全日本空輸(ANA)が、日本政府観光局(JNTO)と共同で、シンガポールからの訪日観光客を増やすキャンペーンを2017年秋に展開し、成果を上げている。ANAのビジネスクラスを利用した客数は、目標の106%に達したという。最大の特色は、シンガポールでInstagramを主に活用する著名な女性インフルエンサーをキャンペーンに起用したことだ。

 起用したインフルエンサーは、キャンペーン期間中に自身のInstagramへの投稿が得たエンゲージメントが目標対比で549%に達するなど、想定以上の影響力を発揮。そのおかげもあって、キャンペーン展開後の一定期間にシンガポールから日本に向けてANAのビジネスクラスを利用した客数は、目標の106%に達したという。「KPI(重要業績評価指標)として設定していた利用実績の目標をクリアし、シンガポールでのANAブランドの価値向上も見込めるため、今後に大きな手応えを得た」と、ANAアジア・オセアニア室 渡邉勝マーケティング&セールス マネジャーは語る。

 キャンペーンの内容はこんな具合だ。インフルエンサーの女性が、実際にシンガポール発日本行きのANAのビジネスクラスに搭乗して訪日し、横浜、鎌倉、山形、仙台を訪ね、全行程にカメラマンが同行してその模様を撮影した。

 そしてインフルエンサーは訪日中、自らのInstagramアカウントに日々の模様を投稿。その後、ANAが5種類のネット動画を制作して、シンガポールを拠点にアジア向けネット広告配信事業を手がけるAdAsia Holdingsのネットワークを使って、シンガポール在住で「日本」「旅行」といったキーワードに興味や関心を示す層にターゲティングして、約1カ月間、広告として配信した。

ANAがシンガポール向けに展開したネット動画広告
ANAがシンガポール向けに展開したネット動画広告

 訪日に興味を示す潜在顧客がこれらの動画広告をクリックすると、シンガポール向けのANAの自社Webサイトに遷移し、ビジネスクラスの航空券が購入できるという仕掛けだ。AdAsia Holdingsの担当者が、ネット動画広告の配信先や配信量を細かく見直しながらキャンペーンを展開した結果、5種類のネット動画広告を合わせたクリック率は目標対比で118%に到達したという。

 またANAは、今回はビジネスクラスの利用に至らなくても、ネット動画広告の視聴者やサイト来訪者に対して、「リターゲティング広告を活用したアプローチを今後も継続し、将来のお客様になっていただけるよう働きかける」(渡邉氏)考えだ。

訪日外国人による国内線利用も視野に

 ANAが今回のキャンペーンを仕掛けた背景には、シンガポールからの国際線利用にとどまらず、「訪日外国人によるANA国内線利用を増やしたい」(渡邉氏)という狙いがあった。東京や大阪、京都などに続く新たな観光スポットをプロモーションしたいJNTOと狙いが一致したため、共同でキャンペーンを進めることにした。

 現地在住の著名インフルエンサーを起用した背景には、「シンガポール人の訪日観光客の多くは、既に東京や大阪、京都など日本の著名な観光スポットを1度は訪れたことがあり、新たなスポットを探している」(渡邉氏)という事情がある。そこで、「シンガポール人が日本の新たな観光スポットで楽しんでいる体験動画を見たら、実際にそこに行ってみたくなるのではないか」(渡邉氏)と考えた。狙いは当たった格好だ。

 ANAはこの成果を受けて今年3月、シンガポールだけでなく、タイ、マレーシアの現地インフルエンサーも起用した新たな訪日観光客促進キャンペーンを展開した。今後も、今回同様に現地のインフルエンサーを起用したネット動画広告を含むキャンペーンを、対象を他のアジア各国にも広げて展開していく考えだ。