スマートニュースが提供するニュースのキュレーションアプリ「SmartNews」のMAU(月間利用者数)が、日米の合計で1000万人を超えた。MAUが1000万を超え媒体力が高まる中、スマートニュースは広告クリエイティブを自動生成する仕組み(ダイナミッククリエイティブ)を独自開発するなど、広告事業の強化に力を入れる。ダイナミッククリエイティブがより効果的に機能し始める規模に達したと判断した。

「SmartNews」はクーポンチャンネルを設置するなど、コンテキスト以外の利便性を強化してアクティブ率の向上を狙う
「SmartNews」はクーポンチャンネルを設置するなど、コンテキスト以外の利便性を強化してアクティブ率の向上を狙う

 スマートニュースはMAU1000万超を達成するためにこの半年間、プロモーションとアクティブ利用率を高める施策に取り組んだ。日本と米国の両方でデジタル広告の出稿を積極的に実施。日本ではテレビCMなどへの投資を強化した。また、アクティブ利用率の向上策では2018年3月1日に「クーポンチャンネル」を設置。ニュースだけではなく、よりお得に利用できるサービス面を強化するなどして、アプリのダウンロード後のアクティブ利用率の向上を狙った。

 一方、独自の広告サービスの開発にも力を注ぐ。直近では、利用者の興味関心や過去の配信実績などのデータに基づき効果的な広告クリエイティブを自動生成するダイナミッククリエイティブ型の広告の開発を強化している。スマートニュースは、このダイナミッククリエイティブ型の広告の仕組みを自社開発している。

 18年6月に提供を開始した「Dynamic Creative Optimization(DCO)」は、配信対象者に合わせて複数の画像とテキストをシステムが自動で組み合わせて、高い効果が期待できる広告クリエイティブを生成して配信する。

 DCOを利用する広告主は最大15種類の画像と、最大5種類のテキストを用意して入稿する。すると配信対象者が広告面に接したときに、過去のクリックやコンバージョンの実績などのデータから機械的にクリックしやすい組み合わせを導き出し、リアルタイムで広告クリエイティブを自動生成して広告として表示する。

 例えば、人材会社であれば複数の職種の画像と、「給与」「やりがい」「地域」など訴求したいポイントを打ち出したテキストを用意する。すると、過去の広告配信実績などのデータから、配信対象者の成約確率が最も高くなるであろう職種の画像と訴求ポイントを組み合わせた広告クリエイティブが自動生成される。

「Dynamic Creative Optimization(DCO)」は、最大15種類の画像と5種類のテキストを組み合わせて広告クリエイティブを自動生成する
「Dynamic Creative Optimization(DCO)」は、最大15種類の画像と5種類のテキストを組み合わせて広告クリエイティブを自動生成する

広告の仕組みを自社開発した理由

 EC事業者や旅行代理店など、膨大な商品数を取り扱う広告主向けに提供するのが「SmartNews Dynamic Ads」だ。これは、広告主がネットで販売する商品の写真や説明、価格といった既存のデータを組み合わせて、広告クリエイティブを自動生成する。企業が利用する場合、各商品ページに専用のタグを設置することで、スマートニュースの広告システムが商品画像、価格、商品説明といったデータを自動収集する。この収集したデータを組み合わせた広告クリエイティブを自動生成して、スマートニュースの広告枠に配信する。

エン・ジャパンが「SmartNews Dynamic Ads」で配信した広告の掲載例
エン・ジャパンが「SmartNews Dynamic Ads」で配信した広告の掲載例

 こうした仕組みは、広告主のサイトを訪問したことのある消費者に対して広告を配信するリターゲティング広告への活用が一般的だ。訪問時に閲覧した商品の写真や説明文を組み合わせて広告として表示する。過去に関心を持ったことのある商品を広告クリエイティブで打ち出すため、高いクリック率や購入率が期待できる。

 スマートニュースはリターゲティング広告への活用だけではなく、見込み客に対してもダイナミッククリエイティブ型の広告を配信できる。それを可能にするのが、スマートニュースのコンテンツの閲覧データだ。3000超の媒体社と提携して、利用者の興味関心によってコンテンツを出し分けている。

 それによって得た過去の記事閲覧データから、利用者ごとの興味関心に合わせて、興味が高いと推察される商品を広告クリエイティブに表示する。例えば、旅行会社が活用する場合、普段からスマートニュースで北海道のグルメ情報などを見ている消費者に対しては、北海道旅行を広告で勧めるといった具合だ。

 このようなダイナミッククリエイティブ型の広告はCRITEO(東京・渋谷)やアドAdRoll(東京・港)などが先行する。既存のサービスを利用するアプリ事業者も多い中、自社開発に踏み切ったのは、スマートニュースのユーザーインターフェースにマッチした広告クリエイティブを生成できるようにするためだ。ユーザー体験を損なわず、同時に広告効果を高めるためのクリエイティブを作れる仕組みを自社開発すべきと判断した。