イベントプラットフォーム事業を手掛けるイベントレジスト(東京・渋谷)は2018年8月29日、自社イベントで顔認証による来場者チェックインの実証実験を実施する。コンサートなどで採用される顔認証は転売チケットの利用防止などが主目的で、実際の受付はスマートフォンのQRコードや紙のチケットなどでしている。実験が成功すれば、文字通りの“顔パス”でのイベント参加が広がる可能性がある。

 イベントレジストは、自社が主催するイベントなど体験型マーケティングの専門カンファレンス「BACKSTAGE 2018」で実験を行う。来場者は事前に顔画像をスマートフォンやパソコンから登録。当日は、会場受付に設置されたタブレットなどの端末に顔を映せば受け付けが完了する。チケット料金は「STANDARD」コースで1万円(税込み)。来場者は約1000人を想定しており、数百人規模の実験となる見込み。

イベント来場受付における顔認証の利用イメージ
イベント来場受付における顔認証の利用イメージ

 顔認証技術は、NECのAI(人工知能)を活用した顔認証クラウドサービス「NeoFace Cloud」を利用する。NECの顔認証は従来、認証する場所にサーバーを設置する必要があった。17年秋からクラウドサービスを提供し始め、顔認証のためのサーバーの設置が難しい屋外、短期間のイベントや工事現場などでも利用しやすくなった。

将来的には操作なしに顔認証

 イベントレジストはオンラインイベントプラットフォーム「EventRegist」を提供し、イベント告知サイトの作成、申し込み受け付けや参加費用の決済、チケット発行、受け付けといったイベント運営に必要な一連の流れを効率化するサービスを提供している。実験の結果を受けて、イベント入場管理システム「KAOPASS(カオパス)」として提供する予定。イベント主催者は、顔だけのチェックインサービスを手軽に利用できるようになる。イベント参加者は顔写真を一度登録すれば、EventRegistで申し込む他のイベントでも簡単にチェックインできるようになるため、イベント参加率が高まる効果も期待できる。

 顔認証は一般に、監視カメラなどで使われる「非接触型」と、ユーザーがボタンを押すなどの行為を受けて認証する「接触型」がある。本実験では来場者が顔認証になじみがないことも考慮して端末画面上のボタンを押してもらい認証する。ただ、技術的には非接触型に対応しており、将来的には操作不要でよりスムーズなチェックインも実現できるという。

 EventRegist上での利用料金は今後検討する。顔認証の場合、光の当たり方や撮影した顔の角度によって顔認証の精度が変わってしまう。撮影環境が悪いと1人の顔の認証に何度もトランザクションが発生し、それに応じてクラウド利用料も上がってしまう。こうした運用上の課題も踏まえて料金を決定する方針だ。