毎月1500万人超が利用する化粧品の口コミサイト「@cosme」を運営するアイスタイルは今夏から、@cosmeのアクセスデータと、実際の購買情報をひも付けて分析できるサービスを広告主向けに提供する。購買情報は、自社で運営するECサイト「@cosme shopping」や国内25店舗を展開する化粧品の販売店「@cosme store」のデータを活用する。

 化粧品市場が微増にとどまる中、アイスタイルの流通事業は急成長を遂げている。2018年1~3月のEC事業の売り上げは前年同期比で37%増の5億9000万円。販売店の売り上げは同26.1%増の25億6200万円となった。急伸する流通事業のデータを広告主向けにも活用する。

 例えばECサイトの購買データを利用して、「@cosmeからECサイトに遷移して広告主の商品を購入したのか。あるいはカートには入れたが、購入せずに離脱したのか。そういった分析サービスをどのような形で提供するかを設計している」と執行役員On Platform 領域管掌の濱田健作氏は明かす。逆に購買データから遡れば、自社の商品を購入した層が@cosme上でどんなコンテンツや商品を見て比較していたのかといった分析も可能になるという。

 購買情報を活用した分析サービスは、アイスタイルが4月から提供を開始したマーケティング支援サービス「ブランドオフィシャル」の利用企業に提供する。ブランドオフィシャルは@cosmeの利用者に対して企業主体で情報発信できる機能と、@cosmeの利用者分析を組み合わせたサービス。情報発信に活用できるのが企業・ブランドの公式ページだ。サービスの利用企業は@cosme上にブランドや商品の公式ページを開設して、自社のブランドや商品に対するコンテンツを投稿できる。@cosmeの利用者は自分の好きな公式ページをフォローして情報を得られる。

 一方、分析に活用できるのがダッシュボード機能だ。これは@cosme上での自社の商品に対する口コミやブログ記事、アイスタイルが@cosmeのコンテンツとして制作する商品に関する記事などを一元的に見られる機能。自社ブランドや商品に関する「タグ」を設定すると、そのタグにひも付いた口コミなどの情報がダッシュボード上に集まってくる。これまで、@cosmeの口コミ分析は、希望する企業から個別に請け負うソリューションサービスとして提供していた。ブランドオフィシャルの提供によって、利用企業なら手軽に@cosmeの口コミを分析できるようになった。また、@cosme上でよく閲覧されたり口コミが投稿されたりしているブランドや商品の一覧も見られる。

ダッシュボードでは自社のブランドや商品に関する口コミや記事コンテンツを分析できる
ダッシュボードでは自社のブランドや商品に関する口コミや記事コンテンツを分析できる

 さらに、このダッシュボード上から直接マーケティング施策を実施できる。例えば、口コミや記事コンテンツを自社の公式ページに共有してページの登録者に紹介できる。よく閲覧されている商品の一覧から、「使い方を投稿する」ボタンを押せば、その商品をより効果的に使うためのコンテンツを投稿して、訴求できる。

購入後の行動も分析可能

 現時点では口コミや公式ページのフォロワー層の分析など、@cosme上の行動や会員属性の分析にとどまっている。ここに今夏からECサイトと実店舗@cosme storeの購買情報の分析機能を加える。「どれだけ出稿すると売れるかまで分かれば、利用企業は@cosmeへの広告出稿の投資を精緻に判断できるようになる」と濱田氏は説明する。

 さらに口コミサイトである@cosmeの特性を利用してレビューを分析すれば、購入後に商品をどう評価しているかも分かる。購入前の行動、購買行動、そして購入後まで一気通貫で分析できるようになるわけだ。こうした分析サービスの提供開始に向けて、開発を進めている。

 アイスタイルはメディア事業から始まった。そこからECサイトや実店舗を開設するなど事業領域を広げる中で、自社のオムニチャネル化を推進するために、@cosmeの会員IDと店舗のポイントカードの統合を進めてきた。両方の会員であれば、@cosmeの利用履歴と店舗の購買情報をひも付けて分析できる土壌は整っていた。

 2017年からは自社ブランド「@cosme nippon」を展開。「自社でも@cosmeを活用して、自社商品のマーケティング施策を実施する中で、メーカーがどのようなデータを必要としているかが学べた」(濱田氏)。こうした経験から、消費者のカスタマージャーニー全体を俯瞰できるサービスを提供することで、広告主のマーケティング活動をより強力に支援していく考えだ。

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