ヘルステックベンチャーであるリンクアンドコミュニケーション(L&C、東京・新宿)は、ダイエット支援アプリ「カロリーママ」の普及を加速させている。スマートフォンで食事の写真を撮るだけで、ユーザーが適切なアドバイスを得られる機能を無料で提供し始めた。実はL&Cは、アプリで収集したユーザーの健康関連データを利活用することで収益につなげるモデルを展開している。データ利活用を狙ったベンチャーの試みを解き明かす。

 カロリーママは、今年6月から好調にダウンロード数を伸ばしている。2016年4月のリリース後、2年かけて約6万件にとどまっていたところ、今年5月29日にバージョンアップして以降、毎月1万件以上ダウンロード数を増やし、7月末時点で約8万5000ダウンロードに達した。

アプリ「カロリーママ」のタイムライン画面
アプリ「カロリーママ」のタイムライン画面

 カロリーママは、食事メニューを中心とした健康に関するアドバイスを、アプリのタイムライン上でユーザーとコミュニケーションを取りながら示す機能を持つアプリ。自身の身長体重の推移や睡眠時間といった計測データに加え、日々の食事や購入した食材の量や内容などをユーザーがアプリ上に打ち込んでいくだけで、その都度、食事メニューなどについてアドバイスが返ってくる。

 今回のバージョンアップで、アプリを搭載したスマートフォンで食事の写真を撮ると、その写真をAI(人工知能)が自動で解析し、食材や量、その後のメニューなどについて、アプリのタイムライン上でユーザーに自動でアドバイスするという機能が追加された。「この機能を競合アプリの中で初めて無料で提供したのがユーザーに支持された」(渡辺敏成社長)。

 食事の写真の認識や、そこからのユーザーの嗜好の分析には、他社が開発した既存のAIエンジンを活用しているが、それらのデータに基づくメニューづくりについてのアドバイスは、独自のアルゴリズムを作成して対応している。管理栄養士向けに情報を提供する独自サイトを別途、運営しており、同サイトに登録済みの管理栄養士のうち同意を得た約9000人の協力を得て集めたアドバイスを分析し、アルゴリズム化している。「AIを利用すると、答えが出る過程がブラックボックスになり、ユーザーから『なぜそのようなアドバイスなのか?』とアプリ上で聞かれたとき、答えに窮する可能性がある。独自にアルゴリズムを設計すれば、何か新しい要素が出てきたときでも柔軟に対応できるし、ユーザーにも説明しやすい」と渡辺社長は説明する。

ユーザーの購入履歴を追える仕組みが強みに

 だが、これだけの機能を搭載しているカロリーママを、L&Cはユーザーに無料で提供している。ではどうやって収益を稼いでいるのか──。実は収集したユーザーのデータを利活用して主な収益源としているのだ。

ユーザーのデータを収集・分析し、企業に提供することで収益を得るモデル
ユーザーのデータを収集・分析し、企業に提供することで収益を得るモデル

 まずL&Cは、性別や年齢、身長・体重や睡眠時間の推移、日々の食事や購入した食材の量や内容といった、カロリーママを通じて得られた一般ユーザーの健康に関するデータを、個人情報が分からない形でパーソナルヘルスデータベースに蓄積。そのデータを分析して、健康関連のサプライヤーやメーカーといった一般企業に提供することで、主に収益を得ている。「具体名は言えないが、提携したスーパーからID-POSデータ、同じく提携した家計簿アプリ提供会社から購入データなどを得て、ユーザーによっては食材などの購入履歴まで追えるところが強み」と渡辺氏は言う。

 具体的には、抱える健康課題やその嗜好性、ライフスタイルなどに基づいてセグメントしたユーザーに対して、チラシやクーポンを配布できるサービスを、企業側にまず提供している。加えて、どんなユーザーが食材として何を購入し、どのような料理(メニュー)に利用したかを分析し、データとして提供することもしている。さらに、企業が新商品を開発する際、セグメントされたユーザーに新商品の試作品などをモニタリングしてもらうサービスも用意している。

健保組合やスポーツクラブにはBtoBtoCでアプリを提供

 収益源は、こうしたデータの利活用ビジネスだけではない。実はL&Cは、カロリーママとほぼ同等の機能を持つアプリ「カラダかわるNavi」を、企業の健康保険組合やスポーツクラブ向けに、対価を得て提供している。健康保険組合やスポーツクラブは会員に対してカラダかわるNaviを提供し、その健康管理に役立てているというわけだ。

 既にローソンや博報堂の健康保険組合、スポーツクラブの「ルネサンス」などが、カラダかわるNaviを導入済み。主に健康保険組合向けのカラダかわるNaviは約3万3000ダウンロード、スポーツクラブ向けの機能を追加したカラダかわるNavi for スポーツクラブは約8万ダウンロードに達しており、カロリーママと合わせて、アプリのダウンロード数は約20万になるという。L&Cは、BtoCモデルにBtoBtoCモデルを組み合わせることで、一定の収益を確実に得ながら、利活用できるデータの量を増やし、さらなる収益増につなげようとしているわけだ。

 「ユーザーが自身の食事に関する情報をアプリに打ち込んだら、AIによる分析と独自アルゴリズムに基づいて、何らかのアドバイスを必ず返すところが、ユーザーに支持されている」と渡辺氏は言う。BtoBtoC経由とBtoC経由を併せて、20年までに100万ダウンロードを実現し、ダイエット支援・健康管理アプリとしてのデファクトスタンダードの地位を固めるのが目標だ。

 もっとも、そのためには、ユーザーがアプリを活用したくなる機能はもちろん、活用を促すような“仕掛け”を、継続的に提供し続ける必要がある。例えば昨年、ローソンの健康保険組合は、職場の同僚でチームをつくり、毎日の歩数や食事の糖質コントロールの度合いなどをチーム同士で競争する仕掛けを持ち込むことで、ユーザーが日々アプリに情報を入力する入力率を80%以上に引き上げたという。こうした試みを継続的に提供しつつ、競合アプリにないような新たな機能を盛り込んでいくことが、目標達成の条件になりそうだ。

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