築する健康プラットフォーム
タニタ子会社が主導して構築する健康プラットフォーム

 これらの健康ビッグデータを、東京大学を拠点とする産学連携組織が開発した技術を活用して、生活習慣病を引き起こすメタボリックシンドロームの発症リスクを予測、可視化。そして利用者が登録する趣味・嗜好などの各種情報に応じて、行動変容を促す最適な健康プログラムを個別に提示する。この解析システムを日立システムズと共同開発する予定だ。

 このサービスのポイントは、単に医学的見地から疾病リスクや対策を情報提供するにとどまらず、個人の生活スタイルや趣味・嗜好から、楽しい、続けたいと思える健康コンテンツ・プログラムを提供することで行動変容を促し、結果としてラクに利用者を健康にしていくところにある。健康プログラムは既にさまざまあるが、頓挫、挫折してなかなか続きにくいという課題があった。メタボ解消を苦行ではなく、楽しみながら達成できるものにできれば、「人生100年時代」において健康寿命を伸ばし、医療費の削減にも寄与できる。その意味で国策に通ずるプロジェクトでもある。

 趣味・嗜好に基づいた健康プログラムとは、例えばゲーム好きのユーザーには「ポケモンGO」のような位置ゲームを提供することで、歩くことを習慣化させるイメージだ。

 タニタは楽しみながら健康になるシカケづくりには定評がある。13年には、アニメ「進撃の巨人」とコラボした「オリジナル歩数計」を発売し、歩数に応じて階級がアップしたり、歩数計のキャラクターから応援メッセージをもらえたりと、ウオーキングをエンタメ化する企画を打ち出している。

2018年11月に発売した、映画『カメラを止めるな!』コラボ歩数計
2018年11月に発売した、映画『カメラを止めるな!』コラボ歩数計
18年12月から男性声優プロジェクトとコラボした歩数バトルがスタート
18年12月から男性声優プロジェクトとコラボした歩数バトルがスタート

 18年11月にはヒット映画『カメラを止めるな!』とコラボした3Dセンサー搭載歩数計を発売した他、12月からは男性声優12人によるラップソングプロジェクト「ヒプノシスマイク」とのコラボ企画で歩数バトルがスタートする。企画に先駆けて発売したヒプノシスマイクの活動量計は受け付け開始4時間で完売し、その後追加販売する人気だった。健康が気になり出す前から健康に留意してもらう仕組みとして、趣味と掛け合わせたプログラムは効果がありそうだ。

 19年4月から岡山市でトライアル事業を開始し、全国での稼働は21年度になる見込み。短期間のマンツーマン肉体改造トレーニングで「結果にコミット」するRIZAP(ライザップ)が脚光を浴びているが、中長期で楽しみながら健康体になるタニタ流プログラムも、健康サービスの有力な選択肢になるだろう。

この記事をいいね!する