⽬的地への到達時間をテクノロジーによって短縮しようとする動きが⽶国で活発化している。⽇本航空(JAL)は超⾳速⾶⾏機を⼿掛ける⽶ベンチャーに投資し、サービスへの投⼊を検討する。東京−⽶サンフランシスコ間であれば所要時間がほぼ半分の5時間半となり、新たな時間が生み出されることとなる。顧客サービスとは異なる軸で新たな競争が始まりそうだ。

ブームテクノロジーが開発中の超音速機の飛行イメージ
ブームテクノロジーが開発中の超音速機の飛行イメージ

 JALが投資したのは、⽶ベンチャーのブームテクノロジー(コロラド州デンバー)である。マッハ2以上での⾶⾏が可能な超⾳速⾶⾏機の開発を進めている。現在約11時間の東京−サンフランシスコ間が約5時間30分に短縮できる計算となり、⽇本の成⽥から中国の成都への⾶⾏時間とほぼ同じとなる。成都は中国の内陸部であるものの、隣国に⾏く感覚で太平洋を渡ることができるようになる。

 2017年12月に約11億円(1000万ドル)を出資し、実サービスでの採用の検討を始めている。JALは実用化時に20機まで購入できる権利を獲得しており、定期便を持つ航空輸送の事業者として、技術や仕様で協力したり、プロモーションを支援したりしていく考えだ。

2019年度に超音速機をテスト飛行

 ブームは19年度中にテスト機を飛行させる予定で、20年代の半ば以降の実用化を目指している。炭素繊維の軽量な機体に高性能なターボエンジンを3基搭載し、洋上をマッハ2.2(時速2335キロメートル)で飛行する。航続距離は8334キロメートルで、ビジネスクラス仕様の座席で45~55席を確保できる。

ブームテクノロジーが開発中の超音速機の室内イメージ
ブームテクノロジーが開発中の超音速機の室内イメージ

 超音速機と言えば、15年前に引退したコンコルドが思い浮かぶ。当時、エンジンの騒音や燃費などが問題視され、事故によって構造的な問題も指摘された。ブームは既存のエンジンをベースに開発・改善を進めており、エンジン音を現在の旅客機と同等レベルまで抑えられるという。燃費の改善にも取り組んでいる。

 ただし超音速で飛行するのは太平洋などの洋上に限定する。音速での飛行に伴って、地上への衝撃波がどうしても発生するからだ。実際にはブームはコンコルドに比べて、衝撃波を数十分の1程度に抑え込めると見ている。

 ブームへの出資を担当したのがJALのシリコンバレー拠点だ。

 事業創造戦略部シリコンバレー駐在所の大村剛也所長は「これまで食事や座席などのサービス面を中心に改善してきたが、飛行機の速度はほとんど変わっていなかった。安全第一が前提だが、JALとしてチャレンジし、顧客価値の向上を目指していく。長距離移動の時間の概念が変わることで、顧客に実際にどのような提案をしていけるのか今後議論を進めていく」と説明する。

 JALは16年4月にシリコンバレーに事務所を構え、連携先の開拓に乗り出しており、ブームはその第1号案件だ。「協業先の発掘のほか、JAL社内向けの情報発信、社内へのイノベーションの創造や新技術活用にチャレンジする風土の醸成などに取り組んでいる」(大村所長)という。

都市交通はテック大手が混雑対策

 米国は国土が広い一方で、都市部では交通渋滞が深刻な問題となっている。これに対して、移動をサービスとして提供しようとする、MaaS(Mobility as a Service)で解消しようとする動きも急だ。

 米電気自動車(EV)メーカーのテスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)が、地下トンネルを利用した、高速な大量輸送の都市交通システムの構築に取り組んでいる。

 「ループ」と呼ばれるチューブ状のトンネル内を、10人前後が乗車する電動車両が時速約240キロメートルで走行する。トンネルの半径を小さくすることで建設コストを抑える考えで、実現に向けて専用のトンネル網を作るベンチャーのボーリング・カンパニーを設立している。

 ライドシェア最大手の米ウーバーテクノロジーズは小型飛行機を活用する。ビルの屋上などに設置するポートで発着できる、空飛ぶタクシーの実現に乗り出している。「ウーバーエア」として、20年から実証実験を始めるという。

 超音速機の開発には米ボーイングも参入すると報じられており、空港と都市を結びループやウーバーエアと組み合わせることで、長距離移動の概念が大きく変わりそうだ。

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