個人データ活用を一変させる「情報銀行」事業者の認定団体が、日経クロストレンドの取材により明らかになった。認定するのは情報信託機能の普及を推進することを目的に設立された民間団体「情報信託機能普及協議会」だ。情報銀行には三菱UFJ信託銀行、電通テックなどが相次いで参入を発表している。情報銀行事業者の認定の枠組みはこれまで総務省と経済産業省が共同で検討を重ねてきた。認定団体の決定を機に来年度以降、米中に後れを取るパーソナルデータの活用が本格化しそうだ。

(写真/Shutterstock)
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 情報信託機能普及協議会がヤフーの川邊健太郎社長が代表理事を務める日本IT団体連盟の傘下に入り、認定業務を行う。2018年8月13日に日本IT団体連盟で行われた決議によって、傘下に入ることが可決された。

 情報銀行とは購買履歴やスマートフォンから取得した位置情報、アプリなどで取得した健康情報といったパーソナルデータを、本人の同意を得た上で企業間で流通できるようにする仕組みだ。米グーグルや米アマゾン・ドット・コム、米フェイスブックなどの大手IT業者によるパーソナルデータの寡占が進む。こうした中、そうした大手IT企業に対抗する競争力を付けるために、データの企業間の流通を活発化させる仕組みとして注目を集めている。

 消費者保護の観点でも重要だ。現状、パーソナルデータはさまざまな事業者に散在しており、消費者の管理下に置かれることなくマーケティング活動などに活用されている。情報銀行ではこうしたデータを、きちんと個人で管理できるようにすることが義務付けられている。

 総務省と経済産業省は「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」において、消費者が提供するデータや提供先を設定できるようにしたり、利用されたデータの履歴を明示したりするなど、消費者がデータを自由に管理できる機能を取り入れることを情報銀行事業の義務として設定している。これらの条件を満たしているかどうかが、認定基準となりそうだ。

 情報銀行の提供企業はこれらの機能を提供して利用者の同意を得た上で、第三者間でデータを流通できるようになる。その対価として、利用者はポイントを取得したり、優遇サービスを受けたりできる。情報を銀行に預けることで“利息”を得られるイメージだ。

電通は複数サービスのID管理機能を提供

 認定団体の決定に先駆け、情報銀行の実証実験を開始したのが三菱UFJ信託銀行だ。同社は8月からスマホアプリを軸に、実験に参加する自行の行員などからパーソナルデータを取得する。まずは取得したデータの統合や可視化といった技術や、アプリの使い勝手などの検証をする。そうして浮かび上がった改善点を改修した上で、19年度中の本格参入を目指す。

 18年9月3日には電通テックも情報銀行への参入を発表した。同社は情報銀行事業を行う新会社マイデータ・インテリジェンスを設立した。狙いは電通テックが請け負うキャンペーンのデータの集約だ。

 電通テックは広告主企業からプレゼントキャンペーンや、サンプリングなどのプロモーションを請け負っており、その応募数は「毎年2000万口」(マイデータ・インテリジェンスの石井尚二社長)に及ぶ。ところが、これまではプロモーションで得たパーソナルデータは蓄積されることなく、キャンペーンのたびに捨てられていた。マイデータ・インテリジェンスは電通テックの請け負うキャンペーンのデータを1つのIDに集約して、企業がマーケティングに利活用できるようにする。

電通テックは情報銀行事業を行う新会社マイデータ・インテリジェンスを設立。キャンペーンを統合的に実施できるプラットフォームを開発して、パーソナルデータを集約する
電通テックは情報銀行事業を行う新会社マイデータ・インテリジェンスを設立。キャンペーンを統合的に実施できるプラットフォームを開発して、パーソナルデータを集約する
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 これを実現するために、マイデータ・インテリジェンスは19年の春にスマホ向けアプリを軸とした、キャンペーンの統合プラットフォームを立ち上げる。広告主から請け負ったキャンペーンを1つのアプリ上に集約し、消費者は好きなキャンペーンを選んで参加できる。一元化することで、キャンペーン参加履歴などのデータを横断的に蓄積可能になる。

 同時にアプリ上では、消費者向けにパーソナルデータの管理機能を提供する。アプリの基本機能は、他社サービスのIDやパスワードの管理となる。ECサイトやSNSなど、多数のWebサービスを利用する消費者が増える中、ID管理が難しくなっている。これを1つのIDで管理できる機能を提供する。

 情報銀行事業を見据え、データの管理機能も搭載する。管理画面で提供を許可するデータの設定、提供カテゴリーの指定などもできるようにする。例えば、自動車の購入意向がなければ自動車カテゴリーの企業にはデータを提供しないといった設定ができる。データを提供する利用者に対してはポイントやクーポンなどの特典を提供する。

 大手企業の参入表明が相次ぐ情報銀行。今後、各社は認定団体から認定を受け、事業を開始することになる見通しだ。