資生堂は2009年から経営陣やブランド責任者の意思決定をデータで支援する「CMI(Consumer Market Intelligence)データビューアー」を社内で運用している。社内外の定量、定性データを主に月次で更新しており、多種多様なデータがワンストップで見られる。データを集約することで、部門ごとにデータ収集、分析する手間を省く効果がある。
地域別にどんな商品カテゴリーが伸びているか、自社と競合は何が売れているかをダッシュボードで比較したり、ドリルダウンして分析したりできる。
同ビューアーはTableauを使って運用しており、800人以上にアカウントを発行し、毎月約200人が利用しているという。
運営を担当する経営戦略部市場情報グループ小川英樹氏は、「CMIデータビューアー以前は、それぞれのニーズに応じてデータベンダーのサイトへ行ってデータを引っ張ってきて分析していた。例えば、主要5カ国のシェアが見たいと依頼があると、結果を出すまで1日はみてもらっていたのがビューアーの導入で(待ち時間が)ゼロになった」と導入効果を語る。資生堂にとって「水と食料のようなインフラとして欠かせなくなっている」(小川氏)と言う。
今後、さらにデータ分析のスピード向上を図るため、社内にTableauを高度に活用できる人材の育成を進める。CMIデータビューアーがデータ分析を効率化したものの、「マーケティング担当者がCMIデータビューアーを使って売れている商品が分かったら、社内のデータを加えてExcelで集計して、PowerPointで資料を作っている」という実態があると小川氏は話す。そうした追加作業を削減するため、社外の協力企業に頼らずデータ準備、分析、ダッシュボード作成ができる人材を育成する。
Tableauを高度に活用できる人材は現在、市場情報グループを中心に数人にとどまるが、年内に新たに30人育成することを目指す。
この方針はTableau Japanが5月17日に開催した報道関係者向けイベントに資生堂の小川氏が参加して説明した。Tableau Japanも組織全体でのデータ分析が進むよう支援するため、4月には料金体系を変更した。従来のソフトウエアの売り切り方式から、年額課金方式に変更。ダッシュボード上での参照に限定した「Tableau Viewer」(年間税抜き1万8000円、最低購入数100)といった安価なメニューの提供を始めた。また、データ分析の前段階に必要な結合、クリーニング、集計などの準備作業を簡単にできる「Tableau Prep 」機能も含むすべての機能を使える「Tableau Creator」(同10万2000円)も提供する。資生堂が育成を目指すのは、Tableau Creatorを利用するクラスの人材となる。