横浜市にある高木学園附属幼稚園は、学校法人 高木学園の創立110周年を機に、園舎と園庭を全面リニューアルした。goen゜のアートディレクター、森本千絵氏が総合プロデュースを、建築家の隈研吾氏が設計を担当。創立110周年記念式典が開催された2018年6月16日、新園舎と園庭を公開した。
高木学園が運営する高木学園女子高等学校は19年4月、校名を「英理女子学院高等学校」に変更する。グローバル社会で貢献できる女性の育成を目指し、高木学園は一丸となって生徒の創造性を育んでいくという。幼稚園においても、幼児期を楽しく創造的に過ごすことができる環境が必要だと考え、園舎の建て替えを決断した。
建築を柔らかくするデザイン
高木学園の髙木暁子理事長は、森本氏に園舎全体の空間デザインを依頼した。隈氏を推薦したのは森本氏だ。
森本氏と隈氏は、これまでも一緒に仕事を手掛けている。5000人収容できるアリーナと屋根付きの広場、そして新潟県長岡市役所が一体となった複合型施設「アオーレ長岡」もその一つ。
隈氏は森本氏について、こう語る。「森本さんがプロジェクトに加わると、建築が柔らかくなる。長岡市役所もしなやかで楽しい空間となり、これまで500万人以上が訪れている。森本さんは、夢を描いて形にするエネルギーが強い。幼稚園の仕事ではどんな夢を描き、僕はそれについていけるのか。すごく楽しみだった」
今回は森本氏が総合プロデュースを担当。まず、森本氏が描いたスケッチを基に、隈氏が模型を制作した。隈氏は設計前の段階からアートディレクターとタッグを組むのは、初めてだったという。
「スケッチに描かれていたのは、遊具や園庭のイメージで、部分ごとに違っていた。自分だったら曲線なら曲線で統一したり、整理したりしたくなる。ただ、それだと子供の空間としては物足りないだろう。森本さんとのコラボレーションによって、子供が楽しめる最高の空間になったと思う」と隈氏は語る。
創造性を養うために
完成した園舎内の教室や洗面所は、森本氏がデザインした壁紙で飾られている。それぞれ絵柄は異なり、空間の目的に合わせたストーリーがある。園庭は植木鉢をモチーフにデザインされ、子供たちが中に入って遊ぶことができる「じょうろ」のオブジェもある。
デザインのベースは、森本氏が描いた1枚の絵だ。園児一人ひとりが責任を持って自分の植木鉢の植物を育てる「花育」という幼稚園の取り組みをヒントに描いたという。「土にまいた種が芽を出して根を張り、花を咲かせることと子供たちの成長を重ね合わせて描き、アイデアの設計図にした」と森本氏は言う。
さらに、その絵を基に、goen゜のデザイナー小山唯香氏と一緒に年少組から年長組までそれぞれのストーリーを考え、イラストレーションに発展させた。色のトーンも変え、壁紙に仕立てたという。「一番の目的は、子供たちの創造性を養うこと。与え過ぎる空間にはしたくなかった。隈さんの建築とステンドグラスの光が入る空間を生かすためにも、色数や絵柄も減らした」と森本氏。隈氏は「建築と絵の世界が一体化した。こんな空間は、今までなかったと思う」と話す。