東京・銀座にあった旧ソニービルの跡地に「公園」が出現した。ベンチや椅子を多く設置するほか、テイクアウト式の飲食店を複数開き、休憩や待ち合わせ用途で利用する人を集める。ソニーは新しいスタイルのショールームとして、ブランドを訴求する考えだ。

ソニーは、東京・銀座にあった旧ソニービルをリニューアルし、地上部と地下4層からなる「Ginza Sony Park」(以下、パーク)を2018年8月9日にオープンした。
旧ビルの駆体や壁のタイルなどをできるだけ活用しつつ、壁や扉を極力排除し、オープンな空間を作り上げた。「銀座には公園が少ないこともあり、地上だけでなく地下も含めた立体公園というコンセプトでリニューアルした。街に開かれた、自由な空間であり、待ち合わせや買い物途中の休憩などに使ってもらいたい」とパークを運営するソニー企業の永野大輔社長は語る。
パーク内にはそうした用途に配慮して、ベンチや椅子を多く設置しているほか、トイレの数も旧ソニービルより増やし、利便性を高めている。
地上に“買える”植木を配置し公園らしく



気軽に立ち寄れる店舗も充実している。ビアスタンドのほか、飲茶スタンド、カフェ、コンビニなどがある。これらの店で販売するドリンクや料理は、テイクアウトできるので、施設内のベンチや椅子に座って飲んだり、食べたりできる。


パークがある立地は、銀座の数寄屋橋交差点に面し、JR有楽町駅に近いほか、地下では東京メトロの銀座駅、西銀座駐車場とつながっている。交通に便利な場所にあり、人通りも多い。壁や扉を減らしてアクセスしやすくすることで、集客力のアップを期待する。
地上には、世界各地から集めたというさまざまな植物が配置されていて、まさに公園といった雰囲気だ。これらの植木は購入できるのが特徴。売れたら別の植物と入れ替えることで、パークの表情を頻繁に変化させる効果がある。

オープンな空間としての機能を強調する一方で、商品をアピールする役割を捨てたわけではない。ただ、従来型のショールームと異なり、さりげない形で商品を展示している。
例えば、西銀座駐車場に接続する地下3階には、ドライブシミュレーター「グランツーリスモSPORT」のほか、同社のポータブルプロジェクター「Xperia Touch」からテーブルにスペースインベーダーなどの懐かしいゲームを投影している。これらは無料でプレーできる。待ち合わせの時間潰しなどにぴったりだ。


「ブランド発信拠点として、商品をただ並べるこれまでのショールームとは違う方向を目指した。ソニーらしさは、遊び心にあると考えている。ソニービル時代の古いものを残したリノベーションのやり方や仕切りのない空間の取り方、変わり続ける公園の運営方法などパーク全体を通して、ソニーの遊び心を感じてもらいたい」と永野社長は語る。
ローラースケート場で初代ウォークマンのイメージを再現
9月24日までの期間限定で設置しているローラースケート場は、永野社長が語る「遊び心」を表現しつつ、ブランドをアピールしているアクティビティだ。これは、同社のヘッドフォンステレオ「ウォークマン」のパッケージに、若者が同製品を利用しながらローラースケートを楽しむ姿を掲載していたことにちなんだもの。レンタルシューズを用意し、無料で開放する。

ソニーが公園スタイルを導入し、旧ソニービルをリニューアルした背景には、家電メーカーのショールームを取り巻く環境の変化がある。商品の詳しい情報は、インターネットを検索すれば簡単に入手できる。また量販店に行けば、複数メーカーの商品を比較しながら触れられる。1社の商品しか置いていないショールームに消費者が足を運ぶメリットが薄くなっている。
ショールームが、ブランド発信拠点としての役割を果たすには、消費者にもっと寄り添う必要がある。そういう意味で、東京の一等地にあり、消費者の利便性を重視したパークは、メーカーのショールームの新しい在り方を示している。
「Ginza Sony Park」運営企業の表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。該当箇所は修正済みです。 [2018/09/10 17:45]