東京・銀座にあった旧ソニービルの跡地に「公園」が出現した。ベンチや椅子を多く設置するほか、テイクアウト式の飲食店を複数開き、休憩や待ち合わせ用途で利用する人を集める。ソニーは新しいスタイルのショールームとして、ブランドを訴求する考えだ。

ソニーは、旧ソニービルを2つのステップに分けて改装する。第1ステップのパークは2020年秋まで運営し、その後第2ステップの工事に入り、22年にパークのコンセプトを継承した新ソニービルを竣工する
ソニーは、旧ソニービルを2つのステップに分けて改装する。第1ステップのパークは2020年秋まで運営し、その後第2ステップの工事に入り、22年にパークのコンセプトを継承した新ソニービルを竣工する

 ソニーは、東京・銀座にあった旧ソニービルをリニューアルし、地上部と地下4層からなる「Ginza Sony Park」(以下、パーク)を2018年8月9日にオープンした。

 旧ビルの駆体や壁のタイルなどをできるだけ活用しつつ、壁や扉を極力排除し、オープンな空間を作り上げた。「銀座には公園が少ないこともあり、地上だけでなく地下も含めた立体公園というコンセプトでリニューアルした。街に開かれた、自由な空間であり、待ち合わせや買い物途中の休憩などに使ってもらいたい」とパークを運営するソニー企業の永野大輔社長は語る。

 パーク内にはそうした用途に配慮して、ベンチや椅子を多く設置しているほか、トイレの数も旧ソニービルより増やし、利便性を高めている。

地上に“買える”植木を配置し公園らしく

16年に50周年を迎えた旧ソニービルの壁に使われていたタイルや配管を意匠として残しながらリノベーションした
16年に50周年を迎えた旧ソニービルの壁に使われていたタイルや配管を意匠として残しながらリノベーションした
休憩や待ち合わせで使われることを想定し、パーク内にはベンチやイスを多く設置している
休憩や待ち合わせで使われることを想定し、パーク内にはベンチやイスを多く設置している

 気軽に立ち寄れる店舗も充実している。ビアスタンドのほか、飲茶スタンド、カフェ、コンビニなどがある。これらの店で販売するドリンクや料理は、テイクアウトできるので、施設内のベンチや椅子に座って飲んだり、食べたりできる。

パーク内にある飲食店。上はスプリングバレーブルワリーが運営するビアスタンド「“BEER TO GO” by SPRING VALLEY BREWERY」。下は中国料理店「MIMOSA」が運営する飲茶スタンド「MIMOSA GINZA」
パーク内にある飲食店。上はスプリングバレーブルワリーが運営するビアスタンド「“BEER TO GO” by SPRING VALLEY BREWERY」。下は中国料理店「MIMOSA」が運営する飲茶スタンド「MIMOSA GINZA」

 パークがある立地は、銀座の数寄屋橋交差点に面し、JR有楽町駅に近いほか、地下では東京メトロの銀座駅、西銀座駐車場とつながっている。交通に便利な場所にあり、人通りも多い。壁や扉を減らしてアクセスしやすくすることで、集客力のアップを期待する。

 地上には、世界各地から集めたというさまざまな植物が配置されていて、まさに公園といった雰囲気だ。これらの植木は購入できるのが特徴。売れたら別の植物と入れ替えることで、パークの表情を頻繁に変化させる効果がある。

ソニーの「Ginza Sony Park」。数寄屋橋交差点にあり、地下鉄銀座駅や地下駐車場からもアクセスしやすい立地を生かし、公園スタイルを取り入れたブランド発信拠点を構築した
ソニーの「Ginza Sony Park」。数寄屋橋交差点にあり、地下鉄銀座駅や地下駐車場からもアクセスしやすい立地を生かし、公園スタイルを取り入れたブランド発信拠点を構築した

 オープンな空間としての機能を強調する一方で、商品をアピールする役割を捨てたわけではない。ただ、従来型のショールームと異なり、さりげない形で商品を展示している。

 例えば、西銀座駐車場に接続する地下3階には、ドライブシミュレーター「グランツーリスモSPORT」のほか、同社のポータブルプロジェクター「Xperia Touch」からテーブルにスペースインベーダーなどの懐かしいゲームを投影している。これらは無料でプレーできる。待ち合わせの時間潰しなどにぴったりだ。

ソニー商品を活用したゲームスペースもある
ソニー商品を活用したゲームスペースもある

 「ブランド発信拠点として、商品をただ並べるこれまでのショールームとは違う方向を目指した。ソニーらしさは、遊び心にあると考えている。ソニービル時代の古いものを残したリノベーションのやり方や仕切りのない空間の取り方、変わり続ける公園の運営方法などパーク全体を通して、ソニーの遊び心を感じてもらいたい」と永野社長は語る。

ローラースケート場で初代ウォークマンのイメージを再現

 9月24日までの期間限定で設置しているローラースケート場は、永野社長が語る「遊び心」を表現しつつ、ブランドをアピールしているアクティビティだ。これは、同社のヘッドフォンステレオ「ウォークマン」のパッケージに、若者が同製品を利用しながらローラースケートを楽しむ姿を掲載していたことにちなんだもの。レンタルシューズを用意し、無料で開放する。

初代ウォークマンのパッケージに使われていたイメージがローラースケートだったことにちなみ、期間限定でローラースケート場を設置した
初代ウォークマンのパッケージに使われていたイメージがローラースケートだったことにちなみ、期間限定でローラースケート場を設置した

 ソニーが公園スタイルを導入し、旧ソニービルをリニューアルした背景には、家電メーカーのショールームを取り巻く環境の変化がある。商品の詳しい情報は、インターネットを検索すれば簡単に入手できる。また量販店に行けば、複数メーカーの商品を比較しながら触れられる。1社の商品しか置いていないショールームに消費者が足を運ぶメリットが薄くなっている。

 ショールームが、ブランド発信拠点としての役割を果たすには、消費者にもっと寄り添う必要がある。そういう意味で、東京の一等地にあり、消費者の利便性を重視したパークは、メーカーのショールームの新しい在り方を示している。

■変更履歴
「Ginza Sony Park」運営企業の表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。 [2018/09/10 17:45]
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