河合塾は、生徒一人ひとりのペースに合わせて学習できるのでつまずかない、COMPASS(東京・品川)のAI(人工知能)搭載タブレット教材「Qubena(キュビナ)」の高校数学版を開発。2018年5月30日からグループの河合塾Wings高等部で本格導入した。

Qubenaで学習する河合塾Wingsの生徒
Qubenaで学習する河合塾Wingsの生徒

 生徒一人ひとりのペースで学習できる教材がある。COMPASSが開発したAI型タブレット教材のQubenaだ。AIを搭載したQubenaは、生徒一人ひとりの学習中の操作ログや計算過程、回答データを分析することによって、学習につまずく原因になっているポイントを特定。その生徒が解くべき問題へと自動的に誘導して、効果的で効率的な学習を実現する。

 今回、河合塾がQubena向けに高校数学ⅠAに加えて同ⅡBにの教材を開発。5月30日からグループで、自ら学ぶ学習スタイルの習得を目指す河合塾Wings高等部で本格導入した。今後は、河合塾本体でも一部導入検討を行う。

個人個人のペースに合わせて学習できる

 河合塾がCOMPASSのQubenaに注目した理由の1つが、一人ひとりのペースに合わせて学習を進められる点だ。教科書レベルを理解するのに、「通常の授業に比べて7倍のスピードで学習できる」(COMPASS財務・経理部長の坂井祐太執行役員)と言う。Qubena向けに高校数学ⅠAと同ⅡBの教材を開発した河合塾教育イノベーション本部教育事業推進部事業推進Bチームの梅山晃広氏は、Qubenaを導入した理由についてこう説明する。

 「河合塾内で、生徒ごとに授業の理解度が明確に異なることが大きな課題だった。課題解決の模索を続けていく中で、生徒の正解率や問題を解くのにかかった時間に応じて戻り学習を行ってくれるQubenaに河合塾の講師が厳選した数学教材を載せれば、個に合わせた指導ができるのではないかと考えて導入を決めた」

 梅山氏がQubenaの存在を知ったのは2016年度末ぐらい。既に小学校の算数と中学の数学がQubena向け教材として使われていた。COMPASSによれば、Qubenaは学習塾や予備校、学校などへの採用・導入を通してユーザー数は1万5000人に上るという。

 河合塾がQubenaの導入に踏み切った理由は3つ。まずユーザーインターフェースの使いやすさだ。もう1つが手書き入力を採用している点。3つ目がアダプティブラーニングを取り入れていることだ。つまり、生徒がある問題に対して「できている」「できていない」だけでなく、どこを間違ったのか、問題を解くのにどの程度時間をかけたのか、深く把握できる。梅山氏は「生徒がどこでつまずいているのか精緻に把握できる教材は、ほかにはなかった。把握できれば、講師が直接生徒にアプローチできる」と話す。

 COMPASSが既に小中版を走らせていたので、イメージしやすく、共同開発に踏み切る決断ができた。既にあるCOMPASSのシステムを使い、図形や三角比などを学ぶ数学ⅠAを先行して載せて、微積やベクトル、数列などを学ぶ数学ⅡBの教材を載せることになった。

AI搭載タブレット教材「Qubena」の手書き入力画面に頂点と交点をプロットして、グラフ概形を手書き入力すると、きれいなグラフに自動補正したうえ、正解かどうか自動判定する(動画を再生する場合は画像をクリック)

間違えるとAIが類題を出す

 Qubenaを使った学習では、まず生徒が学習範囲を選ぶ。すると、チュートリアルの画面が表示されて、問題はこういうふうに解くと教えてくれる。ヒントも出る。そのまま出された問題を解く。間違えると、類題が出される。ヒントも出て、正解すると難易度の高い問題が出される。1つの単元を問題を解きながらどんどん学んでいくという具合だ。

 問題の難易度は、河合塾が決めている。レベルは3段階。難易度の高いチャレンジ問題は、難易度の易しい問題をクリアしないと出題されない。

 Qubenaマネージャーという機能があり、生徒がどこの問題を解いているのか、講師がリアルタイムで把握できる。生徒にAIタブレット教材を渡して問題を解かせ、講師はパソコンで生徒の状況を把握し、的確なアドバイスを行って指導ができる。生徒の自宅学習も把握できる。

合格へは対面授業との組み合わせ

 今のところQubenaは、教科書レベルの基礎学力を効率よく学ぶために使われている。センター試験レベルは十分に対応できるが、難関大学に合格するための学力を身に付けるには、Qubenaだけでは不十分だという。例えば、京都大学の数学問題では、受験生に白紙の回答用紙を渡して、解き方を記述させる。「Qubenaの記述欄は物理的に小さいので対応できない。だから記述問題は、対面授業で対応する」(梅山氏)と話す。

 今回河合塾は、高校生向け数学のQubena教材を開発したが、ほかの理系科目や英語などの科目にも対応できるという。Qubenaは、問題を細かく分析して分解するナノステップという方法を使っている。1つの問題の正解、不正解だけでなく、解く過程(ステップ)のどこでつまずいたか細かく把握し、類題を出す材料にしている。問題間のステップ同士をひも付けして、AIアダプティブラーニング教材を完成させる。

 英語の長文読解の場合も、例えば、文法が分かっていないと問題が解けない。文法の何を理解していないと解けないのか、ステップに分けることでAIアダプティブラーニング教材を完成できる。英作文でも分解できれば教材を完成可能になる。