パナソニックが、調理家電の新製品「ロティサリーグリル&スモーク」の発売に当たり、SNSとコンテンツ(解説記事)を組み合わせた長期のマーケティングを展開。発売前には0%だった認知度を、キャンペーン終了直前には31%にまで引き上げるなど、新製品の認知度と購入意欲の向上に成功。新製品の売れ行きアップにも貢献した。

塊の肉を360度回してあぶる新機能を分かりやすく示した
塊の肉を360度回してあぶる新機能を分かりやすく示した

 パナソニックが2017年11月に発売した新製品「ロティサリーグリル&スモーク」とは、塊の肉を庫内で360度回してあぶりながら、ジューシーな状態に焼き上げるという、これまでの調理家電にはなかった新しい機能が最大の売り。しかし、新機能だけに、消費者にその良さを一言で伝えるのは難しい。そこで、Webマーケティング支援のメンバーズの協力を得て、発売予告のリリースを発表した17年8月2日を皮切りに、新製品の発売日である11月1日を経て12月15日まで、SNSとコンテンツを組み合わせた長期のキャンペーンを進めて、製品の機能や使用シーンに関する情報を伝える作戦を展開した。

 その作戦の特徴は3つある。まず、約6カ月を3段階のステージに分け、それぞれのステージに応じた情報を、広告などの形で発信するだけでなくコンテンツの形でも蓄積しておき、消費者に多くの情報を与える体制を構築した。そのうえで、発売約1カ月後に当たる11月29日の「いいにくの日」に一大キャンペーンを仕掛け、一気に認知度と購入意欲の向上を狙った。そして、パナソニックが展開するデジタルマーケティングとしては珍しく、自社のWebサイト(オウンドメディア)への誘導にこだわらず、SNS上でマーケティングを完結させる仕組みを取り入れた。

SNS上にあらかじめコンテンツを配置

 具体的には、約4カ月半のキャンペーン期間を、製品の認知を図る「認知期」(最初の2カ月)、機能を説明する「機能理解期」(次の1カ月半)、使用シーンを解説する「自分ゴト期」(最後の1カ月)に分け、それぞれに合った内容のコンテンツや動画を、あらかじめ計20本ほど、パナソニックのツイッター公式アカウントに「#ロティサリーグリルでいい肉を」というハッシュタグを付けて投稿したり、フェイスブック上の広告から流入できる簡易ランディングページを設定してそこにアップしたりしておいた。

ロティサリーグリル&スモークの特徴を分かりやすく伝える記事や動画によるネット広告を展開
ロティサリーグリル&スモークの特徴を分かりやすく伝える記事や動画によるネット広告を展開

 併せて、記事や動画の一部を抜粋したネット広告を、ツイッターやフェイスブックといったSNS上に展開した。その際、ユーザー層を細かくセグメントして配信するターゲティングを実施しなかった。広告に興味を示した消費者が、ツイッターやフェイスブック上にあるロティサリーグリルのコンテンツにたどり着き、自分で好みのコンテンツを探すように仕向けたのだ。

 「実際、広告を見てロティサリーグリル&スモークに興味関心を持った消費者は、SNS上にある記事を読んだり、動画を最初から最後まで見たりすることで、製品の名前を知り、特性を知って、購入意欲を高めていった」とパナソニック アプライアンス社日本地域コンシューマーマーケティング部門コンシューマーマーケティングジャパン本部コミュニケーション部メディアプランニング課の谷一恵子氏は語る。

 そうして11月29日の「いいにくの日」までに記事や動画をアップし終え、そのうえでツイッターのユーザーがその日、最初にログインしたときに画面上部に表示される広告メニュー「ファーストビュー」を同日に使って、幅広くリーチを図った。

 さらに、パナソニックのWebサイトへ誘導せずにSNS上でマーケティングを完結させたことで、「消費者同士のSNS上での会話が多数生まれ、それにより、製品の購入意欲を高める効果を持った」(谷一氏)という。例えば、「何グラムの肉が焼けるのだろう」と質問した消費者に対して、パナソニックのWebサイトを訪れて調べた別の消費者が、「600グラムは焼けるようです」と答え、「ありがとうございます。疑問が解消しました」などという会話がツイッター上で続いた。パナソニックのWebメディアを自分で訪れて機能を知るよりも、「SNS上の会話で疑問を解消し、同好の士の存在を知ったほうが、購入意欲が高まりやすい」(谷一氏)というわけだ。

 Webサイトへの誘導を必須としないという、パナソニックでは珍しいこの施策は、ロティサリーグリル&スモークのマーケティングを担当する谷一氏が、Webサイトの管理担当者でもあったからできたことだ。WebサイトのPVはパナソニックとしてKPI(重要業績評価指標)に設定しているため、通常はデジタルキャンペーンでWebサイトへの誘導をしないケースは考えにくい。しかし、今回は、「他の施策で、必要なWebサイトのPVを確保できる目途が立っていたため、それぞれのSNS内で完結する形でマーケティングを進められた」(谷一氏)のだ。

SNS広告のエンゲージメントは260万超

 こうしたSNSとコンテンツを組み合わせた長期にわたるキャンペーンは、想定以上の成果をもたらした。主にツイッターとフェイスブック上で展開したSNS広告全体のインプレッション数は1億2000万、動画広告の再生数は960万を超え、消費者が「いいね」を押したり、リツイートしたりしたエンゲージメント数も260万を超えた。「当初の想定以上のリーチが得られたほか、興味のあるコンテンツを自分で選んで見てもらう手法を取ったにもかかわらず、ユーザーとして想定していたホームパーティー好きな30~40代、子どものいる若夫婦といった層にきちんと認知が得られた」(谷一氏)という。

 実際、パナソニックがネットリサーチ会社に依頼して調べた調査によると、冒頭で示した通り、8月の段階で0%だったロティサリーグリル&スモークの認知度は、12月初旬の段階で31%まで上がっていたという(調査対象1200人)。発売当初の製品の売れ行きも、想定の150%に当たる月6000台ペースで売れた。全くの新製品のマーケティングとしては成功の部類と言ってよい。パナソニックは今後、ロティサリーグリル&スモークで成功したSNSとコンテンツの活用法や、SNS上で完結するマーケティングといった手法を、他の製品に対しても横展開していく考えだ。

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