米ゼネラル・モーターズ(GM)は、データと分析から企業を変革して新たな収益を生む役割を担う「チーフ・データ&アナリティクス・オフィサー(CDAO)」を置く。同社CDAOのチャールズ・トーマス氏は、コネクテッドカーのデータからいかに新たな収益を生むか、構想の一端を明かした。

トーマス氏は米国時間の2018年10月16日、データ分析サービスの米テラデータが米ラスベガスで開催した同社ユーザーの年次イベント「Teradata Analytics Universe(TAU) 2018」に登壇し、データアナリティクス責任者の役割について説明した。
トーマス氏は17年7月にGMのCDAOに就任、その前は金融大手の米ウェルズ・ファーゴのチーフ・データ・オフィサー(CDO)を務めていた。「CDOはリスクという面からデータを見て企業を守る役割だった。CDAOは企業を変革するものであり、GMでの役割はさらに新しい収入を生み出していくCDAO2.0だ」(同氏)。
本当のデジタルカンパニーにCDAOは不要
トーマス氏は、本当のデジタルカンパニーには、CDAOは要らない役割だと言う。「デジタルカンパニーは最初からデータを活用するように作られている」(同氏)からだ。企業内で俊敏に動くために、戦略的に小さな組織とした。ウェルズ・ファーゴでは1900人の部隊だったが、GMでは30人にした。
現在、取り組んでいるのがGMの組織文化の変革だ。トーマス氏は「アナリティクスはどこでもやっている。しかしそれが組織の習慣になっているのか。アナリティクスを横展開可能で、反復できるようにする。プロセスも変えていく。今やすべてのビジネスからデータが生成されて、価値を出すことができる。ただ、アナリティクスのインサイトを届けても、すぐに古くなってしまう。なので、自ら(分析を)できるように“釣りの仕方”を教えていきたい」と話す。
トーマス氏はウェルズ・ファーゴでは金融の取引データ、以前は顧客データの分析に携わっていた。GMでは「IoTに関わることができて幸せだ」と言う。
現在、GMのコネクテッドカーのビッグデータを分析しているところだという。「どのラジオを聴いているのか、車線から離れたのかどうか、シートベルトを着用しているのかどうか、といった情報が集まってくる。コネクテッドカーからしか得られないものであり、これらの情報をユースケースと照らし合わせてどう活用していくべきか考えている」(同氏)と明かす。
ユーザーのプライバシーを守ったうえで匿名であれば、もっと社外に情報を出していいという考え方もある。「どのラジオをどこで、どのくらいの間聴いているのか。3秒ごとにデータを取っているが、『44歳で子供を学校に送っている』ということが分かれば、どのような広告やクーポンを出せばいいと考えられるようになる」(同氏)。ドライバーによるラジオのオン、オフのタイミングをレコード会社に提供することで、楽曲編集の最適化に活用するといった考えもあるという。
最後に「CDAOはデータビジネスのCEOだ。企業のなかでこうした全責任を持っているポジションを作っていくべきだ」と聴衆に訴えて締めくくった。