横浜のイメージカラーで車両を統一

 「~っぽい分類」は、具体的にはどういったプロセスで行われるのか。水野氏がクリエイティブディレクターを務める神奈川県の相模鉄道(以下、相鉄)の「デザインブランドアッププロジェクト」が、その好例だ。

 プロジェクトの目的は、相鉄グループの100周年と都心への相互直通運転に向けて、ブランドイメージと認知度の向上を図ること。駅や車両、制服などのデザインコンセプトを統一し、多くの人に「選ばれる沿線」を目指している。

相模鉄道9000系電車の新デザインの考え方
相模鉄道9000系電車の新デザインの考え方

 最初に相鉄には、どんな「らしさ」があるのだろうかを考えた。「相鉄と言えば、神奈川県民にとっても、あまりイメージのない電車かもしれない。『ポジティブ分類』をした場合に出てくるのは『自然が豊か』『素朴』『未開発』などの一見地味なイメージだ。だが、これらは大きなアドバンテージにもなる。住民が少なく土地が安いイメージならば、『これから』便利になりそうだというポジティブな印象につながるだろう」(水野氏)。

 「どんな雑誌っぽいか」では、リクルートホールディングスの住宅情報誌「都心に住む by suumo」や幻冬舎の「ゲーテ」、光文社の「VERY」、ネコ・パブリッシングの「HUNT」などをイメージした。これらは、都心で生活を始める人やお洒落な暮らしをしたい人、自然の多い場所で生活したい人などを対象とした雑誌。いわば、生活にこだわりのある人向けだ。

 「相鉄らしい」場所はどこかと考えた場合、候補に挙がるのは神奈川県全体だった。相鉄は、昔は神奈川の中心を走っていて「神中線」とも呼ばれていた。

 「神奈川県の中で一番イメージの良い場所はどこかと考えると、やはり『横浜』だろう。そこで今回は横浜からイメージを借りた。横浜には豊かで上質、文化レベルも高く、さらに適度にお洒落で洗練されているなど、ポジティブな面が強い」(水野氏)。

“横浜”が持つポジティブな印象を打ち出す
“横浜”が持つポジティブな印象を打ち出す
プロジェクトに従い、駅舎のデザインも一新。モデル駅としてリニューアルした平沼橋駅では、外装のカラーを統一することで、落ち着いた雰囲気を演出した(写真左:新デザイン、写真右:旧デザイン)

 横浜の「いつっぽい」のか。横浜と言えば、江戸時代の開国後に港がにぎわった時期のイメージが強いと水野氏は判断。最近に例えるなら「最先端で格好いい」というよりも「ニュー歌謡が似合いそうな、一昔前のイメージ」だと言う。

 そうした「~っぽい分類」の結果を色で表現し、相鉄に提案したのが、情緒ある横浜をイメージした独自の「YOKOHAMA NAVYBLUE(ヨコハマ ネイビーブルー)」だった。提案を受けて相鉄は2016年春から車両カラーを同色に変更した。イメージを一新し、ブランドイメージと認知度の向上を図る。

 「『YOKOHAMA NAVYBLUE』の響きはあまり格好良くないだろうが、あえてダサい感じが横浜らしさ、ひいては相鉄らしさにつながる」と言う。

“ニュー歌謡”っぽいイメージカラー
“ニュー歌謡”っぽいイメージカラー
リニューアル後の相模鉄道9000系電車では、横浜らしさをイメージした「YOKOHAMA NAVYBLUE(ヨコハマ ネイビーブルー)」に車両カラーを統一。イメージを一新し、ブランドイメージと認知度の向上を図った(写真上:新デザイン、写真下:旧デザイン)
リニューアル後の相模鉄道9000系電車では、横浜らしさをイメージした「YOKOHAMA NAVYBLUE(ヨコハマ ネイビーブルー)」に車両カラーを統一。イメージを一新し、ブランドイメージと認知度の向上を図った(写真上:新デザイン、写真下:旧デザイン)